更新日: 2023.04.21
公開日:2023.01.20
養育費の相場ってどれくらい?年収や子どもの人数別にご紹介

子どもを連れて離婚したいと考えているものの、経済的な問題でなかなか決断できないという人は多いのではないでしょうか。
離婚するにあたり、「養育費をいくら受け取れるのか」「相場はどのくらいか」「何歳まで受け取れるのか」「未払いを防ぐ方法はあるのか」など、疑問や不安は尽きないものです。
今回は、このような養育費にまつわる悩みを解決するために、養育費の基礎知識や平均相場、ケース別に受け取ることができる養育費相場、未払いが起きたときの対処法などについて解説します。
~ この記事の監修 ~

青野・平山法律事務所
弁護士 平山 愛
現在の日本の夫婦は、必ずしも平等で対等な立場にあるわけではありません。経済的・社会的に弱い立場にある者の生活を守り、公平な解決となるよう心掛けています。
1. 養育費とは?

両親が離婚すると、子どもはどちらかの親と一緒に暮らすことになります。
このとき、子どもと一緒に暮らす親を監護親、一緒には暮らさない親を非監護親といいます。非監護親は子どもと一緒に暮らさないとはいえ、実の親であることに変わりはなく、子どもに対する責任が消えるわけではありません。
このため、監護親は非監護親に対し、子どもを育てるためにかかる費用を請求することができます。これが「養育費」であり、養育費を支払う非監護親は「義務者」、受け取る監護親は「権利者」と呼ばれます。
義務者は、子どもの数や年齢、夫婦それぞれの収入などを参考に算出された金額を、一定期間支払う義務があります。これは、義務者に「子どもに自分と同等の水準で生活をさせるべきだ」という生活保持義務が課されているためです。
このため、養育費の金額は一律には決まっておらず、義務者の収入に応じて変化します。義務者が年収350万の場合と年収2,000万の場合では、算出される金額が異なるのも頷けますよね。
算出された養育費は一括で支払うことも可能ですが、離婚後の事情の変化などに臨機応変に対応できるよう、養育費の月額を定めて毎月支払いし、ボーナス時に養育費一時金としてまとまった金額が支払われるケースが一般的です。
なお、未婚の場合でも、養育費を請求することができます。未婚でも養育費を請求をできる条件としては、以下のようなものがあります。
- 子どもの父親にあたる男性が認知をしている
- (認知していない場合)養育費を支払う旨の公正証書を作成している
未婚でも養育費を請求したいとお悩みの方は、弁護士など法律の専門家に早めに相談しましょう。
2. 平均相場は「月5万485円」

養育費は義務者の収入などに応じて異なりますが、実際にはいくらくらい受け取れるのでしょうか。
厚生労働省が令和4年度にひとり親世帯を対象に行った調査によると、1ヵ月分の養育費の平均相場は、母子家庭で5万485円、父子家庭で2万6,992円という結果でした。
養育費の金額は子どもの数によって変わり、母子家庭で子ども1人の場合は月に4万468円、子ども2人だと月に5万7,954円が1ヵ月あたりの平均相場です。
これを見てもわかるように、子どもの数が増えたからといって、単純に倍の金額が受け取れるということではないのです。
なお、ここで述べた相場金額は、あくまでも「養育費を受け取っている世帯」での話です。離婚したら確実にこの金額が受け取れるというわけではなく、養育費を支払ってもらえないケースも多いため注意しなければなりません。
3. 相場の目安「養育費算定表」とは?

