更新日: 2021.11.09
公開日:2020.08.24
日本のシングルマザーは貧困って本当?~離婚しても貧困に陥らないために~

シングルマザーの貧困が社会問題化している現代では、子どもを連れて離婚したいものの、金銭面の不安から決心がつかないという女性も多くいます。
離婚しても経済的にやっていけるかどうかは重要な問題です。シングルマザーになる道を選ぶのであれば、母子共に健全に生活を送るためにも正しい知識を身につけておくことが大切です。
今回は、シングルマザーが貧困に陥りやすい理由や貧困の問題点、貧困を避けるための方法や解決策などを解説していきます。
~ この記事の監修 ~

株式会社SMILELIFE project
ライフブックアドバイザー(FP) 池田 啓子
フィーオンリーのFPサービスを提供し保険や金融商品の販売をせずにライフプランニング相談業務を行っています。
目次
1. 「貧困」とはどのような状態を言うのか

「貧困」と聞いてどんなイメージを持ちますか?
貧困は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類の意味に分けられます。
1-1. 絶対的貧困とは
水や食糧、衣類など人間が生きていく上で必要な衣食住の基準が満たされていない状態を意味します。一般的に「貧困」と聞いてイメージするのはこの「絶対的貧困」になるでしょう。
世界銀行が定めた国際貧困ラインでは、1日当たり1.90ドル未満で生活する人々を「絶対的貧困」と定めています。為替レートにもよりますが、日本円に換算すると1日約200円前後で生活している人々ということです。
この基準により、2015年には世界中で7億人強もの人が絶対的貧困にあると推定されています。
(参照)世界銀行|国際貧困ライン、1日1.25ドルから1日1.90ドルに改定
(参照)世界銀行|よくあるご質問(FAQs): 国際貧困ラインの改定について
(参照)厚生労働省|国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問(参照)世界銀行|国際貧困ライン、1日1.25ドルから1日1.90ドルに改定
(参照)世界銀行|よくあるご質問(FAQs): 国際貧困ラインの改定について
(参照)厚生労働省|国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問
1-2. 相対的貧困とは
その国や地域の文化水準や生活水準と比べて困窮と判断された状態を意味します。具体的には、世帯の所得が、「その国の等価可処分所得の半分未満」である状態のことです。(等価可処分所得とは、収入から税金や社会保険料などを差し引いたもので、「手取り収入」を意味する)
厚生労働省が公表した「平成28年国民生活基礎調査の概況」によると、平成27年度の日本の所得の中央値は244万円であるため、手取り収入が122万円未満の世帯は相対的貧困になるというわけです。
相対的貧困率は平成18年に15.7%、平成21年は16.0%、平成24年は16.1%と増加傾向にありました。平成27年には15.7%と減少しているものの、国民の約6人に1人が相対的貧困状態にあるという計算になります。
(参照)厚生労働省|平成28年度国民生活基礎調査の概況>6.貧困率の状況
(参照)厚生労働省|平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果>16 ひとり親世帯の平成 27 年の年間収入
(参照)内閣府|第3節子どもの貧困
日本はG7にも数えられる先進国であり、国としての生活水準や文化水準は高いといえます。このため富裕層と貧困層の格差が生まれやすく、相対的貧困が多いのが特徴です。
2. 日本のシングルマザーの相対的貧困率は高い

日本の相対的貧困率が高いことがわかったところで、「シングルマザーはどうなの?」と気になる人も多いでしょう。
厚生労働省が公表する「平成28年国民生活基礎調査の概況」の「各種世帯の所得等の状況」によると、平成27年のひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%と高い数値です。
実にひとり親世帯の半数以上が、相対的貧困に苦しんでいることになります。この数字は、OECD(経済協力開発機構)に加盟する34カ国中なんと最下位でした。(内閣府が公表するデータより)
貧困率がもっとも低い国は、デンマークの9.3%。比較すると日本の50.8%という貧困率がいかに高いか一目瞭然です。
先進国は格差が広がりやすいため、「ひとり親の貧困が多いのも仕方ないのでは?」と思われがちですが、一概にもそうではないことが分かりますね。特に日本の母子家庭は親が働いている場合でも他の先進国に比べて貧困率が高く、決して自己責任などでもないようです。
3. シングルマザーが貧困になりやすい理由

