2020.07.06
母子家庭が使える手当や補助ってなに?手当と申請方法を紹介

離婚して子どもを育てる母子家庭の場合、経済的な不安を抱えていることも珍しくありません。収入を得るためにがむしゃらに働き、疲れ果てている人も多いのではないでしょうか。
実は日本では、母子家庭のための手当や支援制度が豊富に用意されていますが、残念ながら認知度はまだまだ低いのが現状です。
手当をうまく活用することにより、収入に対する不安が軽減し、経済的にも精神的にも安定を得ることができるでしょう。
今回は、母子家庭に役立つ手当や各支援制度の概要、受け取れる金額、申請方法などを紹介します。
~ この記事の監修 ~

株式会社SMILELIFE project
ライフブックアドバイザー(FP) 池田 啓子
フィーオンリーのFPサービスを提供し保険や金融商品の販売をせずにライフプランニング相談業務を行っています。
1. 母子家庭が受けられる手当「児童扶養手当」

母子家庭が活用できる代表的な支援手当といえば、まず挙げられるのが「児童扶養手当」です。
シングルマザーの所得によっては月額4万円以上のお金を受け取ることができるため、家計の大きな助けとなるでしょう。
まずは、児童扶養手当の概要や受け取れる金額、申請方法について詳しく解説していきます。
1-1.「児童扶養手当」とは?対象者は?
離婚して子どもをひとりで育てる場合、どうしても非正規雇用でしか働けず、収入が低くなってしまうケースが多いです。
このため、母子家庭は貧困に陥りやすく、子どもを守るためにも国を挙げた支援が必要だと考えられました。
そこで新設されたのが、「児童扶養手当」制度です。
児童扶養手当は、離婚などによるひとり親家庭世帯などを対象に、家庭の収入を安定させる目的で一定額の給付が行われます。当初は母子家庭を主な対象としていましたが、平成22年以降は父子世帯も同様に支給の対象となりました。
児童扶養手当を受け取れるのは、
- 父母が離婚した子ども
- 父母のいずれかが死亡した子ども
- 父母のいずれかが一定の障害状態にある子ども
- 父母のいずれかが裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
- 婚姻によらないで生まれた子ども
などの養育者です。(他にも対象有)
父母はもちろん、両親がいない子どもを代わりに育てる祖父母なども含まれます。子どもが18歳になってから最初に3月31日を迎えるまで、養育者の所得や子どもの数に応じた金額を受け取れるので、積極的に市区町村の窓口で申請しましょう。
1-2. どれくらいもらえるの?
児童扶養手当で受け取れる金額を知る前に、まずは「所得制限」について理解しておきましょう。
児童扶養手当は経済的に困っているひとり親世帯を支援するための制度であり、養育者の所得(収入から必要経費などを差し引いた金額)により、受け取れる児童扶養手当の金額が変わります。
すでに十分な収入を得ている世帯は支援を受けることができません。
【養育者の収入と児童扶養手当支給額】
<子どもが1人の場合>
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
160万円未満 | 全部支給(月額4万3,160円) |
160万円~365万円未満 | 一部支給(月額1万180円~4万3,150円) |
365万円以上 | 支給なし |
<子どもが2人の場合>
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
215万7,000円未満 | 全部支給(1人目:月額4万3,160円 2人目:月額1万190円) |
215万7,000円~412万5,000円未満 | 一部支給(1人目:月額1万180円~4万3,150円 2人目:月額5,100円~1万180円) |
412万5,000円以上 | 支給なし |
<子どもが3人以上の場合>
養育者の収入 | 児童扶養手当支給額 |
---|---|
子どもの人数による | 3人目以降1人につき、全部支給は月額6,110円、一部支給は月額3,060円~6,100円 |
上記は令和2年4月~令和3年3月の金額であり、支給される金額は、物価の変動をふまえて毎年4月に改定されます。
また、政令上は最初に述べた「所得」をもとに制限額が決められており、ここで述べた収入はあくまでも目安になります。
自治体のホームページでは所得による限度額表や、所得の詳しい計算方法などが公表されているので、気になる場合はチェックしてみてください。
所得制限にひっかからなければ、晴れて児童扶養手当を受け取ることができます。
1-3. 手続き方法
【申請方法】
・市区町村の窓口で申請、もしくはインターネット申請「e-Gov」(郵送不可)
【必要書類】
・請求する養育者と子どもが載った戸籍謄本や抄本、世帯全員が載った住民票のコピーなどが必要
なお、必要書類や手続きの方法は、各市区町村により異なる可能性があります。
養育者の預金通帳や年金手帳、所得証明書や個人番号カードなどを求められるケースも多いので、きちんと保管してあるかどうかも確認しておきましょう。
スムーズにお金を受け取るためにも、事前に地域の市区町村に問い合わせ、必要書類を確認しておくことをおすすめします。
書類が準備できたら、請求者となる養育者が自分で市区町村の窓口へ持参しましょう。本人が担当者の目の前で手続きを行う必要があり、郵送は基本的に認められていません。
どうしても窓口へ行けない場合は、インターネットを通して申請できる電子政府の窓口、「e-Gov」を利用する方法もあります。
2. 母子家庭が受けられる手当「児童手当」

