更新日: 2022.11.04

公開日:2020.10.19

母子家庭が生活保護を受けるには?生活保護の詳細と申請方法・注意点など

母と子

母子家庭のため十分な収入がなく生活が苦しい、あるいは今後苦しくなるかもしれないとお悩みになっていませんか?

母子家庭で経済的に厳しい場合は、生活保護を受けるという選択肢もあります。しかし、どのように生活保護を申し込むのかを知らないという人や、母子家庭だと受給できるのかわからないという人もいるでしょう。

そこで、生活保護を受給するための条件や申請方法など、知っておくべき情報を紹介します。


~ この記事の監修 ~

監修者:青野泰弘

ファイナンシャルプランナー・行政書士
青野 泰弘

1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。

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1. 母子家庭の厳しい現状

衣食住

そもそも、母子家庭の半数が貧困状態にあることをご存知でしょうか。

厚生労働省が発表した2016年度の「国民生活基礎調査」によると、全世帯の相対的貧困率が15.7%だったのに対し、ひとり親世帯の貧困率は50.8%でした。この結果から日本のひとり親世帯は、貧困率が高いということがわかります。

さらに、2016年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、父子家庭の平均世帯年収が420万円であるのに対し、母子家庭の平均世帯年収は243万円と、およそ180万円の差があるのです。

母子家庭が貧困化しやすい理由として、就業状況の違いが挙げられます。

2016年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、正規雇用と非正規雇用の割合は、父子家庭の正規雇用が68.2%、パート・アルバイト等が6.4%です。一方、母子家庭の正規雇用が44.2%パート・アルバイト等が43.8%と、正規雇用と非正規雇用はおよそ半々になっています。女性の場合は出産を機に退職した人や、離婚前は専業主婦やパートだったという人が少なくありません。

さらに、シングルマザーの場合は子どもが体調不良になったときに欠勤や早退をしなければならなかったり、遅い時間まで働けなかったりするため、雇用側も正規雇用に踏み切れないという事情があります。

さらに、日本では養育費が払われないことが多いという事実も、母子家庭の貧困化に関係しています。前出の同調査によると、父親から養育費を受けている家庭は24.3%、過去に受けたことがある家庭は15.5%、受け取ったことがない家庭は56.0%と、半数以上の母子家庭が養育費を受け取っていないのです。

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2. 生活保護は母子家庭でも受けられる

勉強をする親子

母子家庭で生活保護を受けられるのか、気になっている人もいるでしょう。ここからは母子家庭における生活保護の現状について解説します。

2-1. 生活保護は全ての人に開かれている

生活保護とは日本国憲法第25条第1項に定められている健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するためのものです。

やむを得ない事情で働けなかったり、生活できるだけの収入を得られなかったりなどの理由で生活に困った国民に対し、最低限度の生活の保障と自立支援を目的として支給されます。

受給条件を満たしていれば、年齢や性別、国籍を問わず受けることが可能です。未婚か既婚かも問われないため、母子家庭であっても生活保護は受給できます

なお、生活保護は全ての人に対して開かれているものの、申請すれば誰でも必ず受けられるとは限りません。一定の条件を満たしていなければ、生活保護の対象にはならないため注意が必要です。

2-2.母子家庭の生活保護受給状況

厚生労働省が2017年に発表した「生活保護制度の現状について」によると、生活保護を受給している母子家庭は2012年の11万4000世帯が最も多く、それ以降も約10万世帯を維持しています。

母子家庭に限らず、生活保護の受給者は年々増加しており、自治体の財政を圧迫しつつあります生活保護とは収入を得るのが困難になった人が生活を立て直すまでの一時的な措置です。しかし、実際には生活保護を受けたために働く意欲を失い、自立しようとしない受給者もいます。

そのため、自治体の審査はますます厳しくなり、本当に生活に困っている人まで生活保護が受けづらくなっている状況なのです。生活保護を申請するのであれば、念入りに準備を整えたうえで、受給を認めてもらえるまで何度も役所へ相談に行く覚悟が必要になるでしょう。

3. 生活保護の要件

チェックリスト

生活保護を受給するには、いくつかの要件を満たしていなければなりません。

厚生労働省のホームページによれば、「生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。」とされています。

