2020.07.13

離婚慰謝料の基礎知識|原因・相場・決め方などを解説

顔を背け離れてこしかける夫婦

離婚で気になる金銭の問題でよく耳にするのは、慰謝料」「養育費」「財産分与」などでしょうか。

そのなかでも、DVや、浮気、モラハラなど、相手に離婚の原因がある場合に請求できるのが慰謝料。
でも、慰謝料が支払われる目的や、相場、金額の決め方、さらには税金はかかるのかなど、よくわからないことも多いですよね。

相手に原因がある離婚で損はしたくないし、離婚後のお金の不安も小さくはないはず。だからきちんと計算して、請求できるものはしっかりと請求したい。

ここではその慰謝料にスポットを当てて解説します。


~ この記事の監修 ~

渡邊弁護士

わたしのみらい法律事務所
弁護士 渡邊 未来子
弁護士登録後に保育士資格を取得。養育費保証制度の相談会やセミナー、子ども食堂支援等を通じて、ひとり親家庭の支援活動を行っている。

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1. そもそも慰謝料とは何か?

電卓と小物

離婚した際に相手から受け取るお金として慰謝料養育費がありますが、双方の明確な違いをご存知でしょうか。

実は、慰謝料と養育費は性質がまったく異なります。

1-1. 養育費とは

離婚する夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、親権を持ち子どもと同居する方の親は、親権を持たない別居する方の親に対し、子どもを育てていくための費用を請求することができます。

日本では妻側が親権を持ち請求することが多いのですが、それが養育費です。

お子様のいる夫婦が離婚する場合は、必ず取り決めておきたい費用のひとつです。

急いで離婚する前に。子どもの養育費について考えよう。
養育費の受け取りに不安があるなら

1-2. 慰謝料とは

一方、慰謝料は配偶者から受けたDVやモラハラ、浮気などによる精神的・肉体的苦痛に対して支払われるものです。

つまり、暴力・暴言を与えられたり、相手が別の異性と不貞を働いたり、生活費を渡されなかったりすることで苦痛を受けたと判断される場合に請求できる損害賠償です。

ですから、本質的に養育費とは異なり、財産分与でもありません。

長年にわたって性交渉を拒否されてきたとか、姑とのいさかいを仲介してもらえなかったといった理由でも、慰謝料を請求できる可能性があります。

逆に、よく芸能人が離婚の理由として挙げる性格の不一致は慰謝料請求の対象にはなりません。離婚をすれば必ず慰謝料をもらえる」というのもよくある勘違いです。離婚を検討するにあたって、その点はしっかり理解しておいたほうよが良いでしょう。

また、配偶者の不貞が原因で離婚に至った場合、訴訟を起こしてその浮気相手にも慰謝料を請求できるケースがあります。

例外は、浮気相手が既婚者とは知らずに交際していたり、交際を始めた時点で、すでに夫婦の婚姻関係が破たんしていたりする場合です。
また、特に長期にわたり別居していたという状況では、浮気相手だけでなく配偶者にも原則として慰謝料が請求できないことが多いです。

つまり、養育費とは相手の収入によるものの、子供がいる場合、離婚の原因に関係なく請求できるものなのですが、慰謝料は、離婚の原因によって請求できる場合できない場合があるものであるということです。

2. 離婚慰謝料の相場と金額の取り決め方

電卓をもった女性

慰謝料の金額は夫婦間の話し合いによって決まるケースが大半で、相場に沿った一定額というわけではありません。

結婚してからの同居年数×一定の額、といった計算式が持ち出されることもありますが、離婚原因によって発生するものですから、その額もそこまで簡単に決まるものではありません。

裁判の例では、おおよそ50万円から500万円の間が多いのですが、話し合った結果、100万円から300万円で落ち着くことが多いようです。

なお、DVや浮気など、請求の理由となる苦痛の大きさ期間の長さによって、金額は大きくなる傾向があります。
芸能人の方が相手の浮気が原因で離婚をした際に高額な慰謝料を請求すると報道されることもありますが、財産分与やイメージダウンによる減収等、ほかの要素が加わっている可能性もあります。

裁判をしても最終的に判決まで行く事例は少なく和解示談で終わることもありますし、判決になればどうなるかわかりません。一般的に慰謝料の額は、離婚後の生活をずっと支えるほどの金額にはならないと考えたほうが良いでしょう。

金額を取り決める際は、夫婦間の相談により円満に決定するのは理想ですが、第三者、あるいは弁護士などの専門家も交えて協議したほうが良いケースも少なくありません。
また、口約束だけで済ませずに、離婚協議書を作成し、金額のほか支払い方法や支払い期限などの条件まで明記することをお勧めします。
この点については、後でまた詳しくご説明します。