母子家庭が受け取れる手当には、「児童手当」もあります。児童扶養手当と似た名前ですが、内容は異なります。
次は、児童手当の詳細について見ていきましょう。
2-1. 「児童手当」とは?児童扶養手当との違いは?
児童手当は、中学校を卒業するまでの子どもを育てる人を対象に、一定の手当を支払う制度です。
ただし、支給されるのは子どもが国内に住んでいる場合であり、海外留学などで国外に住んでいれば制度を利用することはできません。
子どものいる世帯の経済的な安定を目的としている点は児童扶養手当と同じですが、児童手当は母子家庭や父子家庭だけでなく、子どもの親がそろっている世帯にも支給される点が大きな違いです。
つまり、子育て世帯であれば、離婚の有無にかかわらず受け取ることができる手当なのです。
他にも、支給期間は児童扶養手当が18歳を迎えた後の3月31日までに対し、児童手当は15歳を迎えた後の3月31日までであること、支給金額や所得制限の金額等も児童扶養手当とは異なります。
なお、支給を行うのは各市区町村であり、毎年2月・6月・10月の3回にわけ、それぞれの前月までの分の手当が支払われます。たとえば、2月は10~1月分、6月は2~5月分がまとめて支払われます。
2-2. どれくらいもらえるの?
児童手当は、基本的に育てている子どもの年齢に応じて支給額が変わります。
【1カ月分の支給額】
- 子どもが3歳未満:1人当たり1万5,000円
- 3歳以上小学校修了前までの子ども:第2子までは1人当たり1万円ですが、第3子以降は1万5,000円
- 中学生:1万円
たとえば、中学生と小学5年生、小学1年生の3人の子どもを育てている場合、第1子の中学生は1万円、第2子の小学5年生も1万円、第3子の小学1年生は1万5,000円で合計3万5,000円を受け取れるという計算です。
児童手当は年3回、4カ月分がまとめて支給されるので、この例だと支給日に14万円ずつ受け取れます。
注意点としては、扶養親族等の数による所得制限があることです。
母子家庭などのひとり親世帯で扶養しているのが子ども1人の場合、収入が875万6,000円以上になると制限がかかり、子どもの年齢などにかかわらず、一律5,000円の支給になります。扶養しているのが子ども2人だと917万8,000円、子ども3人だと960万円が、制限がかかる収入の目安になります。
2-3. 手続き方法
【申請先】
- 市区町村の窓口
- 公務員の場合は勤務先
【申請するタイミング】
- 子どもが生まれたとき
- 引越しにより市区町村を異動したとき
- 公務員になったときまたは退職したとき(公務員は勤務先から支給されるため)などこれらのタイミングになったら、基本的に15日以内に市区町村へ申請しなければなりません。
【必要書類】
- 児童手当認定請求書や申請者の健康保険証のコピー
- 申請者名義の口座がわかるもの(振込先)
- 申請者の印鑑
- 運転免許証などの本人確認書類
- 申請者と配偶者のマイナンバーがわかるもの
無事に申請が認められても、翌年以降も継続して児童手当を受け取るには、毎年6月に自宅へ郵送されてくる「現況届」に記入し、必要書類を添えて返送する必要があります。
現況届は、引き続き児童手当を受給する条件を満たしているかどうか市区町村が確認するためのもので、提出しなければ6月以降の手当を受け取れなくなるので注意しましょう。
3. 母子家庭が受けられる手当「児童育成手当」

