更新日: 2022.11.25
公開日:2022.11.25
再婚禁止期間ってなに?目的や例外をわかりやすく解説

再婚禁止期間とは、離婚後100日間に亘って再婚を禁止されている期間のことをいいます。
子どもの父親を推定するため、女性にのみ定められていましたが、今後撤廃されることが2022年10月14日に閣議決定しました。
離婚後、できる限り速やかに再婚したいと考える女性にとってネックになっていた再婚禁止期間ですが、この記事では、
- 再婚禁止期間とはそもそもどのような期間なのか
- 定められていた目的や背景
- 再婚禁止期間の数え方
- もし守らなかった場合に起こり得るトラブル
- 再婚禁止期間が適用されない例
- 改正予定の民法
などについて詳しく解説します。
~ この記事の監修 ~

青野・平山法律事務所
弁護士 平山 愛
現在の日本の夫婦は、必ずしも平等で対等な立場にあるわけではありません。経済的・社会的に弱い立場にある者の生活を守り、公平な解決となるよう心掛けています。
1. 再婚禁止期間とは?

「再婚禁止期間」とは、元夫と離婚をした日から再婚するまでに空けなければならない、女性にのみ定められた期間のことを言います。
再婚禁止期間は、離婚をした日から100日間と定められており、「待婚期間(たいこんきかん)」とも呼ばれます。
なお、民法第733条の条文では、「女は、前婚の解消または取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と規定されています。
再婚禁止期間は、なぜ女性のみ定められているのでしょうか?次に、定められている目的や理由を解説します。
2. 女性だけに定められている理由は?

女性にのみ100日間の再婚禁止期間が定められている理由は、「扶養義務を負う父親を明確にして子どもの利益・権利を保護するため」です。
仮に、離婚後すぐに再婚して妊娠した場合、子どもの父親が、元夫・再婚後の夫のどちらなのかをすぐに推定することができません。これには、民法772条の嫡出推定制度が関係しています。
摘出推定制度とは、妻が婚姻中に妊娠した子どもを、法律上、夫の子どもと推定することです。
「婚姻の成立の日から200日が経過した後」もしくは「離婚後300日以内」に生まれた子どもは、婚姻中に妊娠した子どもとして戸籍に記載する、とされています。

そのため、離婚をした後に再婚をする場合には、子どもの父親を明らかにするために再婚の時期を考慮する必要があります。

しかし、もし離婚後にすぐ再婚をした場合 、元夫の子とされる期間と現夫の子とされる期間が100日間重なってしまうのです。
少しわかりにくいので、具体的に例をあげて解説します。
仮に、離婚後50日で女性が再婚し、再婚から220日後に子どもが生まれたとします。その子どもが生まれたのは再婚から220日後なので「再婚後の夫との婚姻の成立から200日が経過した後」です。

しかし、元夫との離婚から270日しか経っていないので「元夫との離婚後300日以内」でもあるのです。両方の条件を満たすため、父親を特定することが難しくなってしまいます。