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、平成27年のシングルマザー自身の平均年収は243万円であるのに対し、シングルファーザー自身の平均年収は420万円です。同じひとり親でも、シングルマザーはシングルファーザーより収入がかなり少なく、より貧困に陥りやすいことがわかります。
そもそも、なぜシングルマザーの収入は少なくなりがちなのでしょうか。その原因は、主に「非正規雇用が多い」「長時間働くことができない」「養育費をもらえていない」などが考えられます。
次は、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
3-1. 理由① 非正規雇用が多い
一般的に、正規雇用と非正規雇用では給与の金額やボーナスの有無などが異なり、正規雇用に比べると非正規雇用は収入が低くなります。シングルマザーに貧困が多い理由のひとつは、この非正規雇用で働いているケースが多いためです。
厚生労働省の「平成28年全国ひとり親世帯等調査結果」によると、働くシングルマザーのうち正規雇用に就いている人の割合は44.2%に対し、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用で働いている人の割合は合計で48.4%です。ひとりで子どもを育てているにもかかわらず、正規雇用より非正規雇用で働いているシングルマザーのほうが多いのが現状です。
このように非正規雇用で働くケースが多いのは、女性ならではの事情が影響していると考えられます。
女性の場合、結婚や出産を機に正社員を辞め、育児や家事に専念したり、時間の融通が利く非正規雇用に就いたりすることも珍しくありません。その後離婚してシングルマザーになったとしても、どうしても子ども優先になり、シフトや勤務時間の調整が必要になることが多いため、再び正社員として雇用されづらい現状があると言えるでしょう。
このような背景から、母子世帯の貧困率が高くなるのも無理はないのかもしれません。
3-2. 理由② 長時間働くことができない
たとえ非正規雇用でも、長い時間働いたり、夜勤を多く入れたりすれば収入を増やすことはできるでしょう。
しかし、子どもをひとりで育てるシングルマザーは、ずっと子どもを放っておくことができません。長時間勤務や夜勤は難しい場合が多く、あまり収入を得られないというのも、シングルマザーに貧困が多い理由のひとつです。
もちろん、だからといってシングルマザーが短時間しか働いていないわけではありません。非正規雇用でありながらフルタイムで働いている人も多くいるものの、非正規雇用であるがゆえに、給与水準が低かったりボーナスを受け取れなかったりするシングルマザーが多いのです。
「子どもがいて労働時間が限られる」
↓
「非正規雇用が多くなる」
↓
「収入が低くなる」
↓
「労働時間を増やしたいが子どもがいる以上難しい」
このような悪循環に陥っているシングルマザーは多いのではないでしょうか。
3-3. 理由③ 養育費がもらえていない
離婚後は元夫から子どもの養育費を受け取ることができれば経済的に余裕ができるため、問題ないと考える人もいるかもしれません。
しかし、実際には元夫が養育費を支払わず、シングルマザーが自分の収入だけで子どもを育てるケースも多いのです。
厚生労働省の「平成28年全国ひとり親世帯等調査結果」によると、子どもを育てるシングルマザーのうち、養育費を受け取ったことがないと答えた人は全体の56%もいます。半数以上ものシングルマザーが養育費なしで子どもを育てているという現状に、驚く人も多いのではないでしょうか。
この点も、シングルマザーに貧困が多い理由に含まれます。
養育費を受け取っていない理由はさまざまですが、「元夫とこれ以上かかわりたくない」「元夫には養育費を支払う意思や能力がない」などの気持ちから「そもそも元夫と養育費について取り決めをしていない」というケースが全体の54.2%を占めています。
では養育費を受け取っているシングルマザーの場合、毎月の受取額はどのくらいなのでしょうか?
子供の数によって変わりますが、平均月額は4万3707円で、子どもが1人だと3万8207円、2人だと4万8090円、3人だと5万7739円を平均で受け取っています。
養育費の金額は夫婦の収入によっても変わりますが、毎月養育費を受け取ることができれば、シングルマザーの貧困を防ぐ大きな助けになります。元夫と関わりたくないという気持ちはわかりますが、子どものためにも離婚をする前にしっかり取り決めをし、養育費を請求しましょう。
(参考)厚生労働省|平成28年全国ひとり親世帯等調査結果
(参考)厚生労働省|平成28年全国ひとり親世帯等調査結果>7調査時点における親の就業状況
4. シングルマザーの貧困が抱える問題