一部の市区町村では、児童扶養手当や児童手当とは別に、「児童育成手当」という支援制度も設けられています。
こちらも申請すれば手当を受け取れるので、どのような制度なのか知っておきましょう。
3-1. 「児童育成手当」とは
児童育成手当は、「育成手当」と「障害手当」の2種類に分かれており、それぞれ受給条件や対象が異なります。
「育成手当」は、離婚や死別などにより、ひとり親となった子どもの福祉を守るための制度で、18歳になってから最初に3月31日を迎えるまで支給されます(毎年手続きが必要)。
「育成手当」の対象は、
- 父母が離婚した子ども
- 父母のいずれかと死別した子ども
- 父母のいずれかが一定の障害状態にある子ども
- 父母のいずれかが裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
- 婚姻によらないで生まれた子ども
などの養育者です。(他にも対象有)
児童扶養手当の受給条件と大きく変わらず、父母はもちろん、両親がいない子どもを代わりに育てる祖父母なども含まれます。母子家庭はもちろん、父子家庭も利用可能です。
一方の「障害手当」は20歳まで支給され、対象は、
- 身体障害により身体障害者手帳1・2級程度
- 知的障害により愛の手帳1~3度程度
- 脳性マヒまたは進行性筋萎縮症
の状態にある子どもを育てる人が利用できます。
これら2種類の手当は、児童扶養手当より所得制限限度額が緩く設定されており、より多くの人が受け取れるでしょう。
ただし、児童育成手当は国ではなく各市区町村が行っている制度であり、実施しているところはあまり多くありません。実施しているのは東京都をはじめとした一部の市区町村に限られるので、住んでいる地域で実施されているかどうか問い合わせてみましょう。
また、児童扶養手当や児童手当は非課税ですが、児童育成手当は課税対象となります。
3-2. どれくらいもらえるの?
【育成手当】
・子ども1人あたり1万3,500円
【障害手当】
・子ども1人あたり1万5,500円
手当は毎年2月・6月・10月の年3回、前月分までがまとめて指定した口座に振り込まれます。(但し、所得制限あり)
3-3. 手続き方法
【申請方法】
・各市区町村の担当窓口
【必要書類】
・各市区町村で異なる(事前に確認をしておきましょう)
<例:八王子市の場合>
申請するには印鑑や申請者名義の口座がわかるもの、申請者や子どもが載った戸籍全部事項証明または謄本などが必要です。平成28年より、申請書類にマイナンバーの記載が必要になったため、マイナンバーカードと身元を確認する書類も持って行きましょう。「障害手当」を申請する場合は、身体障害者手帳や愛の手帳、診断書なども必要です。
なお、申請した後も、毎年1回自宅に送られてくる現況届を提出しなければなりません。現況届が送られてくる時期も各市区町村で異なるので、見落としがないように確認しておきましょう。
4. 母子家庭が受けられる手当「住宅手当」(住宅助成制度)

