更新日: 2022.09.08
公開日:2022.09.09
<後半>ADR調停で円満離婚まで最短1ヵ月!ADR制度やメリットを徹底解説

離婚問題をなるべく揉めずに早く解決したい・・・。そんなお悩みの方に、是非知っていただきたい「ADR(裁判外紛争解決手続)」制度。前半では、ADRの基本的なことについてお聞きしました。
◇◇ 記事の前半はこちら ◇◇
<前半>ADR調停で円満離婚まで最短1ヵ月!ADR制度やメリットを徹底解説|SiN
後半では、実際にADRを利用するときの流れやかかる費用、大体の期間、ADRが対応できる案件についてお話をお伺いしました。
現在、一部の自治体ではADRの利用料を補助する支援制度もあるようです。離婚時にADRの利用を検討されている方は必見です。是非ご覧ください!
1. 「家族のためのADRセンター」に依頼する方法は?

1-1. 申立方法や手続きの流れは?
―― 「家族のためのADRセンター」に実際にADRを依頼したいと思った場合、どのように申立てをすればいいのでしょうか?依頼する際の手続きの流れを教えてください。
(小泉さん)
相手からすでにADRをすることの合意が取れている場合や、ADRをすることに迷いがない場合は、直ぐに申立ていただくことができます。家族のためのADRセンターのホームページ上に「申立てフォーム」がありますので、そこからお申し込みください。
また、ホームページ上には申立て料のお振込先や、ADRの説明などをすべてご覧いただけるようになっていますので、詳細はそちらをご覧いただければと思います。
(参考)ADRによる調停(仲裁・仲介)|家族のためのADRセンター 離婚テラス
もし、相手がADRに応じないのでは?とご心配な 場合やADRをすることに迷いがある場合、本当にADRでの解決がベストなのか?申立ての時期は今で良いのか?などとお悩みがある場合は、一度カウンセリングを受けていただくことをおすすめします。
過去の傾向から、お悩みを解消してからADRの申し立てに進んだ方が、成功率は高くなりますから!
―― カウンセリングの有無でその後の結果が変わってくることもあるのですね!
(小泉さん)
はい。なにも対策をせずに申し立ててしまうと、そもそも相手から不応諾と返ってくることが結構あります。
民間ADRが任意の制度である以上、強制させることはできません。なので、事前にご相談いただく中で、相手に応じてもらいやすいようなADRのお誘いの仕方や、申し立ての時期などを含めて一緒に考えていきます。
その方が、相手にADRに応じていただけたり、その後の話し合いもうまくいきやすくなったりします。
―― なるほど。確かに、家庭裁判所で調停を申し立てた場合、相手に調停を申し立てたことを事前に伝えておかない限り、突然呼出状が届くことになりますよね。結果、よりギスギスすることや、そもそも相手が来ずに不成立になることもあると聞きます。相手の心情もくみ取りつつ解決を図れることは民間のADRだからこそできるのですね。
―― ちなみに、家族のためのADRセンターは日本全国対応可能なのでしょうか?
(小泉さん)
はい。日本全国対応可能ですし、国際対応もしています。実際に、海外駐在員の方とオンラインでADR調停をした実績は数多くあります。アメリカ、中国、台湾、アフリカなど・・・。過去に対応をした国を挙げたら キリがないくらいです(笑)
―― 確かに、オンライン調停が主流なら相手がどこにいてもADRができますよね。国際対応をしていただく場合、相手が日本語を話せない場合でも対応可能なのでしょうか?
(小泉さん)
どちらか片方が日本語をお話しできれば、対応は可能です。日本語を話せない方にはご自身で通訳ができる方をご準備いただく必要はあります。
ただ、通訳を挟むと、主張がうまく伝わらなかったり誤解が生じ拗れてしまったりなどと、想定よりも時間がかかることがあるので、あまりおすすめはしていません。日本語が堪能な外国の方であれば、ADRの持ち味を損なうことなくご利用いただくことができるかと思います。
1-2. かかる費用や期間は?
―― 実際にADRの申し立てから解決まで、どのくらいの費用や期間がかかるのでしょうか?
(小泉さん)
家族のためのADRセンターにご依頼いただいた場合、発生する費用は以下のようになります。
費用項目 | 申立人 | 相手方 |
---|---|---|
申立料(申立人の初期費用) | 11,000円(税込) | – |
依頼料(相手方 の初期費用) | – | 11,000円(税込) |
調停費用(都度発生) | 11,000円(税込)/1回 | 11,000円(税込)/1回 |
