更新日: 2022.03.01
公開日:2020.07.13
離婚慰謝料はどのように決まる?請求できるケースや金額の決め方・相場を解説

離婚で気になる金銭の問題でよく耳にするのは、「慰謝料」「養育費」「財産分与」などでしょうか。
そのなかでも、DVや、浮気、モラハラなど、相手に離婚の原因がある場合に請求できるのが慰謝料。
でも、慰謝料が支払われる目的や、相場、金額の決め方、さらには税金はかかるのかなど、よくわからないことも多いですよね。
相手に原因がある離婚で損はしたくないし、離婚後のお金の不安も小さくはないはず。だからきちんと計算して、請求できるものはしっかりと請求したい。
ここではその慰謝料にスポットを当てて解説します。
~ この記事の監修 ~

わたしのみらい法律事務所
弁護士 渡邊 未来子
弁護士登録後に保育士資格を取得。養育費保証制度の相談会やセミナー、子ども食堂支援等を通じて、ひとり親家庭の支援活動を行っている。
目次
1. そもそも離婚時の慰謝料とは?

慰謝料とは、配偶者から受けたDVやモラハラ、浮気などによる精神的・肉体的苦痛に対して、配偶者へ請求できるものです。
つまり、暴力・暴言を与えられたり、相手が別の異性と不貞を働いたり、生活費を渡されなかったりすることで苦痛を受けたと判断される場合に請求できる損害賠償のことを指します。
DVやモラハラ、浮気などの他に、
- 長年にわたって性交渉を拒否されてきた
- 姑とのいさかいを仲介してもらえなかった
といった理由でも、慰謝料を請求できる可能性はあります。
逆に、よく芸能人が離婚の理由として挙げる「性格の不一致」は、慰謝料請求の対象にはなりません。
「離婚をすれば必ず慰謝料をもらえる」というのもよくある勘違いです。離婚時の慰謝料請求を検討するにあたって、その点はしっかり理解しておきましょう。慰謝料が請求できるケースは、後述の「4. 離婚時に慰謝料が請求できるケース」にて詳しく解説します。
また、配偶者の不貞が原因で離婚に至った場合、訴訟を起こしてその浮気相手にも慰謝料を請求できるケースがあります。
例外は、
- 浮気相手が既婚者とは知らずに交際していた
- 交際を始めた時点で、すでに夫婦の婚姻関係が破たんしていた
場合です。
また、
- 配偶者と長期にわたり別居していた
という状況では、浮気相手だけでなく配偶者にも原則として慰謝料が請求できないことが多いため、注意が必要です。
余談ですが、離婚した際に相手へ請求できるお金として、慰謝料の他にも「養育費」などがあります。慰謝料と養育費、双方の明確な違いをご存知でしょうか。
養育費とは、離婚する夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、親権を持ち子どもと同居する方の親が、親権を持たない別居する方の親に対し請求することができる、子どもを育てていくための費用です。
日本では妻側が親権を持ち、養育費を請求することが多く、子どものいる夫婦が離婚する場合は必ず取り決めておくべき費用のひとつです。
まとめると、
- 慰謝料は、配偶者から受けた精神的・肉体的苦痛に対して、配偶者から自分に支払われる損害賠償
- 養育費は、子どもを育てていくために、離婚後に親権を持たない一方から親権を持つ親へ子どものために支払われる費用
であり、慰謝料と養育費では性質がまったく異なることがわかります。なお、慰謝料も養育費も、共に財産分与の対象とはなりません。
つまり、養育費は、子どもがいる場合は離婚の原因に関係なく請求することができますが、慰謝料は、離婚の原因によって請求できる場合とできない場合がある種類の金銭ということです。
逆に、子どもがいない場合には、対象子がいないため養育費は受け取ることはできませんが、離婚の原因によっては慰謝料を請求できる場合があります。