養育費の金額は義務者の収入によって変化しますが、それ以外にもさまざまな要素が影響します。すべての要素を含めて計算するのは非常に手間がかかるため、実際にはあまり行われていません。
ではどうやって計算するのかというと、「養育費算定表」というものを活用します。
次は、受け取れる養育費の目安を知るために、養育費算定表について詳しく確認してみましょう。
3-1. 算定表は2つある
養育費算定表とひと口にいっても、
- 裁判所が作成した算定表
- 日本弁護士連合会が作成した算定表
の2種類があります。
裁判所が作成した算定表は、年収や子どもの数・年齢などを参考に養育費を計算しており、全国の家庭裁判所で参考資料として活用されているものです。
一方の日本弁護士連合会が作成した算定表は、年収や子どもの数・年齢などを参考にしたうえで、世帯で発生する費用を世帯人数で割るという計算方法が用いられています。さらに、子どもの生活費が高く設定してあるなど、裁判所が作成した算定表より養育費が高く算出される点が特徴です。
夫婦の話し合いや調停で養育費を決める際は、裁判所の算定表を利用することが多いため、ここでは、裁判所が作成した養育費算定表についてご説明します。
3-2. 算定表の見方
裁判所が作成した養育費算定表は、
- 子が1人の場合(子が0~14歳)
- 子が1人の場合(子が15歳以上)
- 子が2人の場合(子が2人とも0~14歳)
- 子が2人の場合(子1人目が15歳以上、子2人目が0~14歳)
- 子が2人の場合(子が2人とも15歳以上)
- 子が3人の場合(子が3人とも0~14歳)
- 子が3人の場合(子1人目が15歳以上、子2、3人目が0~14歳)
- 子が3人の場合(子1、2人目が15歳以上、子3人目が0~14歳)
- 子が3人の場合(子が3人とも15歳以上)
の9つの表から成り立っています。
子どもの数や年齢で相場となる養育費の金額が異なるので、自身の状況に該当する表を選びましょう。
表には、縦軸に義務者の年収、横軸には権利者の年収が記載されています。
年収はそれぞれ「給与」と「自営」に分かれているので、会社員であれば給与、自営業者であれば自営の欄を見てください。該当する年収を見つけたら、義務者の年収は横方向に、権利者の年収は上方向にそれぞれたどっていきましょう。
両者の年収が交わる箇所に記載された金額が、養育費の目安となります。
3-3. 算定表はあくまで目安
養育費算定表は、複雑な養育費の計算を少しでもわかりやすくするために作成されました。年収や子どもの数などをもとに該当する表を選べば、簡単に養育費の金額を知ることができるので非常に便利です。
ただし、算定表で示された金額は、子どもの養育にかかる一般的な費用で算出されており、あくまでも目安に過ぎません。たとえば、子どもの進学先はすべて公立に通う想定で金額を算出しています。
そのため、子どもが私立学校に進学したり塾や習い事などに通う場合は、もっと多くの費用が必要になるため、算定表よりも多い金額を設定するべきでしょう。
このため、算定表通りに決めるのではなく、子どもの進路や将来を考慮した上で夫婦でしっかり養育費について話し合うことが大切です。
話し合いで決まらない場合は、弁護士などの専門家に相談し、それぞれの事情に合わせた養育費を考え、合意を目指しましょう。
(参考記事)養育費の計算方法が知りたい!額を左右する要素・損をしない方法
4. 算定表をもとに考える養育費の相場