こうした混乱を避け子どもを保護するために、100日間の再婚禁止期間が設けられています。
3. 再婚禁止期間を考慮しなくていいケース

再婚禁止期間中も例外的に再婚できるケースがあります。
そもそも、再婚禁止期間が設けられている目的は「子の父親が誰かという混乱を避け、扶養義務のある父親を特定することで子どもを保護するため」です。
つまり、再婚後に生まれてくる子どもの父親が明確であれば問題ないということになります。ここでは、再婚禁止期間を考慮しなくていい5つのケースをご紹介します。
3-1. 離婚する時点で妊娠していない場合
離婚する時点で妊娠していなければ、その後にできる子どもは再婚後の夫の子どもであると容易に推定することができます。
そのため、離婚時点で妊娠していない事実が確認できる場合や、離婚後に妊娠したことが認められる場合は再婚禁止期間を考慮する必要はありません。
なお、この場合は、医師による妊娠していない証明書が必要になります。
3-2. 元夫との婚姻中に元夫の子供を妊娠し、離婚後に出産した場合
この場合、離婚後に出産した子どもは元夫との子であることは明確です。そのため、民法により再婚禁止期間適用の例外とされます。
「子どもの父親が明確である」ことがポイントになるのです。
3-3. 女性が高齢である場合
女性が高齢で妊娠の可能性が極めて低いといえる場合には、再婚禁止期間は適用されません。
3-4. 子宮を全摘出している場合
何らかの事情があり、子宮の全摘出をしている場合 、身体の構造上妊娠の可能性がありません。
医療機関の診断書を併せて提出することで、再婚禁止期間が適用されなくなります。
3-5. 元夫との再婚の場合
例外にはなりますが、同じ相手と再婚する場合も再婚禁止期間は適用されません。
再婚相手が元夫の場合、父親と推定される人物は1人です。そのため、混乱やトラブルが起きる可能性や、子どもに不利益が生じる可能性も低いと考えられるのです。
4. 再婚禁止期間の数え方

再婚禁止期間は、離婚した日を1日目として数えたときに、その100日後までが対象となります。
例えば、4月1日に離婚をした場合、1日目である4月1日から100日目の7月9日までが再婚禁止期間となり、101日目である7月10日から再婚が認められることになります。
基本的に、民法上で何らかの期間を定める場合は「初日不算入の原則」に則り、対象期間の初日は1日目としてカウントしません(期間の始まりが午前0時の場合を除く)。
しかし、再婚禁止期間は初日不算入の原則の例外となります。なぜなら、再婚禁止期間は民法第733条で「前婚の解消又は取消しの日から起算して100日」と明記されているためです。
補足ですが、初日不算入の原則は、民法140条で「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない」と規定されています。
5. 再婚禁止期間を守らなかったときに罰則はあるの?

民法で禁止されていると聞くと、万が一再婚禁止期間中に再婚した場合にはどうなるのか気になる人もいるかもしれません。
結論、万が一再婚禁止期間中に再婚してしまったとしても、罰則があるわけではありません。摘発や逮捕されたり、罰金を請求されることもないのです。
ですが、再婚禁止期間を守らなかった場合に、以下のようなトラブルや、本来する必要のなかった手続きが発生するリスクがあります。
5-1. 子どもの父親を裁判所に判断される場合がある
もしも再婚禁止期間中に再婚し、その期間中に子どもが生まれた場合、子どもの父親は、元夫・再婚後の夫のどちらなのかを裁判所に判断されることになります。
この場合、父子関係を科学的に判断するためにDNA鑑定を行い、その結果を踏まえて父親が決められることになるでしょう。再婚禁止期間さえ守っていれば、もちろん裁判の必要などはありません。
罰則がないとはいえ、手間や時間がかかる点からすると、守らない場合のデメリットは非常に大きいといえます。
5-2. 子どもが無戸籍になる危険性がある
元夫との離婚後に別の男性との子どもを妊娠し、再婚禁止期間中に出産した場合、その子どもが元夫との子でないことが明らかだったとしても、戸籍上は元夫との子と記載されてしまいます。
子どもが戸籍上元夫との子となることを避けるために出生届を提出しなかった場合、子どもは無戸籍となってしまいます。無戸籍だと、生きていくために必要な行政サービスをすぐに受けることができません。
あまり現実味の無い話と感じるかもしれません。しかし、現代の日本においても無戸籍の子どもは存在します。子どものためにも再婚禁止期間はきちんと守ること、そして正確に確認することが大切です。
5-3. 再婚禁止期間中に婚姻届が誤って受理されることもある
そもそも、再婚禁止期間を無視して婚姻届を提出しようとしても、原則窓口で受理されずに返されてしまいます。しかし、人的ミスなど何らかのトラブルがあり、誤って受理されてしまう可能性もあります。
万が一、再婚禁止期間中に婚姻届が受理されてしまった場合に、前項のようなトラブルを避けるために婚姻届を取り消したいという場合には、取り消し請求を行うことも可能です。
ただし、取り消し請求をする時点で再婚禁止期間が終わっていたり、再婚後に女性が出産していたりするケースでは、取り消しすることはできません。
「元夫との関わりをできる限り絶ちたい」という強い希望がある人は特に、婚姻届の提出時点で再婚禁止期間が終わっているかどうかをしっかり計算して確認しましょう。
再婚禁止期間が確実に終わってから婚姻届を提出すれば、余計なトラブルを極力避けることができます。
6. 2016年の法改正で再婚禁止期間は短縮された