例えば、調停を4回する場合、初期費用11,000円+4回の調停費用44,000円で、お一人あたり55,000円がかかる計算になります。
調停の回数が増えればその分調停費用は掛かりますし、回数が少なければ費用は抑えられます。大体の方が3回ほどの調停で終了するため、当センターでかかる費用は5万円弱とご認識いただければと思います。
(小泉さん)
また、ADRを申し立てて解決するまでにかかる期間は、平均すると大体3ヵ月ほどと先ほどお伝えしましたが、状況によって本当に様々です。
早く解決できるケースとしては「離婚意思が合致しており、あとはお金について取り決めるだけ」という場合です。その中でも、収入証明や不動産査定などといった資料も揃っている方々は、かなり早く終了します。1ヵ月以内に終了するケースもありました。
そうではなく、そもそも離婚をするかどうかから話し合いが必要なケースや、子どもの面会交流などのペースを試すためにあえて期間を置くケースもあります。その場合は、申立てから終了まで半年くらいかかることもあります。
ちなみに調停1回あたり、大体1時間程度話し合いをします。
―― 通常の調停であれば解決まで早くても3ヵ月、かかると半年から1年ほどかかると聞きます。やはり、申立てから解決までのこのスピード感は民間のADR機関ならではですね・・・!
1-3. 解決後の取り決め書類はどうなるの?
―― 家庭裁判所で調停を行う場合、合意した内容が調停調書にまとめられますが、ADRで合意した内容は何らかの形で書面化されるのでしょうか?
(小泉さん)
はい。ADR調停の場合でも、お二人が合意した約束事を「ADRの合意書」として書面化します。こちらは、申立人用、依頼人用、家族のためのADRセンター保管用の計3通を、追加費用をいただくことなく作成し、お渡しいたします。
ただ、ADRの合意書には執行力がありません。例えば、養育費を取り決めたのに支払いがされない、というときに、ADRの合意書では強制執行をすることができません。そのため、養育費などの継続給付の条項がある場合、当センターにて強制執行認諾条項付きの公正証書を代理作成することがほとんどです。
なお、公正証書の代理作成をご依頼いただく際には、別途費用が発生いたします。
―― 家族のためのADRセンターに執行力のある公正証書の作成代理を依頼する場合、どのくらいの追加費用がかかるのでしょうか?
(小泉さん)
公正証書の作成代理にかかる依頼料はお一人あたり33,000円です。ここに、公証人手数料が別途発生します。
公正証書の案文作成から公証役場への持ち込み、公証人とのやり取りや案文の調整、公正証書化の手続きもすべて当センターで行います。ご依頼者さま方にはお待ちいただくだけで公正証書の正本がお手元に届くため、当センターにご依頼いただくことは相談者さまにとってかなりメリットが大きいのではないかと思います。
もちろん、当センターに依頼せずご自身方で作成していただいても問題ありません。
―― 公正証書の作成を別途弁護士や行政書士へ依頼するとなると、離婚の経緯や双方の事情、決まった約束事などを誤解のないように一から説明しなければなりません。そう考えると、このお値段はかなり破格ですね・・・!
(小泉さん)
はい、ADR調停から公正証書作成まで一貫して行いたいとお思いの方には、かなりおすすめです!
ただ、家族のためのADRセンターに公正証書作成代理をご依頼いただく際にかかる費用33,000円は、ご夫婦それぞれにお支払いいただく必要がありますので、その点だけご認識いただければと思います。
―― なるほど。ですが、離婚意思の合意から取り決め内容のすり合わせ、公正証書の作成までを、夫婦の心情に寄り添いながら一貫して対応していただけると思うと、かなりコストパフォーマンスが良い、むしろお安いように感じます・・・。
1-4. 利用者の声は?
―― 実際に家族のためのADRセンターでADRを行った方のお声をお聞かせください。
(小泉さん)
印象に残っているのは、「ADRの結果は置いておいて 、相手ときちんと話し合いができた点にとても満足している」というお声です。
やはり、双方の希望や主張があるので、望んだ結果にならないこともありますが、解決へと向かう最中に自分が思っていたことや主張をきちんと相手へ伝えられたことによって、そのプロセスに満足いただける方が多いように感じます。
また、「夫婦の関係性を今以上に悪化させることなく解決することができて良かった」というお声もありました。
2. 自治体が行っているADRに関する取り組みとは?