家計の支出のうち大きな割合を占める「家賃」は、シングルマザーにとって悩みの種になりがちです。
この負担を軽くするために、ひとり親世帯を対象に「住宅手当」が設けられているのをご存知でしょうか。
次は、住宅手当の詳細について紹介します。
4-1. 「住宅手当」とは
ひとり親世帯を対象とした住宅手当とは、子どもを育てている母子家庭または父子家庭のようなひとり親世帯で、賃貸物件に住んでいる人を対象とした支援制度で、一定の条件を満たした場合に、家賃の一部を助成してもらえます。
市区町村独自の制度であり、実施していないところも少なくありません。対象者や手続き方法、助成される金額なども市区町村で異なるので、事前に必ず確認しておきましょう。
4-2. どれくらいもらえるの?
住宅手当は各市区町村が実施する独自の制度であるため、実際に支給される金額もそれぞれ異なりますが、負担がかなり軽減されるでしょう。
【助成される金額の一例】
<東京都国立市の場合>
- 1万円を上限として家賃の3分の1の金額
<東京都武蔵野市の場合>
- 家賃が1万円以下であれば家賃相当額を、それ以上であれば月額1万円
<千葉県浦安市の場合>
- 家賃が1万円を超えた場合、月額1万5,000円を上限として、超過分に応じた金額
制度の内容は実にさまざまですが、1万円前後の助成を上限としている市区町村が多いです。
ただし、前述のとおり、いずれの市区町村も、住宅手当を利用するには居住年数や所得制限などの条件があるので、しっかり事前確認をしておきましょう。
4-3. 手続き方法
支給金額と同じく、住宅手当を利用する際の手続き方法も各市区町村で異なります。
<千葉県浦安市の場合>
- 請求者本人が必要書類を準備したうえで、直接担当課の窓口へ行き、手続きをする
- 住んでいる物件の賃貸借契約書の原本や預金通帳、マイナンバーカードや戸籍謄本などが必要
ほかの市区町村でも必要とされる書類はあまり変わりませんが、ほかに印鑑や直近の住民税課税証明書、児童扶養手当証書などを求められることもあります。
各市区町村のホームページで必要書類や手続き方法などを公表しているところも多いので、事前に確認しておくと良いでしょう。
5. 他に受けられる補助や免除