もともと、再婚禁止期間は6ヵ月と定められていました。
しかし「再婚禁止期間訴訟」での最高裁判決をきっかけに、2016年に法改正されています。「再婚禁止期間訴訟」とは、再婚禁止期間が日本国憲法の男女平等に反するとして女性が国に損害賠償を求めた裁判のことです。
裁判は2011年に始まり、一審・二審判決では原告の訴えが棄却されました。しかし、2015年に行われた最高裁での判決で、損害賠償請求こそ棄却されたものの、再婚禁止期間のうち100日を超える部分については違憲であると認められたのです。
実は、その前の1995年にも同様の裁判は起こされていました。しかし、その際は「違憲ではない」という判決が下されたのです。
その頃から再婚禁止期間の是非を問う声があったにもかかわらず、改正されるまで20年もの歳月がかかったことになります。
ちなみに、民法が改正されるまでは、再婚禁止期間も「初日不算入の原則」の対象となっていました。現在では、離婚日を初日として100日後までとなっています。
7. 【2022年10月14日】再婚禁止期間の撤廃が閣議決定しました

日本の法律は明治時代に作られたものが元になっているため、現代の時代背景にそぐわないという意見も多くあります。もちろん、再婚禁止期間が定められている民法についても同様です。
今から約120年前の明治時代にはDNA鑑定もなく、当時の医療技術では妊娠の判定が困難なので、再婚禁止期間を設けることに合理性はあるかもしれません。
しかし、医療技術が進歩した現代では、妊娠中か否かを高精度で判断することが可能です。
そのため、
- 「期間云々ではなく、そもそも再婚禁止期間自体が不要ではないか」
- 「再婚禁止期間は女性差別である」
- 「男女平等に反する」
などと、再婚禁止期間に対する批判も集まっています。
実際に、先進国の多くで再婚禁止期間は廃止されています。以下は再婚禁止期間を廃止している先進国です。
- 北欧諸国:1960年代後半に廃止
- スペイン・ドイツ・フランスなど:1980年代~2000年代に廃止
- アメリカやイギリスなど先進国:そもそも再婚禁止期間を設けていない
このような背景もあり、2022年2月には法制審議会にて「再婚禁止期間の廃止」について見直し案を法務大臣へ提出し、2022年10月14日に再婚禁止期間が撤廃されることが閣議決定されました。
明確な改定時期は不明ですが、今期の国会での成立を目標に準備を進めているようです。現時点で、法務省から公表されている改正民法案は、以下の通りとなっています。
第733条(再婚禁止期間)削除
第772条(嫡出の推定)
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定するものとすること。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とするものとすること。(第七百七十二条第一項関係)2 1の場合において、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するものとすること。(第七百七十二条第二項関係)
3 1の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定するものとすること。(第七百七十二条第三項関係)
引用元:民法等の一部を改正する法律案要綱|法務省
上記より、再婚後に生まれた子どもは再婚相手との子どもと推定されることになります。
この改定案はすでに2022年11月17日に衆議院本会議で可決され、参議院に送られたようです。離婚時に再婚禁止期間を考慮する必要がなくなるため、女性からするとかなり大きな民法改正であると言えます。
(まとめ)子どもの幸せのために。再婚するときは気を付けよう

再婚禁止期間は、子どもをトラブルに巻き込まないためのものです。再婚相手と早く夫婦になりたいからと再婚禁止期間を無視すると、後々トラブルに発展する可能性が高くなります。
今後法律が改正されるため、再婚禁止期間自体が廃止されますが、民法が改正されるまでは引き続き気を付ける必要があります。再婚をする際には注意するように心がけましょう。
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