更新日: 2022.10.24
公開日:2022.02.24
モラハラ夫(妻)から解放されるためには?定義や具体例、対処法を紹介※チェックリスト付き

夫婦が離婚する理由で、常に高い割合を占めている「モラルハラスメント(モラハラ)」。離婚に至っていない夫婦間でも、パートナーからモラハラ被害を受けているケースは多くあります。
そして、驚くべきことにモラハラ被害に遭っている人の多くが「自分がモラハラ被害者である」ことを自覚していないのだそうです。もしかしたら、あなたもモラハラを受けているかもしれません。
この記事では、モラハラの意味や加害者・被害者の特徴といった基本的なことから、対処法や離婚したほうがいいケース、離婚するまでの段取りを、具体例や体験談を交えて紹介します。
ご自身がモラハラ被害を受けているか判断できるチェックリストもご紹介します。是非参考にしてみてください。
~ この記事の監修 ~

カウンセリングルームソライロ
公認心理師/精神保健福祉士 三谷 亨
モラハラを含むDVや浮気癖、性的倒錯、夫婦不和等の問題に対し、カウンセリングやソーシャルワークを用いて問題解決を図っています。
1. そもそもモラハラとは?

「モラルハラスメント(モラハラ)」とは、人付き合いにおいて、相手へモラルに欠けた行動や言動をとることを意味します。
世間一般的な道徳や倫理を「モラル」、相手を不快にさせたり不利益を与える、また、尊厳を傷つけたり、脅威を与える行動をすることを「ハラスメント」といい、これらを組み合わせて生まれた単語が「モラルハラスメント(モラハラ)」です。
モラハラを受けても目に見えるような怪我や傷は負いません。しかし、れっきとした精神的な暴力であり、これを受けた人は心に深く傷を負います。家庭内で夫(妻)から、職場内で同僚や上司、部下からモラハラを受けているおそれがある場合には、早く対処するべきです。
ちなみに、裁判所が公表している「離婚申立て動機に関する司法統計」によると、
妻側の動機 | 回答数 | 割合 |
---|---|---|
性格の不一致 | 18,268 | 39.10% |
生活費を渡さない | 13,725 | 29.40% |
精神的に虐待する(モラハラ) | 11,801 | 25.20% |
暴力 | 9,745 | 20.80% |
異性関係 | 7,378 | 15.80% |
夫側の動機 | 回答数 | 割合 |
---|---|---|
性格の不一致 | 10,438 | 60.90% |
その他 | 3,525 | 20.60% |
精神的に虐待する(モラハラ) | 3,370 | 19.70% |
異性関係 | 2,373 | 13.80% |
家族親族と折り合いが悪い | 2,294 | 13.40% |
(参考)裁判所:司法統計 平成30年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所 ※申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で重複集計
上記の通り、離婚申立て動機において、モラハラは男女共に第3位にランクインしています。モラハラが理由で離婚する夫婦は全体の約2割を占める結果となりました。
このことより、離婚をした世帯で、相手からの日常的なモラハラに悩んでいた方は多いことがわかります。
2. モラハラに該当する行為

