更新日: 2022.12.12
公開日:2022.12.12
離婚協議書の作成方法や効力って?記載事項やポイントを解説!※サンプル付き

離婚を決断する際には、離婚後の仕事や生活費、子どもの教育や養育、親の介護の問題など、夫婦間で話し合いをして決めなければならない問題がいくつも出てきます。
離婚協議書とは、このように離婚をする際に決めなければならない問題に対して、夫婦で合意した内容を漏れなく書き記した契約書のことをいいます。
では、離婚協議書とは、どのような内容でどうやって作成すれば良いのでしょうか。
この記事では、離婚協議書を作成する意味や効力、作成方法などを記載事項と合わせて解説します。記事の最後では、離婚協議書のサンプルPDFをダウンロードいただけます。これから離婚協議書を作成する方は、是非参考にしてみてください。
~ この記事の監修 ~

行政書士鷹取法務事務所
行政書士 鷹取 雄一
平成16年の開業当初から現在に至るまで、予防法務の分野に注力し、離婚協議書や結婚契約書の作成を得意としている。
1. なぜ離婚協議書が必要なの?効力とは?

理由はいたってシンプルで「口約束では、約束した事実やその内容が、目に見える形として残らないから」。
その時は両者が口頭で同意をしていたとしても、後々言った言わないの問答になることは非常に多いのです。つまり、約束をうやむやにさせず形に残すために、離婚協議書が必要なのです。
例えば、養育費などのお金の支払いを口約束ですませてしまうのは、不安ではないでしょうか。約束した事実やその内容が明記されていないと、互いの認識の食い違いが発生しかねません。また、約束自体がうやむやになってしまって、約束が果たされない可能性も高まるでしょう。さらに、時間の経過と共に忘れてしまうリスクも生まれてきます。
形に残すのであれば、メールやWordなどのファイルでも良いのではと思う方もいるかもしれません。しかし、電磁的記録は改ざんされやすいというデメリットがあります。
離婚協議書をわざわざ書面にするのは、電磁的記録と比べて改ざんされにくいというメリットがあるのです。
法的な言葉で説明すると、
- 事実証明(約束の内容、かつ互いに合意の上で取り決めた証明)
- 契約不履行の防止(約束した内容を実行しないことを防ぐ)
- 契約履行の強制(約束した内容を果たすことを強制する)
という観点から、離婚協議書の作成は欠かせない、ということになります。
なお、離婚協議書は契約書として法的な効力を持ちます。もちろん、自分で作成したとしても同様です。ただし、作成した内容が法的に無効である場合、すなわち、法律に反している場合は契約書としての効力を持ちません。
法的に無効な内容とは、例えば「離婚後も両者が子どもの親権を持つ」などです。
現在日本では、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となるよう定められており、共同親権が認められていません。極端な例ですが、法律に反した内容を取り決めてしまった場合、いくら夫婦間で合意ができた上で離婚協議書を作成していたとしても、法的に認められないのです。
2. 離婚協議書はいつ作成するの?

離婚協議書には「特定の時期に作成しなければならない」というような明確な決まりはなく、離婚の前後を問いません。離婚届の届出を終えてから離婚協議書を作成しても全く問題ないのです。
しかし、「離婚協議書は離婚後に作成すればいいや」と離婚届を先に提出して離婚を成立させてしまうのは、かなりリスクが高いでしょう。なぜなら、離婚後に元パートナーと連絡が取れなくなってしまい結局何も決められなかった、というケースがあり得るからです。
そこまでいかなかったとしても、離婚が成立した後に元パートナーと会ったり話し合いをしなければならないのは、時間的、精神的に負担が大きいですし、一度二度の話し合いでは話もまとまりにくいため、おざなりにされがちです。
ですので、離婚協議書をきちんと作成し、あとあと揉めかねないトラブルの火種を完全に消してから、離婚届の提出を行うのが理想的です。
ちなみに、調停離婚や裁判離婚などといった家庭裁判所が関与する離婚方法では、調書に取決めが記載されるため、自身で離婚協議書を作成する必要はありません。
3. 離婚協議書を作成する流れ