2. 離婚慰謝料の相場は「100万円~300万円」

裁判で決める場合の相場は、おおよそ50万円~500万円と金額にかなり幅があります。しかし、話し合いの結果、100万円~300万円で落ち着くことが多いようです。
なお、慰謝料の金額は、相場に沿った一定額というわけではないため、平均金額はあまり参考にならないでしょう。
「結婚してからの同居年数×一定の額」といった計算式が持ち出されることもありますが、慰謝料は離婚原因によって発生するものですから、そこまで簡単に金額が決まるものではないのです。
例えば、離婚理由がDVといった暴力や浮気などの場合、請求の理由となる苦痛の大きさや期間の長さによって、相場にかかわらず金額は大きくなる傾向があります。
芸能人が相手の浮気が原因で離婚をした際に、相場から外れた高額な慰謝料を請求すると報道されることもありますが、これは財産分与やイメージダウンによる減収など、ほかの要素が加わっている可能性が考えられます。
そのため、「一般的には100万円~300万円が相場」と覚えておくと良いかもしれません。
慰謝料の額は、離婚後の生活をずっと支えるほどの金額にはならないと考えたほうが良いでしょう。もちろん、離婚理由や状況によって相場以上の金額が請求できるケースもあります。
ご自身が慰謝料請求する際に相場を参考にするものの、どのくらいの金額が妥当なのか気になる場合や、自身が相場以上の金額が受け取れる状況にあると考える場合は、弁護士などといった専門家に相談しましょう。
3. 離婚慰謝料の決め方
慰謝料の金額は、大半が夫婦間の話し合いによって決まります。話し合いがまとまらなかったら、調停・裁判へと進みます。
金額を取り決める際に、夫婦間の話し合いにより円満に決定するのが理想ですが、請求理由がDV・暴力、モラハラといった場合には、第三者、あるいは弁護士などの専門家も交えて協議したほうが良いケースも少なくありません。客観的にみて、請求理由とその金額が妥当なのかがポイントです。
また、口約束だけで済ませずに、離婚協議書を作成し、慰謝料の金額のほかに支払い方法や支払い期限などの条件まで明記することをお勧めします。この点については、「6-1. 支払い方法は離婚協議でしっかり決めよう」で詳しくご説明します。
なお、協議を行っても慰謝料が決まらない場合は、調停、さらに裁判へと進んでいくことになるかもしれません。
裁判をしても最終的に判決まで行く事例は少なく、和解示談で終わることもあります。判決まで進んだ場合は、自身の請求どおりの金額になるか、そもそも請求が棄却されてしまうかのどちらかしかないため、どうなるかがわかりません。
こじれてしまうと時間と手間がかかりますし、弁護士に依頼する場合は弁護士費用などもかかります。そもそも、慰謝料の金額についてはケースバイケースで、いくら請求できるか確証のない話ですので、どのあたりで折り合うかも重要と言えます。
4. 離婚時に慰謝料が請求できるケース

