更新日: 2022.04.05
公開日:2021.11.16
医療費の負担を減らしたい…ひとり親家庭が利用できる助成制度って?
ひとり親家庭では時間や経済的に余裕が生まれにくいため、日々大変な生活を送っているでしょう。そんな中、ひとり親家庭では唯一の働き手であるご自身が入院した時のことを考えたことはありますか?
ひとり親家庭によくあるのは、「子どもの健康には注意しているが、日々やることがたくさんあり、自身の健康状態を振り返る時間がない」ケースです。
万が一自分が入院することになった場合、医療費をはじめとした費用や、生活・精神面での負担がより大きくなります。
ひとり親家庭が入院時の医療費や精神的な負担を減らすためには、医療費の控除や医療費の助成制度の活用は不可欠です。
この記事では、「自身が入院したことがある方」「ご家族が入院したことがある方」への調査(*1)から、ひとり親家庭の方が入院中に感じたお困りごと・お悩みとその対処法を紹介します。
いざというときために、ひとり親家庭が活用できる医療費助成制度や医療費控除制度、自治体サービスを把握しておきましょう。
(*1)損保ジャパンが入院経験者・未経験者合計2,000人に「入院に関する家族の時間やお金への影響調査」を実施。調査機関:2021年3月26日(金)~3月29日(月)。
1. ひとり親家庭のお悩み①入院時の費用(医療費・その他)
ひとり親家庭の働き手である自身が入院するとなったときに一番不安に感じるのは、やはり「お金」のことでしょう。入院時にかかる費用について、ひとり親家庭はどのような点に悩みを感じているのかをご紹介します。
1-1. 医療費
ひとり親家庭に限りませんが、入院によって発生する悩み事として筆頭に挙げられるのはお金、特に医療費の問題です。
現在、医療技術の進歩により入院日数は短期化し、入院1日あたり医療費は高額化しています。
入院日数平均(*2)を見てみると、2010年に14.7日だったところ、2018年には13.6日と短くなっています。また、入院1日あたりの自己負担分の医療費(3割分)(*2)と食事療養費の標準負担額を見てみると、2010年では10,240円だったものが、2018年には13,060円と高額化しています。
また下表のように、疾病によって入院日数や入院治療費も異なります。
疾病名 | 入院日数 | 入院治療費の目安 | 1日単価 |
---|---|---|---|
胃がん | 12.4日 | 21万円 | 1.7万円 |
動脈硬化 | 11.3日 | 27万円 | 2.3万円 |
乳がん | 9.4日 | 19万円 | 2.0万円 |
出典:政府統計データ「医療給付実態調査平成30年度報告書」記載データをもとに作成
そのため、万が一病気になって入院した場合でも、上記のような現状や自身の病状など、様々な要因が絡み、医療費がどのくらいかかるのかは誰にも予測できません。
いざというときのために貯蓄をしておこうとしても、貯蓄額の目安がわからず悩む方も多いのです。
(*2)出典:厚生労働省「医療給付実態調査」より損保ジャパンにて算出。集計対象は15歳から69歳までであり、医療費は高額療養費制度適用前の額です。
1-2. 医療費以外の費用
入院するときは、医療費以外にも様々な費用がかかります。実際に入院を経験した方へのヒアリングでは特に以下の費用がかかっているようです。
- 家族の交通費
- 食費(病院食を除く)
- 洋服代・パジャマ代・下着代
- 洗面用具
- 本・雑誌代
- 入院保証金
特に、入院に必要な身の回り品の購入費用は「入院前」にかかります。
また、これらの費用は健康保険や高額療養費制度といった助成金の対象外、つまり自己負担となります。入院が決まったとき~入院する前の短期間ですぐに支払わなければならないため、突然の出費に頭を抱えてしまう方も多いようです。
1-3. 身元保証人(連帯保証人)について
病院から入院費の支払いを担保するため、身元保証人を立てることが求められます。
入院時にかかる費用というくくりでは少し視点が異なりますが、身近に頼れる親族や友人・知人がいない、またはお願いしにくいため、そもそも入院自体できるかどうか…といったお悩みもあるようです。
2. ひとり親家庭のお悩み②入院時の家族や身の回りのこと
子どもの入院であれば、自分がいればなんとかなるかもしれませんが、自身が入院してしまった際に、自分の身の回りのこと、家のことで悩む方が多いようです。
2-1. 自分のこと
