更新日: 2023.04.14
公開日:2020.07.06
母子家庭が使える手当や補助ってなに?手当と申請方法を紹介

離婚してシングルマザーになった場合、経済的な面で不安を覚える人が多いようです。実際に、母子家庭は貧困に陥りやすいといわれています。このような不安を解消するにはどうすればいいのでしょうか。
実は日本では、母子家庭のための手当や支援制度が豊富に用意されています。
これらの母子家庭向けの手当をうまく利用すれば、経済的にも安定し、不安を解消することができるでしょう。
今回は、母子家庭に役立つ手当や各支援制度の概要、受け取れる金額、申請方法、いつまで受け取れるのかなどを紹介します。
~ この記事の監修 ~

株式会社SMILELIFE project
ライフブックアドバイザー(FP) 池田 啓子
フィーオンリーのFPサービスを提供し保険や金融商品の販売をせずにライフプランニング相談業務を行っています。
1. 母子家庭が受けられる手当:児童扶養手当

母子家庭が活用できる代表的な支援手当といえば、「児童扶養手当(母子手当)」です。
支給要件や所得制限を満たせば、最大で月額43,070円の手当を受け取ることができます。所得に応じて受給金額は変わりますが、母子家庭にとって家計の大きな助けとなるでしょう。
まずは、児童扶養手当の概要や受け取れる金額、申請方法について詳しく解説していきます。
1-1. 「児童扶養手当」とは
「児童扶養手当」は、離婚や死別などによりひとり親家庭となった世帯などを対象に、家庭の収入を安定させる目的で一定額の給付が行われる手当制度のことです。
厚生労働省のサイトには、児童扶養手当の支給の目的を下記のように記載されています。
「離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図る。」
児童扶養手当について|厚生労働省
離婚してシングルマザーとなり子どもをひとりで育てる場合、どうしても非正規雇用でしか働けず、収入が低くなってしまうケースが多いのです。
このため、母子家庭は貧困に陥りやすく、子どもを守るためにも国を挙げた支援が必要だと考えられ、「児童扶養手当」制度が新設されたのです。
当初は母子家庭を主な対象としていましたが、平成22年以降は父子世帯も同様に支給の対象となりました。
<支給対象者>
児童扶養手当を受け取ることができるのは、以下の養育者です(他にも対象有)。
- 父母が離婚した子ども
- 父母のいずれかが死亡した子ども
- 父母のいずれかが一定の障害状態にある子ども
- 父母のいずれかが裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
- 婚姻によらないで生まれた子ども
父母はもちろん、両親がいない子どもを代わりに育てる祖父母や結婚をせずに子どもを産んだ未婚の方なども含まれます。
<支給期間>
- 子どもが18歳になってから最初に3月31日を迎えるまで
なお、支給時期は年に6回(奇数月)で、各2ヵ月分を受け取ることができます。毎月支給されるわけではありません。
<支給額>
児童扶養手当は、養育者の所得と子どもの人数に応じて受け取れる金額が変わります。なお、所得制限が設けられており、所得が制限の上限に達している母子家庭は児童扶養手当を受けることができません。
◎子どもが1人の場合
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
160万円以下 | 全部支給(月額4万3,070円) |
160万1円~365万円 | 一部支給(月額1万160円~4万3,060円) |
365万円以上 | 支給なし |
◎子どもが2人の場合
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
215万7,000円以下 | 全部支給(1人目:月額4万3,070円 2人目:月額1万170円) |
215万7,001円~412万5,000円 | 一部支給(1人目:月額1万160円~4万3,060円 2人目:月額5,090円~1万160円) |
412万5,000円以上 | 支給なし |
◎子どもが3人以上の場合
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
子どもの人数による | 3人目以降1人につき、全部支給は月額6,100円、一部支給は月額3,050円~6,090円 |
上記は令和4年4月~令和5年3月の金額です。支給される金額は、物価の変動をふまえて毎年4月に改定されます。
1-2. 手続き方法
<申請先>
- 市区町村の窓口
- インターネット申請「e-Gov」(郵送不可)
<申請するタイミング>
- 母子家庭(父子家庭)になった時点
児童扶養手当は、過去分をさかのぼって支給されることはありません。 受け取れたはずものが受け取れなかったということが無いよう、早目に申請をするようにしましょう。
<必要書類>
- 各自治体指定の申請書
- 請求する養育者と子どもが載った戸籍謄本や抄本(養育者と子どもの戸籍が別々の場合はそれぞれ1通ずつ必要)
- 世帯全員が載った住民票のコピー
- 預金通帳、またはキャッシュカード
- 印鑑 など
必要書類や手続きの方法は、各市区町村により異なる可能性があります。
スムーズに児童扶養手当を受け取るためにも、事前に地域の市区町村に確認しておくことをおすすめします。
また、翌年以降も継続して児童手当を受け取るには、毎年自宅へ郵送されてくる「現況届」に記入し、必要書類を添えて返送する必要があります。提出しなければ児童扶養手当を受け取れなくなるので注意しましょう。
◎神奈川県川崎市の場合
- 申請書
- 請求者と対象児童の戸籍謄本の原本(全部事項証明書)
- 預金通帳のコピー(普通預金で本人名義のものに限る)
- 請求者のマイナンバーカード、または通知カードのコピー
- 請求者の身元確認書類
※2022年5月時点
2. 母子家庭が受けられる手当:児童手当