慰謝料の金額は、離婚の理由や状況によっても変わります。
この要素によっていくら上がる、と言えるほどの相場はありませんが、浮気やDVなど、実際に相手に非がある場合は、婚姻期間が長いほど精神的苦痛も大きいと見なされ、金額も大きくなるのが一般的です。
ここでは離婚の理由別に慰謝料がどうなるかを見ていきましょう。
4-1. 浮気や不貞
配偶者が浮気をした場合は、それによるショックの度合いが大きいほど、慰謝料も多くなる傾向があるようです。
例えば、浮気の前科があり、「もう二度としない」と約束したのにも関わらず過ちを繰り返した場合や、浮気相手が配偶者の子どもを妊娠・出産した場合です。
浮気相手にも慰謝料を請求できますが、実際の話し合いの中では、浮気相手の社会的地位や支払い能力が慰謝料に影響することもあります。
また、一人の受ける精神的な苦痛は一つですから、配偶者あるいは浮気相手から受け取った分は、さらに別の相手から二重取りをすることはできず、別の相手に請求する慰謝料の額から差し引かれることになります。
例えば、浮気によって受けた精神的な苦痛による慰謝料が300万円と算定された場合は、浮気相手と浮気をした配偶者に、合わせて300万円を請求できるだけとなります。
ただ、浮気をしたという事実は、請求する側が立証せざるを得ないので、それが困難な場合もあります。
具体的には、ホテルに出入りする写真や、事実を認める発言の痕跡(最近は、文書でなくメールやラインも証拠となる場合があります)が考えられます。
4-2. 借金
夫婦共通の目的のためではなく、もっぱら個人のために行った借金で、夫婦関係の継続すら困難になったという場合には、離婚理由として認められ、慰謝料が請求できる場合があります。
具体的には、ギャンブルや単なる浪費、風俗通いや、浮気相手に貢ぐための借金などです。
夫婦が共同で生活するために購入した家の住宅ローンや車のローンは、慰謝料の請求の対象にはなりません。
この場合も金額は、相手から受けた苦痛の度合いや期間によって違いますし、慰謝料を請求する場合は、証拠となるものが必要です。
通帳のコピーやクレジットカードの明細、家計簿の収支などを集めておくと良いでしょう。
ただ、借金をする相手ですから、実際には、相手の支払能力も考え、額を下げても一括にするのか、分割にするのか、よく見極めて条件の話し合いをした方が良いでしょう。
4-3. DVやモラハラ
不貞による離婚を例に慰謝料について説明してきましたが、DVやモラハラなどの理由でも同じことが言えます。
つまり、配偶者から暴力などのハラスメントを受けて来た期間、回数、それによる被害の内容(怪我、うつ病の発症など)により金額は変わります。
その際、こちら側にもそのような行動を誘引する言動がなかったかも請求金額決定に影響する場合があります。
これについても立証が必要ですが、診断書や写真のほか、継続的に記録を残しておく(メモやメール等)と、それも証拠になる場合があります。
4-4. 相手の親族による嫌がらせ
例えば夫側の両親が妻に対して嫌がらせやいじめをするなどして、それが離婚の原因になった場合、夫自身にも、それを止めなかった、適切な対応を取らなかった等の責任があれば、いじめの期間や程度によって、慰謝料を請求できる場合があります。
4-5. その他、生活費を渡されない、など
「生活費を渡されなかった」という理由であれば、その期間や相手の就業状況により請求できる場合があります。
一方的に家を出たまま、生活費も支払わない、家庭を顧みないといった状況であれば、法的には悪意の遺棄となり、請求できる可能性は高くなります。
長年にわたり性交渉を拒否されてきたという理由だけでは、離婚原因にはなっても、慰謝料請求まではできない場合もあります。
しかしその間、不倫相手とは性交渉していたということであれば、性交渉の拒否が慰謝料の請求金額を決める際に深く影響してきます。
いずれも慰謝料は、苦痛の度合いという、数字でははかりにくいものをお金に換算するものです。
こじれそうな場合や、なかなか決まらない場合は、弁護士への無料相談や、法テラスなどへの相談を考えるのも良いでしょう。(ご自身の収入資産の状況によっては、法テラスなら相談料を自己負担せずに弁護士の相談ができる場合があります)
5. 離婚慰謝料の請求方法と手順