シングルマザーの貧困は社会問題化されており、政府もさまざまな支援制度や対策を打ち出しています。貧困は子どもの将来にさまざまな悪影響を与える恐れがあるため、何とか状況を改善しようとしているのです。
次は、シングルマザーの貧困が引き起こす問題について具体的に紹介します。
4-1. 問題① 親も子どもも満足な生活を送れない
シングルマザーが貧困に陥ると、その世帯全体の暮らしに影響が出てしまいます。
たとえば、お金がないために十分な食料を買えなければ、子どもにお腹いっぱいご飯を食べさせてあげられません。必要な栄養素が不足しがちになり、成長に支障が出たり、健康状態が悪化したりする恐れもあるでしょう。
また、収入を得るためにギリギリまで働くと、疲労がたまって自分自身の健康を害したり、満足に子育てをする余裕がなくなる可能性もあります。
その結果、栄養バランスのとれた食事を作れない、子どもと触れ合う気力がない、宿題を見たり学校行事に参加したりできないなど、子どもに寂しい思いをさせてしまうかもしれません。それによって、歯磨きや早寝早起きなど、規則正しい生活習慣のしつけをするのも難しくなるでしょう。
生活習慣を身につけさせるには長い時間と労力が必要であるため、貧困で疲れたシングルマザーには厳しい作業になります。
このほか、シングルマザーが経済的な不安から自身の親、つまり子どもの祖父母と同居しているケースは多いですが、結局は同居している全員で収入を分け合うことになります。これにより生活が苦しくなる可能性もあり、いつまで親の支援を受けられるかわからない、親の介護が必要になれば負担も大きくなる、など心配の種は尽きません。
4-2. 問題② 子どもが教育を十分に受けられない
貧困状態にある世帯では、子供に教育を受けさせてあげたくても、とにかく生活に欠かせない費用を優先的に支払うことになります。水道光熱費や食費、家賃などにお金がかかり、子どもの教育費にまで手が回らないことも珍しくありません。
厚生労働省が平成27年度に行った「ひとり親家庭の生活状況に関する調査」では、ひとり親に対し、子どものために学校以外の教育費をかけているかどうかを尋ねています。
その結果、十分支出していると答えたひとり親の割合は19.5%、ある程度支出できていると答えた割合は24.6%でした。合計しても44.1%であり、半数以上のひとり親が子どもにあまり教育費をかけていないのが現状です。
子どもの教育には、進学費用はもちろん、塾や予備校、習い事や部活動など、意外にもさまざまな費用が必要になるのです。
収入が低いとその費用を準備できず、子どもが教育を受けられない事態にもなりかねません。塾に通えない場合は親が勉強を見てあげれば良いのですが、仕事などで忙しいシングルマザーの場合はそれも難しいでしょう。
この場合、子どもが学校の授業についていけずに学力が落ち、進学先や就職先など将来の選択肢が狭くなる恐れもあります。
4-3. 問題③ 子どもが経験を積めない
貧困世帯とそうでない世帯とで、格差が生まれやすいのが子どもの「経験」です。
たとえば、旅行で新しい物事に触れて感性を磨く、習い事を通して得意なことを伸ばす、海外留学をしてグローバルな意識を持つ、などをするにはお金がかかります。十分な収入を得ている世帯の子どもは数多くの経験を積めますが、収入に余裕がない場合は、制限がかかる可能性が高く、他の子どもとの差を感じやすくなることもあるでしょう。
経験は、子どもの将来にも影響する可能性がある大切なものです。親としては、貧困でこの可能性が小さくなってしまうのは避けたいところではないでしょうか。
4-4. 問題④ 貧困が連鎖する
親の貧困は、子どもにも連鎖しやすいとされています。
たとえば、親が十分な収入を得ている世帯の場合、子どもが小さいうちから様々な習い事をさせたり、塾に通わせたりして質の良い教育を受けさせることが可能です。
その結果、子どもの学力や社会経験などが向上しやすく、大学へ進学したり正社員として就職できたりする可能性が高まります。将来的に子どもは十分な収入を得て、余裕のある生活を送れるようになるでしょう。
これに対し、収入が少ない貧困世帯では質の良い生活習慣や教育、社会経験を身につけるのが難しく、子どもの将来に向けた十分な準備ができないことも多いのです。
結果的に親と同じ非正規雇用でしか働けないなど、子どもが貧困の連鎖から抜け出せなくなるケースも少なくありません。また、このような状況で育った子どもは、生活習慣や教育の大切さを理解しないまま大人になる可能性もあり、自分の子どもが生まれても、質の良い生活習慣や教育を与えることは難しい場合があるでしょう。
このように、親から子、子から孫へと、貧困の要素が連鎖してしまうことがあります。
5. シングルマザーが活用できる手当や減免制度