これまで紹介してきた手当以外にも、母子家庭が活用できる補助や減免制度はいくつもあります。
すべての市区町村で行われているとは限りませんが、知っておくと生活の助けになるかもしれません。
次は、ほかにどのような支援制度があるのか、具体的に見ていきましょう。
5-1. 国民健康保険料の軽減や免除
一般的な企業に勤める人が加入する健康保険とは異なり、国民健康保険は保険料が非常に高いことで知られています。
様々な事情を抱えているため非正規雇用のシングルマザーは国民健康保険に加入しているケースが多く、保険料を負担に感じている人も少なくありません。
このように国民健康保険料の支払いが厳しい場合、市区町村の担当課に相談すると保険料の軽減や免除を認めてもらえる可能性があります。
<軽減の場合>
前年の所得金額によって保険料の軽減対象かどうかが自動的に判定されます。
【申請】
- 不要
【軽減額】
- 軽減されるかは市区町村ごとに異なるので確認が必要。
- おおむね2~7割の範囲で減額してもらえることが多い。
日々の生活で忙しい母子家庭にとってはかなり親切ですね。
<免除の場合>
災害や病気、収入の大幅な減少などで保険料の支払いが難しくなった場合は、保険料の免除を受けることができます。
【申請】
- 自分で免除申請をしなければならない
5-2. ひとり親家庭等医療費助成制度
思わぬ病気やケガで治療が必要になった場合、医療費がかさんで母子家庭の家計をさらに圧迫することになります。
また、経済的な苦しさから、自分や子どもの体調が悪いのに、病院へ行くのをためらってしまうケースもあるでしょう。
このような事態を避けるために、親や子どもの医療費を助成する制度も用意されています。
母子家庭や父子家庭、親に代わって子どもを育てる祖父母の世帯などが対象であり、かかった医療費の一部を県や市区町村などが支払ってくれるのです。
<埼玉県の場合>
医療機関に入院・通院した際に支払う費用から、自己負担金を差し引いた金額が助成されます。
【対象者】
- 18歳年度末までの子ども(一定の障害がある子どもは20歳未満まで)とその親又は養育者
【自己負担金額】
- 通院だと1カ月あたり通院機関毎に1,000円
- 入院だと入院期間毎に1日あたり1,200円
- 市町村民税が非課税の世帯であれば、この負担金は免除される
- (入院中の食費は助成対象となりません)
実施する自治体により助成内容が異なるため確認が必要ですが、共通点としては、所得制限があることや健康保険に加入していることを条件にしている点です。
まずは、お住まいの市区町村の窓口に確認をしてみてください。
5-3. 公共料金の割引
児童扶養手当を受給している場合、生活に欠かせない上下水道や交通機関の利用にあたり、割引を受けることも可能です。
「上下水道料金」
【申請先】
- 住んでいる地域を管轄する水道営業所
【減免額】
- 基本料金から一定額が減免される(割合は市区町村により異なる)
<神奈川県の場合>
- 減免額は2カ月分で1,420円の基本料金と、基本料金にかかる消費税
「交通機関の利用」
【割引額】
- JRの「通勤定期乗車券」を購入する際、3割引で購入できる
【必要書類】
- 市区町村の窓口から発行される「特定者用定期乗車券購入証明書」
(事前に要手続き)
なお、JR以外の交通機関でもこのような割引制度を実施していることがあるので、普段利用している交通機関に問い合わせてみてください。
公共料金の割引を実施しているかどうかは、お住まいの市区町村の窓口に確認をしてみてください。
5-4. 保育料の減額
保育料は国が定める上限額の範囲内で、認定区分や保護者の所得に応じて市区町村が定めます。
小さい子どもを保育園や幼稚園などに預けて働くシングルマザーの場合、保育料の減免を受けることができます。
<年収が約360万円未満の場合>
- 第1子の保育料は半額、第2子以降は無料
<前年度の年収が約204万円以下の非課税世帯の場合>
- 第1子から無料
市区町村によって保育料減免の内容や手続き方法が異なるので、まずは問い合わせてみましょう。
なお、令和元年10月より、幼児教育・保育の無償化がスタートしました。
幼稚園や保育園、認定こども園などに通う以下の子どもの場合、保育料が無料になります。
【対象者】
- 3~5歳の子ども
- 住民税が非課税となる世帯の0~2歳の子ども
該当する場合は保育園から書類が配られるので、記入して提出しましょう。
0~2歳の子どもを育てるシングルマザーのうち、住民税を支払っている人は無償化の対象にはならないので、上述した従来の保育料減免制度を活用すると良いでしょう。
6. 生活保護を受けることもできる

生活保護は、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、その困窮の程度に応じ必要な保護を行う制度です。
今までご紹介してきた母子家庭などひとり親世帯向けの手当や支援制度を利用しても生活が苦しい場合は、生活保護の受給も検討しましょう。
資産がない、働けない、ほかの支援制度を利用しても生活が苦しい、元夫や親族からの支援を受けられないなどの条件を満たせば、生活保護が受けることができます。
手続き方法や受け取れる金額は地域により異なるので、お住いの自治体の福祉事務所に確認してみましょう。
生活保護を受けると経済的な余裕ができますが、一方で貯金ができない、娯楽が制限される、少しでも収入が入れば減額や打ち切りの恐れがあるなどの注意点もあります。メリットとデメリットを正しく理解したうえで、利用するかどうかを決めましょう。
(参考記事)母子家庭が生活保護を受けるには?生活保護の詳細と申請方法・注意点など
7. シングルマザーの経済状況

シングルマザーは生活が苦しいというイメージを持っている人も多いでしょうが、実際はどうなのでしょうか。
厚生労働省が公表する「平成28年全国ひとり親世帯等調査結果」によると、平成27年にシングルマザー自身が働いて得た平均年収は200万円でしたが、シングルマザーの58.1%、6割近くが年収200万円未満を占めているのが現状です。
また、今回ご案内したような各種手当等や養育費等を全て含めた年収は243万円、同居人の収入などを含めた世帯全体の年収だと348万円になります。
子どもがいるすべての世帯の平均年収707万8,000円と比べると母子家庭は約369万も少なく、かなりの差があることがわかります。
さまざまな手当や支援制度があるとはいえ、母子家庭の経済状況は厳しいと言わざるを得ません。
(参考記事)日本のシングルマザーは貧困って本当?~離婚しても貧困に陥らないために~
8. 約半数が養育費を受け取っていない