では、モラハラとはどのような行為を指すのでしょうか。モラハラ行為に該当する具体例をご紹介します。
2-1. 発言
パートナーの状況や心境を考えずに思いやりのない言葉で精神的に傷つける、いわゆる「暴言」を吐くことはモラハラに該当します。
モラハラ発言には「パートナーを全否定する」という特徴があります。ちょっとした喧嘩での発言ならまだしも、日常的に言われているようであれば注意が必要です。
モラハラにあたる発言には、具体的に以下のようなものがあります。
- 「誰のお陰で生活できていると思っているんだ!大した稼ぎもないくせに口出しするな!」
- 「こんなことも知らないの?」
- 「こんなことも分からないの?」
- 「どうしてこんなこともできないの?」
- 「主婦(夫)なんだから体調が悪くても家事くらいしろ。体調のせいにするな」
- 「成功したのはたまたまじゃない?うまくいっているのは今だけだよ」
2-2. 態度
心無い発言だけでなく、態度や行動もモラハラに該当する場合があります。
モラハラをする人は、被害者の行動を制限したり、自分の思い通りの行動をしないと露骨に不機嫌になったりと、とにかく相手のことを自分の管理下に置こうとする傾向があります。
モラハラにあたる態度には、具体的に以下のようなものがあります。
- いつも上から目線で、自分の発言や行動、容姿などを馬鹿にしてくる
- 平気で噓をついたり、突然無視してきたりする
- 自分の思い通りにいかないと逆上し、物にあたったりわざと物音を立てたりする
- なにかを指摘しても、原因や要点をすり替えて「それはおまえのせい」と逆ギレする
- 自分に非があることを頑なに認めず、罪をなすり付けようとする
3. 相手がモラハラをしてくる理由とは?

相手がモラハラ発言やモラハラ行動をする理由はあるのでしょうか?ここでは、相手がモラハラをしてくる理由を5つご紹介します。
3-1. 自分が優位であることを示したい
モラハラ加害者は、パートナーが自分より優れていることを決して認めません。
たとえパートナーが正しい主張をしたとしても「自分が正しい」と暴論でねじ伏せたり、パートナーが成功したとしても認めなかったりと、下に見るような行動や発言をとります。
パートナーへ「自分の方が優れている」とアピールしたいがため、結果、モラハラとなってしまうのです。
3-2. 相手を自分の支配下に置きたい
モラハラ加害者は、自己承認欲求が非常に高い傾向にあります。そんなモラハラ加害者にとって、自分のこと無条件で受け入れて尽くしてくれる人がいれば願ったり叶ったりですよね。
パートナーに暴言や横柄な態度などモラハラをし支配下に置くことによって「自分には言うことをなんでも聞いてくれる存在がいる」と、自己承認欲求を満たしているのです。
3-3. 相手に自分を思う気持ちがあるか試している
モラハラ加害者は自分に自信がないことが多く「本当に自分のことを愛しているのだろうか」「他に相手がいるのではないか」と疑ってしまいます。
その結果「本当に愛していたら、どんな発言や行動でも受け入れてくれるはず」と、モラハラをすることでパートナーを試している場合もあるのです。
また「パートナーに甘えたいのに、甘え方がわからない」という思いが根底にあり、結果モラハラをしてしまうケースもあります。自分の感情を素直に表現できないため、相手の気を引くために暴言を吐くなどのモラハラ行為をしてしまうのです。
3-4. モラハラをしてストレス発散している
モラハラ気質のある人は外面を良く保とうとし、自分より強い立場にある人や優秀な人には何も言えません。
そのため、職場や人間関係ではストレスがたまります。溜まったストレスを、家庭内でモラハラをすることで発散させているケースがあります。
3-5. そもそもモラハラしている自覚なし
幼少期に家庭内で自分の父親がモラハラをしていた場合、モラハラを受けている母親や、モラハラをしている父親のことを常に見ていたことになります。
幼少期にモラハラが日常的にある状況におかれ、ましてや両親がモラハラをしている(受けている)のを目の当たりにしていたら、それらはモラハラではなくごく普通のことだと思ってしまうのです。
そんな状況で育ってきたため、自分の発言や行動がモラハラに該当するなどと微塵も思っていないケースもあります。
4. モラハラをする人に共通する性格・特徴