母子家庭が受け取ることができる手当には、「児童手当」もあります。児童扶養手当と名称が似ていますが、内容は異なります。
次は、児童手当についてご説明します。
2-1. 「児童手当」とは
児童手当は、中学校を卒業するまでの子どもを育てる人へ支給される手当制度です。
児童手当の大きな特徴は、中学生以下の子育て世帯であれば、母子家庭(父子家庭)でなくても支給される点です。また、支給金額や所得制限の金額等も、児童扶養手当とは異なります。
<支給対象者>
- 離婚の有無を問わず、中学校を卒業するまでの子どもを育てる人
※ただし、国内に住んでいる子どもに限る
<支給期間>
- 子どもが15歳を迎えた後の3月31日まで
なお、支給時期は年に3回(2月・6月・10月)で、それぞれ前月までの4ヵ月分の手当が支給されます。
<支給額>
- 育てている子どもの年齢に応じて異なります。
◎1ヵ月分の支給額
子どもの年齢 | 児童手当支給額 |
---|---|
子どもが3歳未満 | 1人あたり1万5,000円 |
3歳以上小学校修了前までの子ども | 1人あたり1万円(第3子以降は1万5,000円) |
中学生 | 1人あたり1万円 |
たとえば、中学生と小学5年生、小学1年生の3人の子どもを育てている場合、第1子の中学生は1万円、第2子の小学5年生も1万円、第3子の小学1年生は1万5,000円になり、1ヵ月分の手当は計3万5,000円になります。
児童手当は年3回、4ヵ月分がまとめて支給されるので、この例だと支給日に14万円ずつ受け取ることができます。
注意点としては、同居している扶養親族等の数による所得制限があることです。
所得制限に当てはまる場合、子どもの年齢などにかかわらず一律5,000円の支給になります。以下は、母子家庭世帯において制限がかかる収入額の目安です。
◎制限がかかる収入額の目安
扶養しているの子どもの人数 | 収入の目安 |
---|---|
1人 | 875万6,000円~ |
2人 | 917万8,000円~ |
3人 | 960万円~ |
2-2. 手続き方法
<申請先>
- 市区町村の窓口
- 公務員の場合は勤務先
<申請するタイミング>
- 子どもが生まれたとき
- 引越しにより市区町村を異動したとき
- 公務員になったときまたは退職したとき(公務員は勤務先から支給されるため)
など、これらのタイミングになったら、基本的に15日以内に市区町村へ申請しなければなりません。
<必要書類>
- 児童手当認定請求書や申請者の健康保険証のコピー
- 申請者名義の口座がわかるもの(振込先)
- 申請者の印鑑
- 運転免許証などの本人確認書類
- 申請者と配偶者のマイナンバーがわかるもの
また、翌年以降も継続して児童手当を受け取るには、「現況届」の提出が必要です。
◎大阪府大阪市の場合
- 認定請求書
- 請求者名義の普通預金口座情報(銀行名、支店名、口座番号)のわかるもの
- 請求者の健康保険被保険者証
- 請求者のマイナンバー確認書類
- 請求者の本人確認書類
※2022年5月時点
3. 母子家庭が受けられる手当:児童育成手当