離婚をすると、元夫から養育費を受け取れます。それぞれのケースによっても異なりますが、基本的には子どもが20歳になるまで、または大学卒業まで受け取れることが多いです。
ところが、厚生労働省の「平成28年全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費を一度も受け取ったことがない母子家庭は、全体の56%を占めていました。過去には支払われていたが、現在は受け取っていないと答えた人は15.5%おり、合わせると調査の時点で71.5%もの人が養育費を受け取っていないことになります。
養育費を現在も受けている又は受けたことがある世帯のうち額が決まっている世帯の平均月額は、母子世帯では43,707円なので、年間で約52万円もの金額が受け取れていない計算になります。
ただでさえ経済的に厳しい母子家庭にとって、死活問題になりますよね。
その背景として、シングルマザーの養育費の取り決め状況は、「取り決めをしていない」が約54%、「取り決めをしている」が42.9%、その内の26.3%が「文書として残していない」との回答があり、養育費を受け取れていない要因の1つとして考えられるかもしれません。
9. 養育費が支払われない場合

実に半数以上のシングルマザーが、養育費を受け取れていないことがわかりました。
では、離婚した元夫が養育費を支払ってくれない場合、どう対処するのが正しいのでしょうか。
次は、養育費の未払いが起きたときに取れる手段を紹介します。
(参考記事)養育費の未払いで困っている!支払ってもらうための適切な対応とは?
9-1. 裁判所を通す
①養育費が支払われなかったときは、まず元夫へ電話やメール等で督促します。
↓それでも支払われないなら、
②未払いや督促の事実を証明できるよう、督促の手紙を「内容証明郵便」で送りましょう。内容証明郵便は郵便局から発送できるので、問い合わせてみてください。
↓それでもダメなら、
③家庭裁判所から「養育費を支払いなさい」という履行勧告や履行命令を出してもらいましょう。裁判所からの指示があると、驚いて支払いに応じるケースも多いです。
↓ここまでしても支払われない場合は、
④最終手段として給与などを差し押さえる「強制執行」を行います。
給与が差し押さえられると勤務先にトラブルを知られてしまうため、強制執行を予定していると伝えるだけで、元夫が慌てて支払ってくれることもあります。
強制執行には費用や手間がかかりますが、その後継続して養育費を受け取れれば、経済的に大きなプラスになるでしょう。
9-2. 養育費保証を利用する
養育費保証をご存じでしょうか?
養育費の未払いには強制執行などで対処できるものの、時間や費用がかかるというデメリットもあります。何よりも「相手と関わりたくない」という想いが強いケースが少なくありません。スムーズに養育費を受け取るには、未払いそのものを防がなければなりません。
そこでおすすめなのが、「養育費保証」というサービスです。
養育費保証を利用すると、養育費が支払われなかったとき、保証会社が元夫に代わってお金を支払ってくれます。立て替えた養育費は、後日保証会社が元夫と接触して回収するため、シングルマザーが元夫と話し合う必要がありません。
すでに未払いになっている場合でも利用可能であり、いざというときのお金の不安を軽減できるため母子家庭の強い味方になります。
(まとめ)使える支援制度は豊富にある!申請が必要なので知識が大事

母子家庭や経済的に苦しい家庭のための手当や支援制度は、実は豊富に用意されています。
しかし、残念ながら制度自体の認知度が低く、ひとり親世帯に対する情報の提供が徹底されているわけではありません。
また、時間的にも気持ち的にも経済的にも余裕がない中、お住いの市区町村で導入されている制度が異なっていたり、自分から申請しないと利用できないものも多く、受給資格があるにもかかわらず活用されていないケースも珍しくありません。
まずは制度を知り、最大限に活用することで収入が増え、生活が今よりずっと楽になる可能性もあるので、積極的に住んでいる市区町村に相談してみてください。
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