最終的な養育費の金額は、権利者と義務者との話し合いや調停で決まります。
話し合う際には、どれくらいの養育費が受け取れるのか、相場を知っておくことが欠かせません。
次は、養育費算定表を参考に、具体的なケースを挙げて1カ月あたりの養育費の相場を見てシミュレーションしましょう。
4-1. 権利者が年収200万円&子ども1人の相場
養育費は、子どもの年齢が14歳以下のケースと、15歳以上のケースで金額が大きく異なります。まずは、権利者が年収200万円、14歳以下の子どもが1人いるケースの養育費相場を見てみましょう。
養育費の相場は、義務者の年収別で以下のようになります。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 2~4万円 |
年収500万円 | 4~6万円 | 6~8万円 |
義務者の雇用形態が会社員、または自営業者かで養育費相場の金額は変わってきます。年収が同じ500万円の場合でも、会社員よりも自営業者のほうが月額の相場が高くなるのです。
次に、権利者が年収200万円で子どもが15歳以上の養育費相場を見てみましょう。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
年収500万円 | 6~8万円 | 7~9万円 |
15歳以上になると教育関連のお金がかかるようになるため、14歳以下のケースと比べて2万円ほど多くなる相場傾向があります。
4-2. 権利者が年収200万円&子ども2人の相場
養育費は子どもの年齢だけでなく、人数によっても変わります。権利者の年収が200万円のケースで、子どもが2人になるとどうなるでしょうか。
子どもが2人とも14歳以下の場合は、以下のような養育費相場になります。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
年収500万円 | 6~8万円 | 8~10万円 |
子どもが2人とも15歳以上になると、
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 5~7万円 |
年収500万円 | 6~8万円 | 10~12万円 |
これを見て、「子どもが1人のケースとあまり変わらない」と驚いた人も多いのではないでしょうか。養育費は、子どもの数が2人になったからといって、単純に2倍になるわけではないのです。
4-3. 権利者の年収が400万円&子ども1人の相場
子どもを育てるためにかかる費用は、子どもと一緒に暮らさない義務者だけでなく、一緒に暮らす権利者も負担しなければなりません。このため、養育費はそれぞれの年収を考慮して算出されます。
つまり、共働きをしており権利者の年収が高いと、義務者の年収によっては養育費が少なくなる可能性もあるのです。日中は子育てを母親にお願いしたり、幼稚園や保育園に預けてバリバリ働いている方も多いのではないでしょうか。
次は、権利者の年収が400万円で、14歳以下の子どもが1人いるケースを見てみましょう。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 2~4万円 |
年収500万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
この場合、義務者が会社員のケースと、義務者が自営業者で年収300万円のケースで、養育費相場は同じ金額になります。
このように、権利者の年収がアップすると、養育費は低くなることが多いのです。
4-4. 権利者の年収が400万円&子ども2人の相場
権利者の年収が400万円で、子どもが2人とも14歳以下の場合は、以下のような養育費相場になります。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 6~8万円 |
年収500万円 | 4~6万円 | 10~12万円 |
権利者の年収が400万円で、子ども1人が14歳以下、もう1人が15歳以上のケースは以下のような養育費相場になります。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
年収500万円 | 4~6万円 | 6~8万円 |
権利者の年収が400万円で、15歳以上の子どもが2人いるケースは、
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
年収500万円 | 6~8万円 | 8~10万円 |
このような養育費相場となります。
4-5. 権利者の年収が0円(専業主婦)&子ども1人の相場
権利者の年収が高くなるほど、養育費が安くなる傾向にあることがわかりました。では、権利者が専業主婦で、まったく収入を得ていないケースはどうなるでしょうか。
14歳以下の子どもが1人いる場合、以下のような養育費相場になります。
義務者の年収 | 相場(義務者が会社員) | 相場(義務者が自営業者) |
---|---|---|
年収300万円 | 4~6万円 | 4~6万円 |
年収500万円 | 6~8万円 | 8~10万円 |
専業主婦は収入がないため、義務者の負担割合が大きくなります。権利者が働いて収入を得ているケースと比べると、より多くの養育費を受け取れる可能性が高いでしょう。
ご紹介してきた例の中に、自分に当てはまるケースがない場合は、「養育費計算シミュレーション」をお試し下さい。算定表に基づいた金額が算出されますので、相場の目安を知りたい場合にとても便利です。
5. 養育費は何歳まで受け取ることができる?