これまではシングルマザーの貧困について、その要因や貧困による子どもへの影響などを紹介してきました。厳しい内容が多かったので、子どもを連れての離婚をためらってしまう人も多いかもしれません。
しかし、国もそんな現状を見て見ないふりはしていません。
シングルマザーの貧困が問題視されている現代では、ひとり親世帯に対してさまざまな手当てや減免制度が用意されています。これらをうまく活用すれば、離婚後もしっかり子どもを育てられるかもしれません。
次は、シングルマザーが活用できる支援について見ていきましょう。
5-1. 児童扶養手当
児童扶養手当は、母子家庭もしくは父子家庭を対象として国が行う公的支援制度です。
両親が離婚した場合やどちらかが亡くなった場合、または両親のどちらかが障害状態にある場合など、該当する子どもを育てる育てるひとり親や祖父母などに対して支給されるお金で、子どもが18歳になった後、次の3月31日を迎えるまで受け取ることができます。
支給対象となるのは、該当する子どもを育てるひとり親や祖父母などです。
支給される金額は子供の数や所得によって異なり、認定請求した翌月から支給される仕組みです。
<子どもが1人の場合>
養育者の所得 | 支給額 |
---|---|
87万円未満 | 全部支給(月額4万3,160円) |
87万円~230万円未満 | 一部支給(月額1万180円~4万3,150円) |
230万円以上 | 支給なし |
<子どもが2人の場合>
養育者の所得 | 支給額 |
---|---|
125万円未満 | 全部支給(1人目:月額4万3,160円 2人目:月額1万190円) |
125万円~268万円未満 | 一部支給(1人目:月額1万180円~4万3,150円 2人目:月額5,100円~1万180円) |
268万円以上 | 支給なし |
<子どもが3人以上の場合>
養育者の所得 | |
---|---|
子どもの人数による | 3人目以降1人につき、全部支給は月額6110円、一部支給は月額3060円~6100円 |
※2人目までは<子どもが2人の場合>に準じる
なお、ここでいう「所得」は、手取り収入のことではありません。
給与収入の場合は、源泉徴収票に記載された「 給与所得控除後の金額 」に養育費の一定割合をプラスしたり、各種控除を引いたりして算出した「所得」により、児童扶養手当を受け取れるかどうかを判断します。
所得制限の限度表は各自治体のホームページで公表されているので、確認してみましょう。
上記は令和2年4月~令和3年3月の金額であり、支給される金額は、物価の変動をふまえて毎年4月に改定されます。
(参考)寝屋川市|児童扶養手当
(参考)厚生労働省|「児童扶養手当」についての大切なお知らせ
5-2. ひとり親家庭の医療費助成制度
ひとり親家庭の医療費助成制度は、ひとりで子どもを育てる親や、両親のいない子どもを育てる祖父母などを対象に、自治体が医療費を助成してくれる制度です。
助成の内容は各自治体で異なりますが、かかった医療費のうち、1割の負担金を差し引いた金額を助成してもらえるケースが一般的です(1ヵ月の上限額はあり)。たとえば、1万円の医療費がかかった場合、自己負担は1000円だけで、残りの9000円は自治体が支払ってくれます。