3-1. 協議する
まず、離婚後に夫婦がそれぞれ別の生活を送る上で取り決めなければならない物事について、夫婦で話し合います。
例えば、婚姻期間中に不動産を購入した場合は、不動産やローンの名義を変更するかどうか。子どもがいる場合は、親権はどちらが持つか、養育費はいくらにするか。夫婦のどちらかに離婚原因がある場合は、慰謝料の支払いの有無をどうするか、などが挙げられます。
当人同士、対面で話し合える状況の場合、協議の場所はどこでも構いません。プライベートな内容を多く含むため、自宅で話し合いをするのが理想でしょう。
対面での話し合いが難しい場合、調停にて取り決める方法もあります。調停の場合、互いの要望や主張を調停委員という第三者を介してやり取りすることができるため、当人同士だと口論に発展するかもしれない…という不安をお持ちの方は、調停の申し立てを検討しても良いかもしれません。
なお、夫婦によって、取り決めなければならない物事は異なります。なにを決めなければならないのかを事前に確認し、漏れの無いように取り決めましょう。取り決め内容については、「4. 離婚協議書に記載する内容って?」でも詳しくご紹介します。
3-2. 決まったことを文書化する
お互いの同意の下、協議で取り決めた内容を文書化します。
パソコンを使って文面を作成し印刷したり、弁護士や行政書士がウェブ上で公開しているテンプレートをダウンロードして、活用することをおすすめします。
もちろん、離婚協議書をすべて手書きで作成しても、当事者の約束として効力があります。
このとき、慰謝料や養育費の金額や支払期限について、支払義務者本人の直筆にすることがあります。離婚協議書の効力に影響はありませんので、印字と直筆による良し悪しはありません。
しかし、離婚協議書を作成した日付と氏名の記入については、ご本人の直筆をお勧めします。ご本人の署名は、離婚協議書の内容に合意していることを証明してくれる有力な証拠になるためです。
署名をする際には、必ず油性のポールペンを使用しましょう。最近は消せるボールペンなどもありますから、あとから消えてしまわないように、使用する筆記用具にも注意が必要です。
なお、離婚協議書に限りませんが、契約書全般には縦書きのものと横書きのものが存在します。どちらが正解ということはありませんが、平成の中期以降は、横書きの契約書が主流です。
3-3. 離婚協議書へ押印する
一般的には、実印か認印を使います。
離婚協議書の内容によりますが、数千万円やそれ以上の単位の金額が動くような契約の場合には、互いに実印を押印し、離婚協議書と相手方の印鑑登録証明書を一緒に保管しておくのがベストといえます。
3-4. 離婚協議書を1通ずつ保有する
離婚協議書を2部作成し、互いに1部保有することになります。
離婚協議書に証人や立会人等、第三者の署名押印がされるときには、第三者分も作成し、第三者に保有してもらう場合もあります。
相手方から脅されたり騙されたりして離婚協議書にサインさせられたときは、離婚協議書協議内容の取り消しを主張することができます。ただし、離婚協議書の取り消しを主張するからには、脅されたり騙されたりした事実を証明しなくてはいけません。
つまり、脅されたり騙されたりしたことを証明する必要があるということです。リスクを感じられるような相手方の場合は、後述する弁護士に依頼してしまうのが安全といえます。
4. 離婚協議書に記載する内容って?