一部の市区町村では、児童扶養手当や児童手当とは別に、「児童育成手当」という支援制度も設けられています。
こちらも申請すれば手当を受け取れるので、どのような制度なのか知っておきましょう。
3-1. 「児童育成手当」とは
児童育成手当は、「育成手当」と「障害手当」の2種類に分かれており、それぞれ受給条件や対象が異なります。
これら2種類の手当は、児童扶養手当より所得制限の限度額が緩く設定されいるため、より多くの人が受け取れるでしょう。
ただし、児童育成手当は東京都をはじめとした一部の市区町村に独自に行っている制度です。お住まいの自治体では実施していないケースもあるため、前もって問い合わせてみましょう。また、児童扶養手当や児童手当は非課税ですが、児童育成手当は課税対象となります。
3-2. 「育成手当」とは
「育成手当」は、離婚や死別などにより、母子家庭(父子家庭)となった子どもの福祉を守るための制度です。
<支給対象>
以下にあてはまる子どもを育てる人
- 父母が離婚した子ども
- 父母のいずれかと死別した子ども
- 父母のいずれかが一定の障害状態にある子ども
- 父母のいずれかが裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
- 婚姻によらないで生まれた子ども など
児童扶養手当の受給条件と大きく変わりません。両親がいない子どもを代わりに育てる祖父母や未婚の母なども含まれます。母子家庭や父子家庭も利用可能です。
<支給期間>
- 18歳になってから最初に3月31日を迎えるまで
なお、年に3回(2月・6月・10月)、前月までの4ヵ月分がまとめて支給されます。
<支給額>
- 子ども1人あたり1万3,500円
3-3. 「障害手当」とは
「障害手当」は障がいを持つ子どもを養育する人に支給される手当制度です。
<支給対象>
以下の状態にある子どもを育てる人
- 身体障害により身体障害者手帳1・2級程度
- 知的障害により愛の手帳1~3度程度
- 脳性マヒまたは進行性筋萎縮症
<支給期間>
- 子どもが20歳になるまで
なお、年に3回(2月・6月・10月)、前月分までの4ヵ月分がまとめて支給されます。
<支給額>
- 子ども1人あたり1万5,500円
3-4. 手続き方法
<申請先>
- 各市区町村の担当窓口
<必要書類>
- 各市区町村で異なる
手当を受け続けるためには、毎年1回自宅に送られてくる現況届を提出が必要です。
現況届が送られてくる時期も各市区町村で異なるので、見落としがないように注意しましょう。
◎八王子市の場合
- 申請者と子どもの戸籍謄本(全部事項証明)
- 申請者名義の口座がわかるもの
- 申請者と子どものマイナンバーカード
「障害手当」の申請には上記に加えて、
- 体障害者手帳・愛の手帳・診断書 など
※2022年5月時点
4. 母子家庭が受けられる手当:住宅手当(住宅助成制度)

家計の支出のうち大きな割合を占める「家賃」は、母子家庭にとって悩みの種になりがちです。
この負担を軽くするために、母子家庭世帯を対象に「住宅手当」が設けられているのをご存知でしょうか。次は、住宅手当の詳細について紹介します。
4-1. 「住宅手当」とは
住宅手当とは、子どもを育てている母子家庭などのひとり親世帯で賃貸物件に住んでいる人を対象とした支援制度です。一定の条件を満たした場合に、家賃の一部を助成してもらえます。市区町村独自の制度であり、実施していないところも少なくありません。
<支給額>
- 各市区町村によって異なります。
1万円前後の金額を上限としている市区町村が多いようです。
◎東京都武蔵野市の場合
- 家賃が1万円以下であれば家賃相当額を、それ以上であれば月額1万円
※2022年5月時点
◎千葉県浦安市の場合
- 家賃が1万円を超えた場合、月額1万5,000円を上限とした金額
※2022年5月時点
4-2. 手続き方法
支給金額と同じく、住宅手当を利用する際の手続き方法も各市区町村で異なります。
各市区町村のホームページで手続き方法や必要書類などを公表しているところも多いので、事前に確認しておくと良いでしょう。
◎東京都武蔵野市の場合
以下を準備し、市役所子ども子育て支援課手当医療係窓口で認定申請を行う
- 借家賃貸借契約書
- 身元確認書類
- ひとり親であることを証明する書類
- 申請者の銀行口座番号が確認できるもの
- 住民税課税証明書 など
◎千葉県浦安市の場合
以下を準備し、請求者本人が直接担当課の窓口へ行き、手続きをする
- 住んでいる物件の賃貸借契約書の原本
- 預金通帳
- マイナンバーカード
- 戸籍謄本 など
5. 母子家庭が受けられる手当:高校生等奨学給付金