なお、協議を行っても慰謝料が決まらない場合は、調停、さらに裁判へと進んでいくことになるかもしれません。

こじれると相当な時間と手間がかかり、弁護士に依頼する場合は弁護士費用などもかかります。もともと、金額についてはケースバイケースで、いくらとれるか確証のない話ですので、どのあたりで折り合うかも重要と言えます。

3. 離婚の理由で慰謝料は変わる

切れた赤い糸とハサミ

慰謝料の金額は、離婚の理由状況によっても変わります。

この要素によっていくら上がる、と言えるほどの相場はありませんが、浮気やDVなど、実際に相手に非がある場合は、婚姻期間が長いほど精神的苦痛も大きいと見なされ、金額も大きくなるのが一般的です。

ここでは離婚の理由別に慰謝料がどうなるかを見ていきましょう。

3-1. 浮気や不貞

配偶者が浮気をした場合は、それによるショックの度合いが大きいほど、慰謝料も多くなる傾向があるようです。

例えば、浮気の前科があり、「もう二度としない」と約束したのにも関わらず過ちを繰り返した場合や、浮気相手が配偶者の子どもを妊娠・出産した場合です。

浮気相手にも慰謝料を請求できますが、実際の話し合いの中では、浮気相手の社会的地位支払い能力が慰謝料に影響することもあります。

また、一人の受ける精神的な苦痛は一つですから、配偶者あるいは浮気相手から受け取った分は、さらに別の相手から二重取りをすることはできず、別の相手に請求する慰謝料の額から差し引かれることになります。
例えば、浮気によって受けた精神的な苦痛による慰謝料が300万円と算定された場合は、浮気相手と浮気をした配偶者に、合わせて300万円を請求できるだけとなります。

ただ、浮気をしたという事実は、請求する側が立証せざるを得ないので、それが困難な場合もあります。

具体的には、ホテルに出入りする写真や、事実を認める発言の痕跡(最近は、文書でなくメールやラインも証拠となる場合があります)が考えられます。

3-2. 借金

夫婦共通の目的のためではなく、もっぱら個人のために行った借金で、夫婦関係の継続すら困難になったという場合には、離婚理由として認められ、慰謝料が請求できる場合があります。

具体的には、ギャンブル単なる浪費風俗通いや、浮気相手に貢ぐための借金などです。
夫婦が共同で生活するために購入した家の住宅ローンや車のローンは、慰謝料の請求の対象にはなりません。

この場合も金額は、相手から受けた苦痛の度合いや期間によって違いますし、慰謝料を請求する場合は、証拠となるものが必要です。
通帳のコピーやクレジットカードの明細、家計簿の収支などを集めておくと良いでしょう。

ただ、借金をする相手ですから、実際には、相手の支払能力も考え、額を下げても一括にするのか、分割にするのか、よく見極めて条件の話し合いをした方が良いでしょう。

3-3. DVやモラハラ

不貞による離婚を例に慰謝料について説明してきましたが、DVモラハラなどの理由でも同じことが言えます。

つまり、配偶者から暴力などのハラスメントを受けて来た期間回数、それによる被害の内容(怪我、うつ病の発症など)により金額は変わります。

その際、こちら側にもそのような行動を誘引する言動がなかったかも請求金額決定に影響する場合があります。

これについても立証が必要ですが、診断書や写真のほか、継続的に記録を残しておく(メモやメール等)と、それも証拠になる場合があります。

3-4. 相手の親族による嫌がらせ

例えば夫側の両親が妻に対して嫌がらせやいじめをするなどして、それが離婚の原因になった場合、夫自身にも、それを止めなかった、適切な対応を取らなかった等の責任があれば、いじめの期間や程度によって、慰謝料を請求できる場合があります。

3-5. その他、生活費を渡されない、など

生活費を渡されなかった」という理由であれば、その期間や相手の就業状況により請求できる場合があります。

一方的に家を出たまま、生活費も支払わない、家庭を顧みないといった状況であれば、法的には悪意の遺棄となり、請求できる可能性は高くなります。

長年にわたり性交渉を拒否されてきたという理由だけでは、離婚原因にはなっても、慰謝料請求まではできない場合もあります。
しかしその間、不倫相手とは性交渉していたということであれば、性交渉の拒否が慰謝料の請求金額を決める際に深く影響してきます。

いずれも慰謝料は、苦痛の度合いという、数字でははかりにくいものをお金に換算するものです。

こじれそうな場合や、なかなか決まらない場合は、弁護士への無料相談や、法テラスなどへの相談を考えるのも良いでしょう。(ご自身の収入資産の状況によっては、法テラスなら相談料を自己負担せずに弁護士の相談ができる場合があります)