養育費は基本的に、子どもが精神的・経済的に自立可能と見なされる成年年齢まで支払われます。
子どもは、自分では生活費を用意できませんし、経済的な自立も困難です。そのため、非監護親には子どものための費用として養育費の支払いが義務づけられているのです。
なお、子どもが大学へ進学する場合は、成年年齢に達しても経済的に自立すること難しい上、学費の負担も大きいでしょう。子どもの進学や自立するタイミングに加え「生活保持義務」を踏まえた上で、取り決めるようにしましょう。
具体的には、
- 18歳(2022年4月1日以降の成年年齢)
- 20歳(2022年3月31日以前の成年年齢)
- 22歳(大学等教育機関を卒業するまで)
と決める方が多いようです。
【補足】
令和4年4月の民法改正に伴い、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
過去に「子どもが成人に達するまで養育費を支払う」と取り決めをしていた場合、「18歳までしか養育費を受け取れなくなってしまうの?」と不安に思う方もいるでしょう。
しかし、取り決めの内容は、あくまで作成されたその時点での成年年齢(20歳)が適用されます。
そのため、令和3年3月31日までに取り決めを作成していた場合、当時の成年年齢である20歳までは支払いを継続されると考えて良いでしょう。成年年齢が18歳に引き下げられたからといって、取り決め内容まで18歳になることはありません。
法務省のHPでも「令和3年3月31日までに「養育費の支払いは成人まで」と取り決めをしていた場合は、「20歳になるまで」支払いを継続することが妥当である」と記載があります。
(参考)成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省
なお、令和4年4月1日以降に作成した養育費の取り決めにおいて、「養育費の支払いは成人まで」と記載した場合は「18歳まで」となりますので、ご注意ください。
(参考記事)養育費を支払う義務があるのは何歳まで?離婚の際に取り決めよう|SiN
6. 養育費が相場より高くなる・低くなる要素

養育費の相場はありますが、具体的な金額は個々のケースで異なります。養育費が相場に反して高くなる・低くなる要素は、例えば、
- 年収
- 自営業者か給与所得者か
- 子どもの数・年齢
が挙げられます。
これらは、養育費算定表を利用するときにチェックする項目でもあり、養育費の金額を左右する代表的な例です。
中でも子どもの年齢は大きな影響を与えており、一般的には15歳以上になると養育費はかなり上がります。
これは、15歳以上になると中学から高校、高校から大学への進学があり、塾や受験費用などに多くの教育費がかかるためです。
また、
- 子どもの病気で医療費がかかる
- 私立学校に進学する
- 習い事や部活動などをしている
このような場合もお金がかかるため、養育費が相場より高くなる傾向にあります。なお、教育費をどの程度まで負担するかは、義務者の学歴と同じ水準が目安となるので注意しましょう。
7. 離婚後に養育費の金額を変更できるケース

離婚する際に決めた養育費の金額は、子どもが20歳になるまでずっとそのままというわけではありません。その時々の経済事情により、一度取り決めた養育費を変更することもできるのです。
ただし、経済事情が変わったからといって自動的に養育費が増減額することはないため、相手方と交渉や調整をする必要があります。
次は、養育費が増額または減額となるケースについて、具体的に説明します。
7-1. 増額できるとき
養育費は、子どもが順調な生活を送り、健やかに成長するために欠かせないものです。そのため「このままでは子どもを十分に育てられない」という状況になった場合は、養育費を増額できる可能性があります。
例えば、
- 子どもが病気になって多額の医療費が必要になった場合
- 子どもを育てる権利者の収入が大幅に減った場合
などです。
このようなときは、子どものために養育費の増額が認められる可能性が高いので、義務者に連絡をとってみましょう。
なお、
- 義務者の収入が上がった場合
も、子どもが同水準の生活が送れるように養育費が増額されます(生活保持義務)。
義務者がすぐに増額を受け入れてくれれば良いのですが、残念ながらそうでないケースも多いです。義務者が増額を拒否した場合は、裁判所で調停・審判を行うことになります。
調停では、当事者たちの間に裁判官や調停委員が入り、お互いの言い分を聞いたうえで和解案を提案してくれます。経験豊富な専門家が仲裁するため、当事者だけで話し合うよりも解決しやすいでしょう。
調停を起こしても義務者が増額に合意しない場合は審判へと移り、養育費を増額するかどうかを裁判所が決めることになります。
7-2. 減額されるとき
増額できる可能性があるということは、減額される可能性があることも意味しています。
たとえば、
- 養育費を支払う義務者の収入が減った場合
- 義務者が職を失った場合
- 義務者が病気になって十分に働けない場合
などです。
これらのケースでは、義務者に経済的な余裕がなくなり、養育費を支払えなくなることも珍しくありません。
また、
- 権利者の収入が増えた場合
も、子どものためにかかるお金の負担割合が変化するため、養育費が減額される可能性があります。
権利者に十分な収入があったり、義務者の収入がゼロになったりした場合は、養育費の支払いそのものが免除されることもあるので注意しましょう。
さらに、
- 権利者が十分な収入を得ている人と再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組した場合
は、子どもの第一次的扶養義務は義務者(非監護親)から再婚相手に変わります。このため、義務者が負担する養育費が減額されることが多いです。
なお、再婚したことで義務者から一方的に減額を告げられても、納得できない理由なら素直に従う必要はありません。
話し合いで解決しなければ、増額のときのように裁判所に調停・審判を申し立て、減額を受け入れるべきかどうか判断してもらいましょう。
(参考記事)再婚したら養育費は減額される?減額される場合とされない場合
8. 取り決めた養育費は「公正証書」にしよう