ここからは、生活保護を受けるための具体的な条件について紹介します。

3-1.資産の活用

まず、生活保護を受けるにあたり、資産を保有することはできません

資産とは、貯金年金保険金退職金失業保険相続した財産のほか、土地家屋なども含まれます。そのような資産を持っている場合は一度売却し、生活費に充てなければなりません。

資産を売却しても最低生活費を下回っている場合は、生活保護の受給が可能です。

最低生活費とは、日本国憲法第25条第1項に記されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な生活費を意味します。 最低生活費は世帯の人数や年齢、居住する地域により異なるため、生活保護の受給を検討しているのであれば、一度計算してみると良いでしょう。

なお、仕事で必要だったり、移動にどうしても欠かせなかったりなどの理由で車を手放せない場合は、売却せずに生活保護を受けられる可能性があります。役所へ申請する前に、居住地の福祉事務所へ相談しておくと安心です。

3-2.能力の活用

母子家庭であっても、子どもがアルバイトなどで働ける年齢であれば、可能な限り働くようにというのが自治体の基本的な考え方です。

ただし、親に持病がある場合や、重度のうつ病などで就労が困難であると判断された場合は、生活保護を受けられる可能性があります。

その場合は医師の診断書などを用意して、働くのが難しいと証明できるよう準備を整えておいたほうが良いでしょう。また、子どもに障がいがあり、就労が難しい場合も受給できる可能性が高くなるでしょう。

なお、子どもに障がいがある家庭では、特別児童扶養手当の受給を検討するのも一つの方法です。特別児童扶養手当は、身体的または精神的な障がいを有する20歳未満の児童を養育する家庭へ支給されます。

支給金額は1級と2級で異なり、2020年4月の時点で1級は1ヵ月あたり5万2,500円、2級は1カ月あたり3万4,970円です。

ただし、特別児童扶養手当には所得制限があり、受給者とその配偶者、扶養義務者のうち、いずれかの所得が一定額を上回る場合は支給されません。特別児童扶養手当の受給を希望する場合は、居住地の市区町村の窓口へ相談してみましょう。

3-3.あらゆるものの活用

生活保護の審査では、児童扶養手当をはじめ、税金の減税制度補助金などを利用しているかという点も見られます。それらの手当てを受けてもなお、最低生活費に届かなければ生活保護の受給が可能です

万が一、国や自治体による支援や手当を受けていない場合は、生活保護を受ける前に他の公的制度を申請する必要があります。代表的なのは年金失業保険児童扶養手当などです。他にも、住宅確保給付金高額医療費制度傷病手当金なども該当します。

住宅確保給付金は生活困窮者自立支援制度の一環であり、生活が困窮しており家賃が払えなくなった人を対象に支援を行います。

高額医療費制度とは、1ヵ月間の医療費が限度額を超えた際に、超過分が返還される制度です。

傷病手当金は、病気や怪我により休職せざるを得ない人に対して手当てが支給されます。

なお、住宅確保給付金は居住地の市区町村の窓口社会福祉協議会で申請できますが、高額医療費制度と傷病手当金に関して相談や申請を行う際は、加入している健康保険の窓口へ問い合わせましょう。

3-4.扶養義務者の扶養

自治体は生活保護を受ける前に、親族や元夫など援助を受けられる相手がいれば、まずは援助や手当を先に受けるべきと考えています。

同居していなかったとしても、兄弟など援助を期待できる家族や親族がいたり実家に戻れば問題なく生活できたりする場合には、許可が下りにくいのです。ただし、援助を受けられない場合や、援助を受けても生活が困難であると認められた場合は、生活保護を受給できます。

たとえば、親と絶縁していたり、扶養義務者から援助を断られたりすると、家族や親族の援助を受けられないと判断され、生活保護を受けられる可能性が高いです。

なお、扶養者に十分な収入があったとしても、はっきりと援助できないという意思表示をされたときや、連絡しても回答が得られないときには、自治体から援助を強制することはできません。