―― 現在、すでに一部の自治体でADRに関する取り組みが行われているとお聞きしました。この取り組みとはどういったものなのでしょうか?
(小泉さん)
一部の自治体では、「民間のADR機関に調停を申し立てる際、その申立費用と第一回目の調停費用の一部、もしくは全部が自治体から助成される」という取り組みを行っています。
私が知る限りですと、東京都港区、板橋区、杉並区、千葉県千葉市、北海道札幌市などで現在助成制度を行っています。通常、申立てから調停成立までで大体5万円弱かかるとお伝えしましたが、この制度を利用した場合、半額ほどの自己負担でADR制度が利用できることになります。
―― 今後予定している自治体とのお取り組みや、これからの展望をお教えください。
(小泉さん)
以前から全国の自治体に向けてADR制度の周知活動を行っていますが、今は「離婚講座」の開催にも力を入れております。
「離婚講座」では、離婚をする前に知っておくべき情報をお伝えします。例えば、「子どもの福祉とはなにか?」「両親が離婚をするときにどのようなところで子どもが傷つくのか?」、「離婚をする際の子どもへの説明の仕方」などです。

(小泉さん)
もちろん、ADR制度を広く知っていただくことも大切なのですが、このような情報を事前に知っておくだけで、円満な離婚に向けて冷静に行動ができたり、子どもに対して適切にケアができたりします。
ですが、離婚をする前に知っておくべき情報を手にする機会って現状あまりないんですよね。このような情報を提供することがとても大切なんだよ、と自治体に訴え、夫婦問題にお悩みになっている方に向けて、離婚講座を広く開催できればと考えています。
3. 離婚以外にも活用できる!ADRが対応できる分野とは?

―― ちなみに、ADRは離婚以外の案件でも利用することはできるのでしょうか?
(小泉さん)
もちろんできます!ADRって、実はものすごく多くの分野に対応しています。
例えば、先ほどからご紹介している離婚問題や相続、親族間紛争や、自転車事故、近隣トラブル、ペットに関することなど、身近で発生しがちな問題はもちろん、保険の保障関係や医療過誤、海外企業同士のM&Aといった専門性が非常に高い問題でもADRが利用されます。実際に、東日本大震災で起きた原発事故の被害者と東京電力との補償に関する紛争でも、ADRが活用されました。
トラブルの規模が小さい場合、弁護士を立てて解決を図ろうとすると費用倒れすることがあります。そういった場合に、ADRを活用していただくケースも多くあります。
また、専門性が非常に高い問題の場合、法律に則り調整を進めるよりも、その分野の専門家を交えて議論し調整を進める方が、より柔軟な解決を目指せるケースが往々にしてあります。
また、民間のADR機関にはそれぞれ専門分野が設定されていることがほとんどです。もし、何か問題を抱えていてADRで解決を試みたい場合は、その問題を専門分野としているADR機関を探し、ご相談をしてみるのがいいかもしれません。
4. 夫婦問題に悩んでいる方、これからひとり親家庭になる方へ

―― 最後に、夫婦問題に悩んでいる方や、これからひとり親家庭になる方へメッセージをお願いいたします。
(小泉さん)
夫婦関係や離婚についてお悩みの方は、とにかく色々なところにご相談に行かれるのがいいと思います。
自治体の無料窓口や弁護士相談、当センターのようなADR機関でのカウンセリングなど、色々なところに相談に行く中で、自分の悩み事を何回もお話している内にご自身の気持ちやどうしたいかがまとまってきたり、解決に向けて意欲がわいてきたりします。ひとりで悩まずに、いろんなところに相談してみてください。
―― 貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!