ただし、この制度を利用するには、国民健康保険など、各種健康保険に加入していなければなりません。また、児童扶養手当と同じく所得制限もかけられているため、十分な収入があるシングルマザーは利用できない可能性があります。
なお、住民税の課税対象である世帯には負担金がありますが、住民税が非課税となっている世帯は負担金を支払う必要もありません。医療費が全額免除となるので、貧困で苦しむ世帯にとって大きな助けになるでしょう。
ただし、医療費助成制度は自治体によって扱いが異なるため、事前によく確認してください。
(参照)東京都福祉保健局|ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)
(参照)江戸川区|ひとり親家庭の医療費助成
5-3. 国民健康保険料・国民年金保険料の減免
国民の義務として納付が義務付けられている国民健康保険料ですが、前年度の所得や世帯人数などによっては、保険料の減額や免除が可能になることもあります。
保険料を軽減できるかどうかは、住民税の内容によって自動的に判定されるため、特別な手続きは必要ありませんが、無職などで所得がなく、住民税を申告していない場合は自動判定ができないため、あらためて住民税の申告をしておきましょう。
なお、各自治体で保険料や減免できる金額などが異なるので、詳しくは自治体に問い合わせてみましょう。保険料の免除を希望する場合は、軽減と違って別途申請が必要です。各自治体に問い合わせ、必要な手続きを行いましょう。
また、国民年金保険料については、本来月に1万6540円(令和2年度)を支払わなければなりませんが、これを免除してもらったり、支払い期間を延ばしてもらったりすることも可能です。未納とは異なりますので「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の申請書などを準備して、自治体の国民年金担当窓口へ提出しましょう。
(参考)国民健康保険ガイド|母子家庭のための国民健康保険の軽減や免除などさまざまな支援や制度
(参考)志免町|令和2年度国民年金保険料
(参考)日本年金機構|国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
5-4. 自立支援給付金
自立支援給付金は、母子家庭や父子家庭を対象に、親が経済的に自立できるように支援するための制度です。
雇用保険の教育訓練給付を受給できない人が利用でき、指定された教育訓練を受けたり、試験に合格したりすれば、一定の給付を受けることができます。自立支援給付金にはいくつか種類があり、それぞれ内容が異なります。
たとえば、「自立支援教育訓練給付金」は対象講座を受講・修了すると経費の60%、最大で80万円までの受給が可能です。「高等職業訓練促進給付金」は、資格取得を目指して1年以上養成機関で修業する場合、1カ月当たり7万500円~10万円を受け取れます。無事に修了を迎えると、2万5000円~5万円がプラスで支給されます。
対象者や内容が細かく指定されているため、詳しくは自治体の児童(ひとり親家庭)福祉主管課などに問い合わせましょう。
(参考)ジョイナス.ナゴヤ|自立支援給付金等のご紹介
(参考)厚生労働省|母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について
6. 子ども食堂とは