入院中は思っているよりずっと不便です。多くの病院では売店やコンビニが入っていて、最低限のものは買うことができますが、体調次第では、院内でさえ歩いていくことができません。飲み物を買うことですら、誰かのサポートが必要になる可能性があるのが入院生活です。
また、長期入院となると入院生活をサポートしてくれる存在が不可欠ですが、サポートする側にも負担がかかってしまいます。親が元気なうちは頼れても、親の年齢や住んでいる場所次第でお願いすることも難しくなります。
2-2. 子どものこと
子どもの世話は簡単には人には頼めません。必ずしも実家が近くにある、親がサポートしてくれる状況ではないと思います。
ベビーシッターや保育施設の利用といった選択肢がありますが、どこに連絡すればよいのか自分で調べないといけませんし、費用も高額になるため、利用するハードルが高いと思われます。
自治体が提供するショートステイやファミリーサポートセンターの活用などもありますが、急な依頼や空き状況によって利用できないケースもあるので注意が必要です。
2-3. 同居で介護が必要なご両親のこと
親と同居し介護をされている場合は、家の炊事、洗濯、掃除などの家事を誰かにお願いしなければいけません。民間サービスを利用する場合は、費用も高額になります。
3. 解決策①助成金や医療制度を活用する
このように、自分が入院する際には様々なお困りごとが発生します。どんなに健康に注意していても病気やケガは突然襲ってくるものですので、備えが必要といえます。
これらの不安に対して活用できる行政の制度・民間のサービスなど、対処方法をご紹介します。
3-1. ひとり親家庭等医療費助成制度
自治体が提供しているひとり親家庭向けの医療費助成制度があります。
自治体によって制度を利用できる対象者の基準は異なりますが、国民健康保険や健康保険などの各種医療保険の自己負担分から一部負担金を差し引いた額を助成するものが多いようです。
所得制限などはありますが、ひとり親家庭の方で、18歳までの児童を監護する母もしくは父などが受給できる制度となっていますので、詳しくはお住いの自治体HPでの確認をお勧めします。
(参照)ひとり親家庭等の医療費助成制度(マル親医療証の交付)|東京都世田谷区
(参照)ひとり親家庭等の医療費助成|大阪府大阪市
3-2. 高額療養費制度
日本には高額療養費制度(*3)があります。現役世代の場合、保険証を医療機関に提示すると、通常自己負担は総医療費の3割です。しかし、入院が長引いた場合などは3割負担でも高額になるケースがあります。その際利用できるのが、高額療養費制度です。
高額療養費制度は、1ヶ月あたりの自己負担額が一定額以上になった場合、その超過分を払い戻してくれる公的な医療保険制度で、会社員でも自営業者でも同様に利用することができます。
例えば、1ヶ月の医療費が総額100万円かかった場合、自己負担額は3割負担の30万円ですが、高額療養費制度を利用すると、自己負担額は8万7430円(一般所得者の場合)と大きく軽減されます。差額分の21万2570円は国が負担してくれます。
ちなみに、自己負担額の上限の計算式は所得や年齢によって異なります。
年収 | ひと月ごとの自己負担上限額 |
---|---|
約770~約1,160万円 | 167,400円+(かかった医療費の総額-558,000円)×1% |
約370~約770万円 | 80,100円+(かかった医療費の総額-267,000円)×1% |
~約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
このように医療費が高額になった場合には国が補償してくれる仕組みがありますが、これらの仕組みを利用しても自己負担は発生する上、治療費以外の費用も発生してきますので、注意が必要です。
(*3:参照)高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省
3-3. 医療費控除
一年間で支払った医療費が10万円を超える、もしくは総所得の5%を超える場合は、負担した医療費から10万円(もしくは総所得の5%のどちらか低い方)の差額が所得税の控除対象になります。この控除制度を医療費控除といいます。
例えば、年収400万円の人が一年間で医療費を15万円支払った場合、
15万円‐10万円=5万円が控除対象となります。
控除対象に所得税率をかけたものが控除を受けられる金額になるので、上記の例だと、5万円×20%※=1万円の控除を受けることができます。
※課税所得額が330万円超695万円未満の場合
対象となる医療費は、
- 病院や歯医者での診療費、治療費、入院費
- 治療のために購入した薬代