実際に慰謝料を請求し、支払いを受けるまでの流れをご説明します。
5-1. 金額を決める
金額などといった条件を決める方法は、夫婦間で決める「協議」と、裁判所を挟んで決める「調停・裁判」の2つの方法があります。ここで、慰謝料の支払いについて相手が合意をすれば、慰謝料の受取権利が確立します。
慰謝料の金額を決める際のポイントは、慰謝料を請求する理由を明らかにしたものや請求の証拠をきちんと準備しておくことです。
例えば、請求理由が相手の浮気・不貞行為の場合は、その現場の写真や浮気相手とのメッセージの履歴、DVの場合は、暴力を受けた際に負った怪我の写真や医師の診断書などがあります。
請求相手が言い逃れできないように、きちんとした証拠を準備しておきましょう。
◎協議で決める場合
協議の場合は、直接話し合いをして決める方法と、書面でのやり取りにて金額等の条件を決めていきます。
直接話し合う場合は、相手の言い分に納得がいかなかったときに議論や交渉がしやすく、相手の責任逃れを防ぐことができます。また、その場で話し合うため、折り合いがつけば早期解決に繋がることもメリットの一つです。
ただ、デメリットとして、話し合いの途中で感情的になってしまい事態がもつれてしまったり、せっかく決まったのに後日言った言わない問答が発生する可能性もあります。また、リアルタイムで話し合いを進めるため、瞬時に適切な判断や回答をしなければなりません。話し合って決める際には注意が必要です。
書面でのやりとりで決める場合、相手と会う必要がないため、すでに別居をしていたり相手と会いにくい事情がある場合に向いているでしょう。
また、慰謝料を請求することになった原因やこちらの要求を明確に示すことができますし、もし相手から慰謝料について反論があった場合にもすぐに回答する必要がないため、自分のペースで回答を準備することができます。
しかし、相手から返事がない、連絡が取れないなどと責任逃れな行動をとられたり、解決に時間がかかったりなどといったデメリットも挙げられるため、このリスクについてもきちんと把握しておきましょう。
◎調停や裁判で決める場合
協議で慰謝料が決まらなかった場合は、慰謝料請求調停を申し立てます。調停でも決まらなかった場合は、裁判での解決を試みます。
調停の場合は、管轄の家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員という第三者を交えて協議を行います。そこでお互いに条件への折り合いがつけば、慰謝料が決定します。
裁判の場合は、地方裁判所に訴状を提出し訴訟を提起します。裁判の途中で、裁判官から双方の言い分を踏まえた和解案を提示され、それを受け入れて解決とするケースが多数です。
前述したように、判決まで進むとなると、最終的には「主張した額の請求が認められる場合」と「主張した額の請求が認められない(棄却)場合」のどちらかしかありません。ある程度の段階で折り合いをつけるのも一つの手です。
5-2. 決めた内容を書面にする
夫婦間の協議で慰謝料金額を決めた場合は、決めた内容をきちんと書面にしましょう。以下は、書面に記載するべき内容の一例です。
- 慰謝料を請求する理由
- 請求する慰謝料の金額
- 支払期日
- 支払方法
- (振り込みによる支払いの場合)受取り側が指定する振込先銀行口座
- 上記の内容に双方が合意することを示す一文
- 合意した日付
- 双方の署名、住所、捺印
慰謝料請求と同時に離婚手続きも進める場合には、財産分与や年金分割、子どもがいる場合には養育費のことなど、慰謝料以外にも取り決めることが多数あります。
そのため、慰謝料と同時に他の項目も決め、まとめて公正証書にて取り決め書面を作成すると、協議や書面作成が二度手間にならずスムーズに進めることができるでしょう。
なお、調停や裁判で取り決めた場合は、調停調書や和解調書、判決書などといった、取り決めた内容が裁判所によって書面化された公文書が作成されるため、自身で作成する必要はありません。
5-3. 実際に支払いを受ける
取り決めた内容どおりの期日に、取り決めた通りの支払い方法にて慰謝料の支払いを受けます。
相手の支払い能力に不安があったり、取り決めたにもかかわらず言い逃れをして支払いを逃れようとする不安がある場合には、慰謝料の支払いについて連帯保証人を付けるのも一つの手です。
6. 離婚時の慰謝料は踏み倒されるケースも…!請求時の注意点

慰謝料を請求したとしても相手から責任逃れな行動をとられ、結果泣き寝入りとなるケースも少なくないようです。ここでは、実際に慰謝料請求する際の注意点をご紹介します。
6-1. 慰謝料の支払い方法は離婚協議でしっかり決めよう
慰謝料をいつ受け取るか、どのように受け取るか等、支払方法の条件についても、離婚の際の協議や調停で決めることになります。
支払う側の都合にもよりますが、一括支払いではなく何回かに分割して支払われるケースもあります。分割にする場合、遅れた際には一括請求できる、ということも定めておいた方がいいでしょう。
また、話がついてすぐに受け取れるとは限らず、初回の支払い日も話し合いの中で決めることになるでしょう。
相談して決めた慰謝料の支払われ方については、離婚協議書や調停調書といった書面に記載することが大切です。
いつどのようにして受け取るかを明確にでき、支払いの確実性をより高めることができます。振り込まれる銀行口座や、支払い開始日と最終支払い日などまで細かく指定することで、支払いの漏れや遅れも明確になり、払われなかった場合に請求しやすくなるでしょう。
特に、前述した分割が遅れたときの一括請求については、明記しておかないとできませんから、しっかり書いておくことをお勧めします(期限の利益喪失条項といいます)。
とはいえ、慰謝料が約束の期日に支払われなかった場合に備え、慰謝料が約束の期日に支払われなかった場合に備え、遅延損害金を別途請求できるなどの条件も決めておくべきです。
離婚協議書に遅延損害金の件をしっかり記載しておけば、実際に遅延が発生した場合、その額も含めた請求をすることもできます。
何を決めるかしっかり定め、離婚協議に臨むようにしましょう。
また、離婚時には慰謝料の他にも取り決めるべき項目が多数あります。
協議時には、お金に関して以下の項目についても決めておくと良いでしょう。
◎養育費について
離婚後に、親権を持つ親が親権を持たない親に対して、子どもを育てるための費用を請求することができます。
養育費の金額は、相手の収入によって受け取れる金額が左右されるため、自身がどのくらい受け取ることができるのかおおよその金額を把握しておきましょう。
(参考記事)養育費の相場ってどれくらい?未払いを防止する方法ってあるの?
◎年金分割について
離婚後に、元パートナーの納めた厚生年金を分割して老後に受け取れる可能性があります。特に、専業主婦の方には知っておいてほしい制度です。
(参考記事)離婚時の年金分割制度とは?手続き方法・計算方法についても解説
◎財産分与について
婚姻中に購入した不動産や貯蓄、保険などといった共有財産がある場合は、今後どちらの名義にするか、またどのように分けるかを離婚時に決める必要があります。
(参考記事)離婚時の財産分与に税金はかかるの?課税される対象や金額とは
6-2. 離婚慰謝料の請求期限に注意しよう