離婚をする際、一般的には「協議離婚」で決着をつけることが多いです。
協議離婚とは、夫婦の話し合いによって離婚の有無や条件などを決める方法で、裁判所を通さないため手間や費用がかかりません。
ただし、夫婦の話し合いで合意した内容は立証するのが難しく、離婚後に「言った」「言わない」などトラブルになることも多いです。
養育費についても例外ではなく、金額や支払う期間などで後々もめやすいため、合意した内容は「公正証書」として書面化しておきましょう。
公正証書は、法務大臣から任命された公証人が作成する公文書のことです。記載された内容を公証人が証明しており、高い信用力や証明力を持っています。
つまり、公正証書を作成しておけば、後々トラブルになったときも「間違いなくこの内容で合意しています」と証明し、自分の正当性を主張できるのです。
養育費の支払いそのものを保証してくれるわけではありませんが、公正証書に「未払いの場合は強制執行を認める」旨を記載しておけば、支払いがストップしたときに裁判所にて手続きを行えば義務者の給与などを差し押さえることができます。
いざというときも安心なので、養育費の取り決めをしたら、必ず公正証書を作成しておきましょう。
なお、離婚時に養育費に関する取り決めをしていなかった割合は、51.2%にものぼります。
その理由は様々ですが、「相手に支払う意思や能力がないと思った」という理由が半数近くを占めるなど、最初から請求を諦めている様子が目立ちます。しかし、養育費は子どもの権利であり、将来経済的に苦労するような事態を避けるためにも、離婚時にきちんと養育費について取り決めておきましょう。
9. 養育費は未払いになることが多い