貧困に苦しむ家庭を助けようと、全国で「子ども食堂」というシステムが広がりつつあります。
子ども食堂とは、地域住民や自治体が中心となり、子どもたちに食事を提供する場所のことです。ボランティアやNPO法人などによる支援の意味合いが強く、一般的なレストランなどと違って、無料または安い価格で食事を提供しています。
あまりお金がなくても子どもに十分な食事を与えられるだけでなく、独りぼっちで食事をとらせずに済むため、シングルマザーにとって心強い味方になるでしょう。行政のサポートも始まっており、コンビニなど民間企業が運営しているところもあります。
このように、地域全体で子どものために活動しているケースもあるので、詳しく調べてみると良いでしょう。
7. 生活保護制度も1つの選択肢

さまざまな支援制度を活用しても生活が苦しい場合は、「生活保護制度」を受けるという選択肢もあります。
次は、生活保護の仕組みをふまえ、利用するメリットやデメリットを見ていきましょう。
7-1. 生活保護制度とは?
「生活保護制度」とは、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する国の制度です。
生活保護が認められると一定のお金を受け取ることができ、この制度を活用しているシングルマザーも少なくありません。ただし、生活保護の利用には、「資産がない」「働けない」「ほかの支援制度を受けても貧困状態である」「親族などから支援を受けられない」という4つの条件を満たす必要があります。
たとえば、病気などで働けないものの、両親(子どもの祖父母)が健在で支援を受けられるシングルマザーの場合、生活保護が認められない可能性もあります。
また、支給されるお金は、生活費や家賃、医療費などさまざまな保護の種類に分かれています。どれを申請するかにより、支給される金額や支給方法が変わるので確認しておきましょう。
7-2. 生活保護をもらうメリットとデメリット
生活保護を利用する最大のメリットは、「生活が安定する」ことです。
地域や世帯人数などによっても異なりますが、生活に必要なお金を支給してもらえることで、経済的な不安が軽減されます。子どもの義務教育にかかる費用や、税金など、支払わなければならない費用の負担が軽くなるのは大きなメリットです。
一方で、生活保護を受けていると、貯金ができないというデメリットもあるため注意しなければなりません。貯金があると「資産を持っている」と見なされ、生活保護を打ち切られる恐れがあるため、十分な貯金ができないケースが多いのです。
子どもの将来のための貯金なら特別に認められるケースもありますが、基本的には一定額以上の貯金は難しいでしょう。
シングルマザーの中には、生活保護を受けること自体を「恥ずかしい」「申し訳ない」などと感じ、心理的なプレッシャーを感じる人もいます。
しかし、子どもを健やかに育てるため、自身の健全な生活を送るためなら、利用できる制度は最大限に利用するべきです。貧困状態にありながら耐え続けるのは良い結果を生まないので、必要であれば生活保護制度の利用を検討しましょう。
8. 養育費の未払いを防ぐには?~離婚時にできること~

離婚をすると、本来であれば元夫から養育費が支払われます。そもそも、この養育費がきちんと支払われていれば、シングルマザーの経済的な負担が軽くなり、貧困を防げるはずなのです。
そのためには、第3章でも触れましたが、たとえ元夫とかかわりたくなくても、離婚時には養育費の取り決めをしっかり済ませておきましょう。口約束では不安な点もあるので、公文書として証拠能力が認められる「公正証書」を作成しておくことをおすすめします。
公正証書で養育費の支払いが保証されるわけではありませんが、養育費の未払いが起きた場合、公正証書があれば裁判をしなくても強制執行が可能になるので安心です。
強制執行とは、元夫の給与などを差し押さえる手続きのことで、仮に未払いが起きた場合でも泣き寝入りをせずに済みます。
ただし、裁判なしで強制執行をするためには、公正証書内に「未払いになったときは強制執行されても文句はありません」という旨の認諾文言を入れる必要があるので注意しましょう。
(参考記事)養育費の未払いで困っている!支払ってもらうための適切な対応とは?
9. 養育費の未払いに苦しまない「養育費保証」とは

前述の通り、養育費が支払われない場合、強制執行をすれば給与を差し押さえることができますが、実際にお金を手にするまでには時間と手間、費用もかかります。このため、できれば未払い自体を防ぎたいと考える人が多いのではないでしょうか。
このような場合は、「養育費保証」の利用をおすすめします。養育費保証は、その名の通り養育費の支払いを保証してくれるサービスのことで、元夫が支払わなかったときは、代わりに保証会社が養育費を支払ってくれるのです。
その後も、保証会社が元夫へ支払いを督促・回収するため、シングルマザーが元夫とかかわる必要はありません。未払いによる精神的なストレスを避けることもでき、シングルマザーの助けになるサービスです。このサービスを活用するには公正証書は必要となるので事前に作成しておきましょう。
(参考リンク)養育費に関するお金の不安・督促のストレス・手続きの手間、3つの悩みから解放されます|イントラストの養育費保証
(まとめ)子どものためにも制度や手当をフル活用

シングルマザーの貧困は、子どもの生活や将来にまで影響を与える可能性もあることから、社会的に問題視されています。
貧困を解消して子どもを守るため、さまざまな支援制度や民間サービスなどを積極的に活用しましょう。また、離婚後に受け取れる養育費は平均して月3~5万円ほどあるため、貧困の防止に繋がるよう、離婚時にしっかり取り決めをしておくことが大切です。
離婚をする前に、できることはしっかりやっておきましょう。
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