離婚協議書には、どのようなことを記載するものなのでしょうか。
離婚協議書は、家族構成や財産状況により記載事項が異なりますが、子どものいる夫婦は「親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、清算条項」、子供のいない夫婦は「財産分与、慰謝料、清算条項」が中心的な内容になります。
離婚協議書は、離婚の際の契約書ですから、前段の内容を端的に記載することになります。離婚に至った経緯や内面的な感情を残しておきたいという方が時々いらっしゃいますが、離婚協議書の主旨から外れているため、離婚協議書と分けて考えるべきです。
離婚協議書の作成に際しては、一つ一つの事柄について、互いに要望を簡潔に伝え、相手の要望に耳を傾け、冷静かつ建設的に話し合う姿勢が重要です。
この項では、離婚協議書の中心的な内容と補足的な内容を簡潔にお伝えしていきます。
4-1. 親権者
未成年の子どもがいるときには、離婚前に必ず親権者を決めなくていけません。別の言い方をすると、子どもの親権者が決まらないと離婚することができないのです。
親権者が決まらないと、養育費や面会交流を決めることもできないため、最初に話し合うべき事柄といえます。親権者の指定、後述する養育費と面会交流の事柄は、1セットで考えておいてください。
離婚協議書には、どちらを親権者に指定するか記載することになります。勢いよく離婚を迫られ、安易に親権者を決めてしまうことがありますが、慎重に考えるべきでしょう。
4-2. 養育費
養育費は、子供が社会的に自立するまでに必要とされる費用のことです。離婚協議書には、養育費の金額、支払開始の年月、支払終了の年月、支払方法を記載することになります。
養育費の金額の取決めには、養育費算定表という客観的な指標があります。互いの年収を養育費算定表に当てはめますと、その夫婦における養育費の目安となる金額が分かります。
養育費算定表は、裁判所のホームページに掲載されているため、参考にしてみてください。
4-3. 面会交流
面会交流は、子供と離れて暮らしている親が子供と定期的に面会し、交流を持つことです。電話、手紙等、間接的な交流も面会交流に含まれます。離婚協議書には、面会交流の回数、方法、場所、宿泊の可否等を記載することになります。
面会交流においては、回数や時間、面会方法などの一般的な指標がありません。そのため、互いに無理のない範囲で、また納得のいく内容にて取り決めをしましょう。
なお、元パートナーに対する親の態度や感情に子どもが影響を受けてしまったり、離婚後に親同士で揉めてしまうと、面会交流が履行されにくくなってしまいます。
親の感情や都合ではなく、あくまで子どもの意思を最優先して取り決め、面会交流をするようにしましょう。
4-4. 財産分与
財産分与は、夫婦の寄与貢献により婚姻期間中に形成した財産を分配することです。この財産のことを共有財産といい、財産分与の対象になります。今現在は、5対5の分配が原則です。
財産分与の対象になる共有財産は、預貯金(現金)、不動産、車、保険、有価証券、年金分割と多岐に及びます。そのため、離婚協議書には、財産分与についての条項を複数設置することが多いです。
預貯金(現金)の支払いの場合には、その金額、支払期限、支払方法を離婚協議書に記載することになります。不動産の所有権を移転する場合には、所有権移転の年月日、登記手続きの期限、公租公課や住宅ローンの負担について、離婚協議書に記載することになります。
婚姻年数の長い夫婦は、共有財産が大きくなることが多いため、まずは共有財産のリストアップから始めましょう。
なお、婚姻前から形成していた財産、相続財産、別居後の財産は、夫婦が形成した財産といえないため、財産分与の対象にならないので、注意が必要です。
4-5. 慰謝料
慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
離婚協議書には、慰謝料の金額、支払期限、支払方法、支払いが遅れたときの遅延損害金等を記載することになります。
客観的な指標はありませんが、判例や実務上、数十万円~500万円の範囲が多いです。婚姻中の有責行為や不法行為に対し、慰謝料を設定することが多く、不貞行為に伴う慰謝料の件数が最も多いです。
4-6. 清算条項
離婚協議書の最後には、原則的に清算条項を設けます。
清算条項とは、離婚協議書の記載事項のほか、双方に債権債務が存在しないことを確認する条項です。清算条項を設けることにより、離婚協議書に記載していない金品の請求、要求が認められなくなります。
離婚協議書を締結する前には、忘れている事柄がないかを入念に確認してください。離婚後に思い出しても、後の祭りです。
4-7. 離婚届の届出に関連する条項
離婚届の届出を実行する担当者、役所(役場)の場所、期限に関する条項を設けることがあります。
4-8.守秘義務の条項
こちらも補足的な内容ですが、離婚協議書の記載内容を口外、開示漏洩しないことを約束する条項を設けることがあります。
4-9. 通知義務の条項
同じく補足的な内容として、再婚、住所の変更、電話番号の変更、勤務先の変更を互いに通知することを約束する条項を設けることがあります。
5. 離婚協議書の作成が難しいときは士業に頼るのも1つの方法