また、扶養者自身の生活が困窮しており、援助が難しい場合も、「家族や親族の援助を受けられない状態」にあたります。

4. 保護される生活の中身

ハートと手

生活保護により支給される扶助は、全部で8種類あります。

まず、衣食住に必要な①生活扶助、家賃を支払うための②住宅扶助、子どもが義務教育を受けるために必要な③教育扶助が挙げられます。

また、④医療扶助⑤介護扶助⑥出産扶助といった医療系サービスに対する扶助も受けることも可能です。

さらに、仕事をするために必要な技能の習得を支援する⑦生業扶助、葬祭費用に充てることができる⑧葬祭扶助も受けられます。

これらの扶助のうち、医療扶助と介護扶助については、医療機関や介護事業者へ直接支払われるため、本人が費用を負担することがなくなります。

5. 生活保護と母子家庭の手当は同時に受けられる

子どもを抱っこするお母さん

生活保護は、特別児童扶養手当などの公的制度を活用しても、なお生活が苦しい場合に適用されます。

生活保護よりも先に申請すると、受けた手当等は収入という扱いになりますが、児童扶養手当などの手当と生活保護を同時に受けることも可能です

ただし、公的制度を利用しながら生活保護を受給する場合は、手当等の収入の分だけ、生活保護の支給額が減らされる可能性もあります生活保護を受けられるのは、手当等が支給されても最低生活費に満たない収入しか得られない場合です。

手当等を含めた収入が最低生活費を上回る場合には、生活保護の対象から外れてしまうため注意しましょう。

6. 母子家庭だといくらもらえる?保護費の計算方法

電卓

生活保護費の金額を計算する方法は、家族の人数や年齢、居住地により異なり、また非常に複雑です。自分で計算する際は、まず厚生労働省が公開している生活扶助基準の表を見ましょう。

最初に、居住している地域の等級を調べます。たとえば、東京都新宿区に住んでいる母子家庭なら、等級は「1級地-1」です。

次に、基準額②の欄を見て、自分が住んでいる等級の項目に書かれている数字を生活扶助基準②(第1類)×逓減率②+生活扶助基準②(第2類)」にあてはめて計算します。

算出したものが、生活保護を受けたときに受給できる金額です。母子家庭や妊婦の場合は、ここからさらに加算額が発生します。

(注1:参考サイト)お住まいの地域の級地を確認|厚生労働省
(注2:参考サイト)生活扶助基準|厚生労働省

7. 申請方法

メモを取る女性

生活保護の申請は、居住地を管轄する福祉事務所で行います。まずは事前相談を行い、生活保護に関する説明を受けましょう。

このとき、支給条件を満たしているか、生活保護の他に受けられる手当や社会保障などがないかなどを調べることもできます。

事前相談の際は自分の資産状況や働けない理由がわかるよう、給与明細や通帳、医師の診断書といった資料を持参して行くと、スムーズに手続きが進むでしょう。

申請を行うと、受給の要件を満たしているか調査が行われます。原則として申請後14日以内に受給の可否が決まるものの、調査に時間がかかったときは、最長30日まで延びる場合もあるため気をつけましょう。

8. 申請を断られる場合とは

指でバツ印を作る女性

生活保護の申請を断られる理由として多いのが、要件を満たしていなかった場合です。

  • 資産と見なされるものを所有している
  • 援助が期待できる人がいる

このような場合、認められない可能性が高くなります。

また、

  • 働けると判断された場合
  • 国家資格を取得している場合

こちらもやはり申請は通りにくいです。ただし、地域によっては車を所有していても、移動する際に必要となるため所有が認められることもあります。

この他にも、

  • 親や兄弟が福祉事務所の調査に協力的でない場合
  • 親や兄弟と連絡がつかなかったりする場合

上記のような場合に、援助は難しいと判断されるでしょう。

申請者本人が調査に協力する姿勢を見せない、不審な点が多いなどの問題があると、やはり断られる原因となるため注意が必要です。福祉事務所へ相談する際は全てを正直に話し、誠実な対応を心がけましょう。

9. 生活保護を受けるデメリット・注意点

デメリット

生活保護を受けるにあたり、いくつかのデメリットや注意点があります。

まず、生活保護を受給していると、貯金ができません。そのため、子どもの進学費用などを用意するのが難しくなるでしょう。

さらに、住居や車、娯楽品にも制限がかかるため、生活していく中で不自由を感じる場面も多いです。

また、人によっては「生活保護を受けている」という事実そのものが精神的なストレスを生む可能性もあります。

生活保護を受給するのであれば、これらのデメリットがあることも把握しておく必要があります。

(まとめ)要件を満たしているようなら一度相談してみよう

子どもを抱き上げるお母さん

生活保護は申請から受給まで時間がかかるうえに審査も厳しいため、まずは使える制度から活用してみるのが無難です。

それでもなお収入が足りないようであれば、生活保護を検討すると良いでしょう。もし、生活保護の要件を満たしている可能性が高いのであれば、居住地の福祉事務所に相談してみてください。


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