- 通院の際に発生した交通費(原則として公共交通機関)
- 妊娠、出産にかかった費用
- けがや病気の治療目的のリハビリ、マッサージ、はり、お灸の費用
などが挙げられます。
医療費控除を受けるためには確定申告が必要になるので、費用が掛かった際の領収書は捨てずにとっておき、忘れずに確定申告をするようにしましょう。
なお、自身が会社員のため確定申告をする必要がない場合でも、還付申告を行えば医療費控除を受けられます。確定申告の期間とは異なり、その年の翌年1月1日から5年間は申請することができるため、行うことをおすすめします。
直接助成金を受けとれるというわけではありませんが、所得税控除が受けられ負担が減るためありがたいですよね。知らないと損をするので、必ず押さえておきましょう。
3-4. 民間保険会社の医療保険
自治体が実施している補助金や助成金制度もありますが、それだけでは医療費を賄えなかったり、助成を受けるまで時間がかかったりと、色々な面でお悩みを感じる方は多いようです。
そのため、そのようなお悩みを解決するためにも、民間の保険会社が提供している医療保険への加入もおすすめします。
もちろん保険料の負担は発生しますが、万が一の備えとして医療費や医療費以外の費用、入院時に発生するご自身や子ども、家族に対するお困りごと・悩み事をサポートしてくれる保険もあるようです。
収入の中で捻出できる保険料を計算しておき、「ほけんの窓口」や「保険見直しラボ」 などといった保険相談サービスでご自身にあった保険を探してみるのもおすすめです。
4. 解決策②自治体や民間のサポートサービスを活用する
4-1. 民間の入院サポートサービス
民間のサービスで入院中の洗濯や買い物サポート、ご家族の介護代行やお子様の身の回りのお世話などのサービスがあります。費用はかかりますが、頼れる先が無い場合には利用が可能です。
どんなサービスがあるのか、どこに依頼すればよいのか、費用はいくらかかるのかなど、事前に調べておくことをお勧めします。
4-2. 自治体のサービス
自治体が委託する施設などで、保護者の仕事や病気、出産などといった事情で、一時的に家庭での子どもの養育が難しくなった時に、宿泊を伴う形で子どもを預かるショートステイという制度があります。
自治体・施設によって利用申込時に母子手帳のコピー等の書類提出を求められたり、年齢制限、事前見学に参加する必要があるなど、急な入院では対応できない場合があるので事前に確認をしておくことをお勧めします。
また利用定員があるなど、万が一の際に利用できないケースもあるので注意が必要です。
4-3. 連帯保証人代行サービス
ほとんどの医療機関では、医療費の未収金対策として入院時に連帯保証人を立てるように求めています。親族や知人がなってくれればいいのですが、少子高齢化や地縁関係が希薄化している影響もあり、今現在、連帯保証人のご用意がますます困難になっているようです。
そんな時に心強い味方になってくれるのが、株式会社イントラストが提供する「スマホス」というサービスです。
スマホスは、株式会社イントラストと提携している医療機関にて無料でご利用いただけるサービスで、入院時の連帯保証人を株式会社イントラストが引き受けてくれるのです。そのため、ご自身で連帯保証人となってくれる人を探したり、誰かに頼む手間や負担がなくなります。
また、連帯保証人を誰かに頼む場合、ほとんどのケースで依頼する人にご自身の病名を伝えることになります。「スマホス」を利用すれば、病名を伝えずに済むためプライバシーが守られる、といった点も安心できます。
昨今では、コロナ禍の影響で人との接触が憚られるため、なおさら対面で連帯保証人を頼みづらい状況にある、という悩みも、「スマホス」を利用することによって解消することができますね。
連帯保証人をお願いできる人が身近にいない方や、身内に連帯保証人を頼みたくないとお思いの方は、保証会社が提供する連帯保証人代行サービスを利用する方法もおすすめです。
※スマホスは株式会社イントラストとの提携医療機関でのみご利用いただけます。ご入院予定の医療機関がスマホスに対応しているかどうかは、医療機関の窓口にお問い合わせください。
(まとめ)万が一のために備え、助成制度を活用して医療費の負担を減らしましょう
体調不良や通院、入院は突発的に起きるもの。ひとり親家庭で家計が厳しい…といった場合でも、もしものために日頃から備えておけば、そのような状況に直面したとしても心持ちが全然異なります。
大きな医療費がかかったときを想定して、自身が利用できる助成金や補助制度、民間のサービスなどを事前に把握しておくようにしましょう。