「高校生等奨学給付金」とは、高校生等の子どもがいる低所得世帯を対象に実施している支援制度です。
高校などの教育機関へ通う全ての生徒が安心して教育を受けられるように、授業料以外の教育費負担を軽減することを目的としています。
なお、教育費とは以下を指します。
- 教科書、教材費
- 学用品費
- 通学用品費
- 教科外活動費
- 生徒会費
- PTA会費
- 入学学用品費
- 修学旅行費 など
<支給対象者>
- 生活保護受給世帯
- 非課税世帯
- 家計急変世帯(自治体によるため、詳細は問合せください)
<支給額>
◎生活保護受給世帯
通学状況 | 支給額 |
---|---|
国立・公立高等学校等に在学する生徒 | 年額3万2,300円 |
私立高等学校等に在学する生徒 | 年額5万2,600円 |
◎非課税世帯
①全日制等に通う第一子
通学状況 | 支給額 |
---|---|
国立・公立高等学校等に在学する生徒 | 年額11万7,100円 |
私立高等学校等に在学する生徒 | 年額13万7,600円 |
②全日制等に通う第二子以降
通学状況 | 支給額 |
---|---|
国立・公立高等学校等に在学する生徒 | 年額14万3,700円 |
私立高等学校等に在学する生徒 | 年額15万円2,000円 |
③通信制・専攻科に通う生徒
通学状況 | 支給額 |
---|---|
国立・公立高等学校等に在学する生徒 | 年額5万500円 |
私立高等学校等に在学する生徒 | 年額5万2,100円 |
6. 母子家庭が受けられる手当:新型コロナウイルス支援給付金

現在、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行している影響で、より経済的な困窮に陥ってしまった母子家庭が急増しています。
そのような状況の母子家庭をはじめとしたひとり親世帯に向けて、厚生労働省は「低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯分)」の手当制度を開始しました。
6-1. 「低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金」とは
新型コロナウイルス感染症による影響で、子育てに対する負担の増加したり自身の収入の減少し、子育てと仕事を一人で担うひとり親世帯の負担がより大きくなっています。
この実情を踏まえて、国がひとり親世帯の生活を支援するために開始した手当制度です。この支援事業は、全国の自治体で実施されています。
<支給対象者>
- 児童扶養手当の支給を受けている者
- 公的年金等を受給していることにより、児童扶養手当の支給を受けていない者
※児童扶養手当の支給にかかる支給制限限度額を下回る者に限る - これまで児童扶養手当は受給していないが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変し、収入が児童扶養手当を受給している方と同じ水準となっている者
上記の通り、児童扶養手当を受給していない母子家庭世帯でも、家計が著しく悪化した場合には支給される可能性があります。
「家計の急変」は、直接的な収入だけでなく「新型コロナウイルス感染症の影響が無ければ得られていたはずの収入」も含まれます。
例えば、以下のような理由が挙げられます。
- 求職活動に大きな影響があった
- 企業から採用内定を取り消された
- 育児休業を延長せざる得なかった など
母子家庭だけど児童扶養手当受給者じゃないからと諦めず、まずはご自身が給付対象に該当しているかをどうか、お住まいの自治体に問い合わせしてみましょう。
<支給額>
- 子ども1人当たり一律5万円
申請から約1ヶ月で支給される自治体が多いようです。
6-2. 手続き方法
<現在、児童扶養手当を受給している場合>
- 申請は不要
お住まい自治体によっては事前にお知らせが届くため、必ず確認するようにしましょう。
<現在、児童扶養手当を受給していない場合>
- 窓口や郵送での申請が必要
自治体によって申請に必要な書類は異なります。
なお、2021年度で申請の受付を終了している自治体もあるようです。詳しくはお住まいの自治体へお問い合わせください。
(参考サイト)低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯分)|厚生労働省
7. 母子家庭が利用できる制度:国民健康保険料の軽減や免除

これまで紹介してきた手当以外にも、母子家庭が活用できる補助や減免制度はいくつもあります。
国民健康保険は、保険料が非常に高いことで知られています。様々な事情があり、非正規雇用のシングルマザーは国民健康保険に加入しているケースが多く、保険料を負担に感じている人も少なくありません。
このように、国民健康保険料の支払いが厳しい場合、市区町村の担当課に相談すると保険料の軽減や免除を認めてもらえる可能性があります。
◎軽減の場合
前年の所得金額によって保険料の軽減対象かどうかが自動的に判定されます。
<申請>
- 不要
<軽減額>
- 市区町村ごとに異なる
おおむね2~7割の範囲で軽減されることが多いようです。
◎免除の場合
災害や病気、収入の大幅な減少などで保険料の支払いが難しくなった場合は、保険料の免除を受けることができます。
<申請>
- 役所の国民年金担当窓口で免除申請が必要
8. 母子家庭が利用できる制度:ひとり親家庭等医療費助成制度