モラハラをする人に共通点はあるのでしょうか?モラハラをする人は、自身の性格や生まれ育った環境に要因があると言われています。
ここでは、モラハラ加害者の特徴やモラハラ加害者に共通している性格などといった共通点をご紹介します。
夫婦間のモラハラだけではなく、父、母、兄弟姉妹、義両親、彼氏・彼女にも当てはまる場合があるので、チェックしておくと良いかもしれません。
4-1. 自分に自信がないけど、自尊心が高い
モラハラ気質の人は自尊心が非常に高く、自分が常に一番でありたいと思う傾向があります。
しかし、ふたを開けてみると、程よい成功体験が無いまま大人になってしまったため、心のどこかで自分に自信を持てていないのです。それでも持ち前のプライドの高さゆえに、自分に自信がないことを頑なに認めません。
だからといって自分では一番になるための努力をしようとせず、手っ取り早く、かつ楽に自分の立場を上げるために、身近にいる人を「自分を無条件で肯定してくれる存在」に仕立て上げます。結果として、自己愛に浸るためにパートナーへモラハラをするのです。
4-2. 人によって態度を変える
モラハラ気質のある人は、内弁慶で八方美人という特徴があります。
自分よりも強い立場や権力を持つ人には委縮し、良い人を演じます。しかし、自分よりも立場の弱い人や、権力を持たない人には横柄な態度をとったり、虚勢を張ったりします。モラハラ加害者は、根は小心者なのですが、強がることで自分を保とうとする特徴があるのです。
4-3. 被害者意識が強い
「どうして自分ばっかりこんな目に…」と自分のことしか考えていない人、ご自身の周りにはいませんか?モラハラ気質のある方は、自身を棚に上げ正当化し全て相手のせいにする特徴があります。
このような被害者意識の強い人から話を聞いてみると、その人にも非があったり、むしろその人の行動や言動が原因だったケースが往々にしてあります。
そうだとしても、「なぜこうなってしまったのか」「自分にも原因があるかもしれない」などと、状況を客観的に見たり、自らを省みることができないのです。また、自分に非があることをわかっていたとしても、プライドが高いため認めようとしません。
4-4. 幼少期に家庭環境に恵まれなかった
幼少期に「親に遊んでもらいたい、構ってもらいたい」とアピールをしても無視をされたり、「今忙しいの、わからない?」「本当に面倒くさい子」などとネグレクト、ひいては身体的・心理的虐待を受けていたなど、親からの愛情を受けられなかったケースがあります。
そのような場合、ありのままの自分ではダメなんだと思い込んでしまい、健全な自尊心や自己肯定感を育めず「人の愛し方、愛され方」「愛情表現の仕方」がわからないまま大人になってしまうのです。結果、歪んだ愛情表現となりモラハラ行為をしてしまいます。
4-5. 親が過干渉・過保護だった
逆に、親がずっと過干渉だったというパターンもあります。
小さいころからどんなわがままを言っても親が叶えてくれたり、習い事や部活、将来の進路や就職先などを何から何まで親が決定していたり…。自ら目標に向かって努力したり、自分の意思で物事を決定するという体験をしていません。
そのため、特に努力も苦労もしていないのに「自分は特別な存在なんだ」という思いが肥大し、プライドだけが異常に高くなるのです。これは、最初にご紹介した「自分に自信がないけど、自尊心が高い」にも繋がります。
そんな人が社会に出たとしてもやはり通用するはずはなく、プライドが維持できずにストレスばかりが溜まります。
そのため、パートナーに暴言やモラハラ行動をし八つ当たりをすることによって、自尊心を保ちストレス発散をしているのです。
4-6. 長い付き合いの友人がいない
このような人となりなので、交友関係が続いたとしても、モラハラ気質のある本性が現れた瞬間、友人は去って行ってしまいます。モラハラ加害者に古くからの友人がいないのにも頷けますよね。
5. モラハラをされる人に共通する性格・特徴