慰謝料は、請求の原因となる事実が生じたときから3年以内であれば請求することができます。
逆に言えば、3年で時効となるので、慰謝料を受け取る機会をうっかり逃さないよう、それまでに請求するのかどうか決断しておく必要があります。
3年過ぎた後でも相手が時効を主張せず、慰謝料を支払う意思を表明すれば受け取ることは可能です。それ以前に相手側が時効を主張しなければ、請求権が消滅することはありません。
また、3年というのはその行為があったことを知ってから、ということになりますので、それを知らなかった場合には行為があった時点から20年以内であれば慰謝料は請求できます。
一応、3年経つ前に、時効を止める方法もあります。
裁判上の手続きで慰謝料を請求するか、準備が間に合わなければ、いったん内容証明郵便で相手に支払いの催告を送ってから、6ヵ月以内に裁判上の手続きを取る方法です。
どちらかの方法で裁判上の手続きを取れば、時効期間のカウントはいったんゼロになり、そこからまた始まることになります。
とはいえ、手続きの負担もかかりますし、相手とのやりとりをいつまでも行いたくはないでしょうから、3年以内に慰謝料はきっちり請求することをお勧めします。
6-3. 離婚慰謝料は基本非課税だが、課税対象になる場合も

離婚を原因として受け取った慰謝料には、原則として所得税、贈与税が課せられることはありません。
慰謝料は損害賠償金なので、損害の補填であって、収入や利益ではないという考え方です。原則として課税されないというのは、養育費や財産分与についても同様です。
養育費は扶養義務に基づく生活資金であり、財産分与も夫婦の共有財産の清算手続きであるため課税されないのです。つまり、それらによって受け取った金銭については原則として確定申告をする義務もありません。
ただし、慰謝料はそれなりの金額のお金です。税務署からどのようなお金か指摘された場合に備え、その金額が慰謝料であることを離婚協議書や調停調書などに記載しておき、あとから説明できるようにしておくのが良いでしょう。
また、どのような場合でも非課税かというと、そうではありません。
支払い額が社会通念上で過大であると税務署が認めると、その超過した金額分に対しては贈与税が課せられる可能性もあるのです。
例えば、損害賠償の範疇を遥かに超えた多額の金銭や不動産を受け取ったケースなどが考えられます。特に不動産については、評価額の変動によって多額とみなされる場合がありますので、そのような心配があれば、税理士などの専門家に相談して対策を考えると良いでしょう。
なお、不動産の所有者が変わった場合には所有権移転登記が行われますが、すると確定申告を行わなくてもその物件が所在する都道府県税事務所から納税通知が届くことになります。
ここで離婚協議書に所有権移転の法的な原因を記載しておけば、状況説明のために役立ちます。
(まとめ)慰謝料を請求するためのポイント

- 慰謝料とは離婚の原因となった行為による精神的苦痛に対して支払われるもの
- 慰謝料の範囲はおおよそ50万円から500万円だが苦痛の度合いで変わる
- 慰謝料について相談した内容は離婚協議書や調停調書などにしっかり記す
- 慰謝料には時効があるので3年以内に必ず請求する
慰謝料がどういうものか、ご理解いただけましたか。
慰謝料の取り決め方は状況によって様々です。請求できるかどうか、もし相手との話し合いがうまく進まなかったり、損をしそうだなと思ったら弁護士など法律の専門家に相談してみるのも良いかもしれません。
離婚後に揉め事は持ち越したくないもの。慰謝料については、離婚時にしっかりと取り決めておきましょう。
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