思わぬ病気やケガで治療が必要になった場合、医療費がかさみ母子家庭の家計をさらに圧迫することになります。そのため、自分や子どもの体調が悪いのに、病院へ行くのをためらってしまうケースもあるでしょう。
このような事態を避けるために、親や子どもの医療費を助成する制度も用意されています。母子家庭や父子家庭、親に代わって子どもを育てる祖父母の世帯などが対象であり、かかった医療費の一部を県や市区町村などが支払ってくれます。
実施する自治体により助成内容が異なるため確認が必要ですが、所得制限があることや健康保険に加入していることを条件にしている自治体がほとんどです。まずは、お住まいの市区町村の窓口に確認をしてみてください。
◎埼玉県の場合
<助成額>
- 医療機関に入院・通院した際に支払う費用から、自己負担金を差し引いた金額
<対象者>
以下の状態にある子どもを育てる人
- 18歳年度末までの子ども
- (一定の障害がある場合、)20歳未満の子ども
<自己負担額>
- 通院の場合、1ヵ月あたり通院機関毎に1,000円
- 入院の場合、入院期間毎に1日あたり1,200円
- 市町村民税が非課税の世帯であれば、自己負担金額は免除
※入院中の食費は助成対象外
9. 母子家庭が利用できる制度:公共料金の割引

児童扶養手当を受給しているの母子家庭の場合、生活に欠かせない上下水道や交通機関の利用にあたり、割引を受けられます。
公共料金の割引を実施しているかどうかは、お住まいの市区町村の窓口に確認をしてみてください。
9-1. 上下水道料金
<申請先>
- 住んでいる地域を管轄する水道営業所
<減免額>
- 基本料金から一定額が減免(割合は市区町村により異なる)
◎神奈川県の場合
- 減免額は2ヵ月分で1,420円の基本料金と、基本料金にかかる消費税
9-2. 交通機関の利用
<申請先>
- お住まいの自治体の担当課、交通機関の定期券販売窓口
<減免額>
- JRの場合、「通勤定期乗車券」を購入する際にかかる費用の3割
- 都営交通の場合、無料乗車券の交付(都民、かつ世帯員のうち1人に限る)
なお、JRや都営交通以外の交通機関でもこのような割引制度を実施していることがあります。また、これらに限らず、自治体によっては購入金額の自己負担分を給付してくれるケースもあります。
10. 母子家庭が利用できる制度:幼児教育・保育料の無償化

幼児教育の負担軽減を図るため、2019年10月1日より「幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)」が実施されています。
この制度は、3~5歳の全ての子どもが対象となり、
- 保育所、認定子ども園に通っている場合、利用料無料
- 「子ども・子育て支援新制度」対象の幼稚園に通っている場合、利用料無料
- 「子ども・子育て支援新制度」対象外の幼稚園に通っている場合、月額25,700円まで利用料無料
となります。なお、養育者の所得制限はありません。
子どもが通っている幼稚園が制度の対象かどうかは、その幼稚園かお住まいの自治体にお問い合わせください。企業主導型保育施設の利用者も、必要書類を提出をすることで標準的な利用料が無料になります。
また、住民税非課税世帯と年収が360万円未満相当世帯は、上記に加えて以下が無償、もしくは補助の対象となります。
<住民税非課税世帯の場合>
- 0~2歳の子どもの保育所、または認定こども園の利用料無料
<年収が約360万円未満の場合>
- 副食(おかず・おやつなど)費用の免除
- 子どもが2人以上いる場合、0~2歳の第2子の保育料半額、0~2歳の第3子以降は無料
11. その他に母子家庭が受け取れるお金・利用できる制度