本来であれば、養育費を支払うのは非監護親の義務です。「お金に余裕がない」「支払いたくない」など、自分勝手な理由で養育費の支払いから逃れることはできません。
ところが、現実にはのらりくらりと養育費を支払わないケースも多く、泣き寝入りをしているシングルマザーも多いため注意しなければなりません。
厚生労働省が行った「令和4年度ひとり親世帯等調査結果」によると、「これまで一度も養育費を受け取ったことがない」と回答したシングルマザーの割合は、なんと全体の56.9%にも上っています。
さらに、「過去に養育費を受け取ったことがあるものの、現在は受け取っていない」と答えた割合は、14.2%でした。
これらを合計すると、実に70%以上ものシングルマザーが、子どもが20歳になるまで、または大学を卒業するまで養育費を受け取れていないことになります。
公正証書を作成していても、お構いなしに支払いをストップする義務者もいます。このような場合は、どう対処するべきなのでしょうか。
次は、支払いがストップしたときの正しい対処法について、順を追って見ていきましょう。
9-1. 対処法①まずは催促
養育費の支払いがストップしても、悪意のあるものではなく、単純に振り込みを忘れていたという可能性もあります。
このため、まずは電話やメールなどで義務者に問い合わせてみましょう。忘れていたり、お金が準備できなかったりしたのであれば、話し合いのうえ支払い期限を新たに設定します。もちろん、設定した期限が来たら、本当に支払われているかどうかを確認しましょう。
相手にプレッシャーを与える通知方法として、内容証明郵便を送るという手もあります。内容証明郵便は、郵便局が書類の発送日や宛先、内容などを証明した文書のため、受け取った義務者は大きな心理的プレッシャーを感じるでしょう。
1,500円ほど費用がかかりますが、もし調停や裁判になったときに「未払いがあった」「督促をした」ことなどを証明し、証拠として扱うことも可能です。
いつまで待っても支払いがないときは内容証明郵便を利用しましょう。
9-2. 対処法②家庭裁判所を通す
催促や内容証明郵便を送付しても養育費の支払いがない場合は、家庭裁判所を通して「履行勧告」や「履行命令」を出してもらいましょう。
履行勧告とは、裁判所から義務者に対して、電話や郵便などで支払うよう勧告してもらうことです。裁判所という公的機関から連絡があると、慌てて支払いに応じる義務者も少なくありません。
履行勧告でも効果がなければ、次は履行命令を出してもらいます。履行命令は、一定の期間内に養育費を支払うよう、家庭裁判所が義務者に命令をするというものです。命令を無視すると10万円以下の過料処分となるため、勧告よりも強い心理的プレッシャーをかけられます。
ただし、履行勧告も履行命令も法的な効力はないため、違反したからといって義務者の財産を差し押さえることはできません。差し押さえをするには、養育費の支払いについて定めた調停調書や、支払いがストップしたときは強制執行を認める旨を記載した公正証書などが必要です。
これらの書類を持っている場合は、裁判所に強制執行を申し立てましょう。
強制執行で給与を差し押さえる場合、裁判所経由で義務者の勤務先に通知が届くため、それを嫌がって養育費の支払いに応じるケースも多いです。
(参考記事)養育費の未払いで困っている!支払ってもらうための適切な対応とは?
10. 未払いになる前に「サポぴよの養育費保証」で対策しよう

養育費の未払いがあった場合、催促や履行勧告・命令、強制執行などの手続きで支払いを促すことは可能です。
しかし、いずれも手間と時間がかかりますし何しろ精神的に負担になります。できれば未払いそのものを防ぎたいですよね。次は、養育費の未払い防止に役立つ「養育費保証」というサービスについて紹介します。
養育費保証とは、義務者が途中で養育費を支払わなくなった場合、保証会社が月額養育費の12ヵ月分を上限に養育費を立て替えてくれるというものです。
つまり、権利者は自分で義務者に催促や履行勧告等をしなくても、問題なく養育費を受け取れるというわけです。
未払いはもちろん、連絡したくない元夫との接触も防げるため、余計なトラブルに頭を悩ませることがなくなるのです。
なお、このサービスは養育費の未払いが発生してからだと利用することができません。
離婚後に養育費の未払いが突然発生しても困ることが無いよう、離婚協議中にサービスの利用手続きを進めておくことをおすすめします。
養育費の取り決めをしているにもかかわらず、離婚後に相手から支払いがなく約56%の方が受け取れていないという事実をご存じでしょうか?
イントラスト提供の「サポぴよの養育費保証」では、イントラストが支払人の連帯保証人となることで「立替え」と「督促」を実施いたします。
例え未払いが発生しても翌月すぐに立替えが受け取れて、また立替分はイントラストが支払人に督促するため、余計なストレスなどもなく安心。
現在、離婚手続きをしている方、今後養育費の未払いが心配な方はぜひ公式サイトをチェックしてみてください。
(まとめ)離婚時に必ず取り決め、しっかり受け取ろう

「相手と関わりたくない」など、あえて義務者に養育費を請求しない人も多いかもしれません。
しかし、養育費は子どもがすこやかに成長するために欠かせないものです。
養育費の支払いは相手に課された義務でもあるので、離婚時には相場や算定表を参考に金額を決め、しっかりと取り決めを行い、支払ってもらうようにしましょう。
未払いが起きたときも泣き寝入りするのではなく、裁判所を通したり、養育費保証を活用したりして、うまく対処することが大切です。
<こんな記事もよく読まれています>