離婚に関する情報は、インターネット上にも多くあります。ネット上のサンプルや見本を参考にしながら、離婚協議書の書き方を学び、離婚協議書を自ら作成するのも一つの選択肢です。
しかし、夫婦関係や状況は百人百様。ひとつとして同様の取り決め内容はないでしょう。そのため、文例を参考にして取り決め内容を作成しようとしても、自身の求める見本やサンプルが出てこないケースは往々にしてあります。
例えば、サンプルに載っていない代表的な事項に、不動産の所有権移転登記や住宅ローン債務の弁済に関する条項などがあります。
ネット上のテンプレートはシンプルな内容が多いため、現実的に対応しきれないことが多いのです。そのような場合、自身で作成したとしても、きちんとした内容になっているか不安になりますよね。
そのようなときには、行政書士に相談することをおすすめします。
行政書士は、相談者の状況や要望を踏まえて、官公署への提出書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続きを行ってくれる国家資格を持った専門家です。専門知識がないと自身での作成はかなり難しいところですが、行政書士に任せれば間違いありません。
なお、行政書士の業務経験によっては得意、不得意が存在します。その行政書士は離婚協議書の作成歴は長いのか、離婚問題に強いのかなど、依頼する前には、確認しておきましょう。
また、離婚協議書の作成を弁護士に依頼するのも一つの選択肢です。
弁護士は、行政書士と根本的に立ち位置が異なります。弁護士は、代理権を有しており、依頼者から離婚問題の解決を委任された場合には、依頼者の代理人として動くことになります。
離婚協議書の作成を始め、離婚協議の交渉、調停、裁判と、全ての手続きが行えるオールマイティの法律家です。自分が矢面に立ちたくないときには、最初から弁護士に依頼してしまう方が精神的な負担が軽くなるかもしれません。
弁護士は費用がそれなりに高額になることから、やや敷居が高いといえます。しかし、状況がこじれればこじれるほど時間も費用も掛かります。早期解決を望む場合は、できるだけ早いうちに相談するようにしましょう。
とはいえ、離婚についてなにも知らず、「早く離婚したい!」という思いだけが先行した状態で専門家に相談しても、余計に時間やお金がかかってしまいます。
いきなり弁護士や行政書士に相談する前に、ご自身で離婚成立までのおおよその流れや手続き方法などの基礎知識を身に着けておきましょう。
(最後に)離婚協議書の雛形も紹介

離婚協議書を作成する意味や効力、記載内容などをご紹介してきましたが、離婚協議書に関する理解は深まったでしょうか。
離婚協議書を正しく作成することで、取決めの効力もより明確になり、離婚後のトラブルや不安を回避することにつながります。
最後に、簡単な離婚協議書のサンプルをご紹介します。離婚時に発生する手続きや、解決しなければならない目の前の問題は多くありますが、これを参考に、ぜひしっかりと作成に取り組んでみて下さい。
<離婚協議書のひな型(例)>
離婚協議書
第1条(協議離婚の合意) 夫・〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生、以下「甲」という。)と妻・〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生、以下「乙」という。)は、両者間の未成年の子・〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日生、以下「丙」という。)の親権者を乙に定め、協議離婚をすること及び、養育費の支払い等に関し、次条以下のとおり、合意した。
第2条(監護養育) 丙の監護養育は、母である乙において行うものとする。
第3条(養育費) 甲は、乙に対し、丙の養育費として、令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、月額金〇万円を、毎月末日限り、乙の指定する金融機関口座に振込送金して支払う。振込送金に要する費用は、甲の負担とする。
第4条(面会交流) 乙は、甲に対し、毎月1回程度、丙と面会交流することを認め、その日時、場所及び方法等は、丙の福祉を最大限尊重し、その情緒安定に配慮しながら、甲乙協議の上、定めるものとする。
第5条(清算条項) 甲及び乙は、本件離婚に関し、本協議書に定めるもののほか、何らの債権債務もないことを相互に確認した。
以上
甲及び乙は、本契約の成立を証するため、本協議書を2通作成し、各自1通保有する。
令和〇年〇月〇日
(甲) 住 所 〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号
氏 名 〇〇 〇〇 ○印
(乙) 住 所 〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号
氏 名 〇〇 〇〇 ○印
<こんな記事もよく読まれています>