11-1. 生活保護
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、その困窮の程度に応じ必要な保護を行う制度です。
資産がない、働けない、ほかの支援制度を利用しても生活が苦しい、元夫や親族からの支援を受けられないなどの条件を満たせば、生活保護が受けることができます。
今まで紹介してきた、母子家庭などひとり親世帯向けの手当や支援制度を利用しても生活が苦しい場合は、生活保護の受給も検討しましょう。
手続き方法や受け取れる金額は自治体により異なります。実家で両親と同居しているなどといった状況だと保護認可が下りにくい、など、受給条件も自治体によって異なるので、お住まいの自治体の福祉事務所に確認してみましょう。
生活保護を受けると経済的な余裕ができますが、一方で貯金ができない、娯楽が制限される、少しでも収入が入れば減額や打ち切りの恐れがあるなどのデメリットもあります。
これらを正しく理解したうえで、利用するかどうかを決めましょう。
(参考記事)母子家庭が生活保護を受けるには?生活保護の詳細と申請方法・注意点など
11-2. 母子家庭(父子家庭)が受け取れる養育費
手当とは異なりますが、養育者は、「養育費」を受け取る権利があります。
養育費とは、離婚後に親権を持たない元パートナーから親権者へ支払われる子どもを養育するための費用です。親権を持たない元パートナーには養育費を支払う義務があります。
養育費を受け取ることができれば経済的にも安定しますが、きちんと養育費を受け取れている母子家庭はどのくらいいるのでしょうか。
11-2-1. 約半数が養育費を受け取っていない
厚生労働省の「平成28年全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費を一度も受け取ったことがない母子家庭は、全体の56%を占めていました。さらに、過去に支払われていたが、現在は受け取っていないと答えた人は15.5%います。
そのため、最後まできちんと支払いを受けた母子家庭は全体の3割にも満たないのです。
母子家庭の月額養育費の平均は43,707円です。そのため、年間で約52万円もの金額が受け取れていない計算になります。ただでさえ経済的に厳しい母子家庭にとって、受け取れないとなると死活問題になりますよね。
多くの母子家庭が養育費を受け取れていない要因として、そもそも養育費の取り決めをしていないことが挙げられます。
厚労省の調査では、母子家庭で養育費について「取り決めをしていない」が約54%、「取り決めをしている」が42.9%、その内の26.3%が「文書として残していない」という結果になりました。
11-2-2. 養育費が支払われない場合
実に半数以上のシングルマザーが、養育費を受け取れていないことがわかりました。
では、離婚した元夫が養育費を支払ってくれない場合、どう対処するのが正しいのでしょうか。ここでは一般的な催促方法をご紹介します。
<一般的な催促方法>
①まず元夫へ電話やメール等で督促します。
②支払われない場合、未払いや督促の事実を証明できるよう、内容証明郵便で督促の手紙を送りましょう。内容証明郵便は郵便局から発送できます。
③それでも支払われないなら、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらいましょう。裁判所から連絡があると、驚いて支払いに応じるケースも多いです。
④ここまでしても支払われない場合は、最終手段として給与口座を差し押さえる強制執行を行います。
給与を差し押さえられると、勤務先に養育費を支払っていないことを知られてしまいます。 そのため、強制執行を予定していると伝えるだけで、元夫が慌てて支払ってくれることもあります。
強制執行には費用や手間がかかりますが、その後継続して養育費を受け取れれば、大きなプラスになるでしょう。
11-2-3. 養育費の未払いを防止する方法
養育費の未払いに対処するには、多くの時間や費用がかかります。何より、相手と関わりたくない中対応をしなければならないのが精神的にも負担になるでしょう。
そこでおすすめなのが、「養育費保証」というサービスです。
養育費保証を利用すると、養育費が支払われなかったときに、保証会社が元夫の代わりにシングルマザーへ養育費を立て替えて支払ってくれます。立て替えた養育費は、保証会社が元夫から回収するため、シングルマザーが元夫と話し合う必要がありません。
いざというときの不安を軽減できるため、母子家庭の強い味方になります。養育費保証の契約時にかかる初回保証料を補助する支援事業を行っている自治体もあります。支援事業を行っている自治体一覧はこちらです。
(参考サイト)支援自治体一覧|サポぴよの養育費保証
(まとめ)母子家庭が利用できる手当や制度は豊富にある!申請を忘れずに

母子家庭や経済的に苦しい家庭のための手当や支援制度は、実は豊富に用意されています。
しかし、母子家庭への情報の提供が十分でないうえ、実施している制度が市区町村によって異なるため、手当制度自体の認知度が低いのが現状です。
シングルマザーとして日々多忙な生活を送る中、自身が利用できる制度や手当を調べるのは骨が折れますよね。申請しないと利用できないものも多いため、受給資格があるのにもかかわらず活用されていないケースも珍しくありません。
まずは、自身が活用できる手当や制度を知り、何歳までいくらの手当を受け取れるのか、申請方法などを調べてみましょう。
最大限に活用することで収入が増え、生活が今よりずっと楽になる可能性もあるので、積極的に住んでいる市区町村に相談してみてください。
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