4. 支払い方法は離婚協議でしっかり決める

サイコロに座って向かい合う男女の人形

慰謝料をいつ受け取るか、どのように受け取るか等、支払方法の条件についても、離婚の際の協議や調停で決めることになります。

支払う側の都合にもよりますが、一括支払いではなく何回かに分割して支払われるケースもあります。分割にする場合、遅れた際には一括請求できる、ということも定めておいた方がいいでしょう。
また、話がついてすぐに受け取れるとは限らず、初回の支払い日も話し合いの中で決めることになるでしょう。

相談して決めた慰謝料の支払われ方については、離婚協議書や調停調書といった書面に記載することが大切です。

いつ、どのようにして受け取るかを明確にでき、支払いの確実性をより高めることができます。振り込まれる銀行口座や、支払い開始日最終支払い日などまで細かく指定することで、支払いの漏れや遅れも明確になり、払われなかった場合に請求しやすくなるでしょう。

特に、先ほど申し上げた分割が遅れたときの一括請求については、明記しておかないとできませんから、しっかり書いておくことをお勧めします(期限の利益喪失条項といいます)。

さらに、慰謝料が約束の期日に支払われなかった場合に備え、遅延損害金を別途請求できるなどの条件も決めておくべきです。

離婚協議書に遅延損害金の件をしっかり記載しておけば、実際に遅延が発生した場合、その額も含めた請求をすることもできます。
何を決めるかしっかり定め、離婚協議に臨むようにしましょう。

5. 時効の期限に注意しよう

期限のマークと砂時計

慰謝料は、請求の原因となる事実が生じたときから3年以内であれば請求することができます。
逆に言えば、3年で時効となるので、慰謝料を受け取る機会をうっかり逃さないよう、それまでに請求するのかどうか決断しておく必要があります。

3年過ぎた後でも相手が時効を主張せず、慰謝料を支払う意思を表明すれば受け取ることは可能です。それ以前に相手側が時効を主張しなければ、請求権が消滅することはありません。

また、3年というのはその行為があったことを知ってから、ということになりますので、それを知らなかった場合には行為があった時点から20年以内であれば慰謝料は請求できます。

一応、3年経つ前に、時効を止める方法もあります。

裁判上の手続きで慰謝料を請求するか、準備が間に合わなければ、いったん内容証明郵便で相手に支払いの催告を送ってから、6ヵ月以内に裁判上の手続きを取る方法です。

どちらかの方法で裁判上の手続きを取れば、時効期間のカウントはいったんゼロになり、そこからまた始まることになります。

とはいえ、手続きの負担もかかりますし、相手とのやりとりをいつまでも行いたくはないでしょうから、3年以内に慰謝料はきっちり請求することをお勧めします。

6. 非課税だが例外も

電卓と木の自動車のおもちゃ

離婚を原因として受け取った慰謝料には、原則として所得税贈与税が課せられることはありません。

慰謝料は損害賠償金なので、損害の補填であって、収入や利益ではないという考え方です。原則として課税されないというのは、養育費や財産分与についても同様です。

養育費は扶養義務に基づく生活資金であり、財産分与も夫婦の共有財産の清算手続きであるため課税されないのです。つまり、それらによって受け取った金銭については原則として確定申告をする義務もありません。

ただし、慰謝料はそれなりの金額のお金です。税務署からどのようなお金か指摘された場合に備え、その金額が慰謝料であることを離婚協議書調停調書などに記載しておき、あとから説明できるようにしておくのが良いでしょう。

また、どのような場合でも非課税かというと、そうではありません。

支払い額が社会通念上で過大であると税務署が認めると、その超過した金額分に対しては贈与税が課せられる可能性もあるのです。

例えば、損害賠償の範疇を遥かに超えた多額の金銭や不動産を受け取ったケースなどが考えられます。特に不動産については、評価額の変動によって多額とみなされる場合がありますので、そのような心配があれば、税理士などの専門家に相談して対策を考えると良いでしょう。

なお、不動産の所有者が変わった場合には所有権移転登記が行われますが、すると確定申告を行わなくてもその物件が所在する都道府県税事務所から納税通知が届くことになります。
ここで離婚協議書に所有権移転の法的な原因を記載しておけば、状況説明のために役立ちます。

(まとめ)慰謝料を請求するためのポイント

考える女性と余白
  • 慰謝料とは離婚の原因となった行為による精神的苦痛に対して支払われるもの
  • 慰謝料の範囲はおおよそ50万円から500万円だが苦痛の度合いで変わる
  • 慰謝料について相談した内容は離婚協議書調停調書などにしっかり記す
  • 慰謝料には時効があるので3年以内に必ず請求する

慰謝料がどういうものか、ご理解いただけましたか。

慰謝料の取り決め方は状況によって様々です。請求できるかどうか、もし相手との話し合いがうまく進まなかったり、損をしそうだなと思ったら弁護士など法律の専門家に相談してみるのも良いかもしれません。

離婚後に揉め事は持ち越したくないもの。慰謝料については、離婚時にしっかりと取り決めておきましょう。


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