今度はモラハラ被害者、またはモラハラ被害に遭いやすい人に多い特徴をご紹介します。
5-1. 自己評価が低い
何か起きた時に、パッと口に出る言葉が「すみません」や「ごめんなさい」だったりしませんか?
自己評価が低く自分に自信がない方は、たとえ自分に非がなかったとしても「自分なんかより他人の言うことのほうが合っているに違いない」と思ってしまいがちです。
そのため、モラハラを受けたとしても「もしかしたら原因は自分にあるのかもしれない」「こんなことを言ってくるなんて、気づいていないだけで自分に非があるに違いない」などと思ってしまい、モラハラ夫やモラハラ妻の格好の餌食となってしまうのです。
5-2. 自己主張をしない、苦手
自己主張が苦手で自分の意見を言えない、という人は注意が必要です。
モラハラ加害者は、自分の意見や考えを押し付けやすい人をターゲットにします。自分の意見を言うことが苦手なところに付け込まれ、良いように利用されてしまうのです。
意を決して反論したとしても、相手からものすごい剣幕で理不尽なことや暴言を吐かれてしまったら委縮し何も言えなくなってしまいます。こうしてモラハラが悪化するケースもあります。
5-3. 相手に尽くしがち
人の無茶な要望も「相手のために」と無理して聞き入れてしまったり、「自分を頼ってくれている」「私のことが本当に好きなんだな」と思ってしまう人も危険です。
モラハラ加害者は、「利用しやすさ」を無意識に考えて行動しています。そんなモラハラ加害者にとって、自分のために尽くしてくれて、思い通りになる人は格好の餌食となります。仕事でも交友関係でも、自分を二の次にして相手を最優先させる傾向のある方は要注意です。
6. モラハラの対処法は?

夫や妻からモラハラを受けている場合、どのように対処すればいいのでしょうか?
ここではモラハラの対処法を順を追って説明します。
6-1. 共通の知り合いに相談する
モラハラをしてくる張本人といきなり話し合おうとしても「また何か言われて嫌な思いをするかもしれない…」「逆上されてモラハラがエスカレートするかもしれない…」と恐怖心を抱き、話し合いすらできないケースもあるでしょう。
そのようなときは、まずはパートナーと自分の共通の知り合いに状況を話し、どう思うか意見をもらうと良いでしょう。
モラハラ加害者は外面を良くする傾向にあるため、たとえ共通の知り合いだとしてもパートナーにモラハラ気質があることを知らないことが多いのです。そのため、お互いのことを知る人物に第三者目線の意見をもらうことが重要なのです。
相談した際には、知り合いから言われた「相手の発言や行動でおかしいと思ったポイント」をきちんと控えておくようにしましょう。後でパートナーと直接話すときに活用できます。
また、頼れる知人がいない場合は、弁護士や夫婦カウンセラーに相談するのも良いでしょう。無理に一人で解決しようとせず、頼れる人を頼るようにしましょう。
6-2. 自分が受けたモラハラ被害を記録する
自分が苦痛に感じたパートナーのモラハラ発言や行動を意識的に控えておくようにしましょう。これらは、いざパートナーと話し合いをする際に、自分が受けたモラハラ被害を明確に示す証拠となります。パートナーが怒鳴ったり物にあたる場合は、音声を録音したり、写真や動画を撮るのも有効的です。
モラハラ被害が思い出せない、思い出したくない場合は、これから普段通り生活をしていく中で「これはモラハラかも」と思った発言や行動を、少しでもいいので新たに書き留めるようにしましょう。
6-3. 人目のある所で話し合い、自身がモラハラ加害者であることを自覚させる
自分が受けたモラハラ被害の証拠をパートナーに提示し、モラハラで自分がどのような気持ちになりどのような精神状態に陥ったか、このような発言や行動はやめてほしいという旨を、自分の言葉で素直に伝えましょう。
「それはお前が悪い」と責任転嫁をされるかもしれません。その際は、共通の知り合いに相談している旨、その際に言われた「相手の発言や行動でおかしいと思ったポイント」を伝え、第三者から見てもおかしいということをはっきりと伝えましょう。
話し合いの際のポイントは「必ず人目のある所で話し合うこと」です。
自宅など、お互いしかいない場所で話し合いをしてしまうと、相手から逆上されたときにとても危険です。プライベートな話ではありますが、自身を守るためにも飲食店や公共の場などといった、人の目があるところで話し合うようにしましょう。
また、一対一での話し合いが難しいと感じた場合は、無理せず夫婦カウンセラーや弁護士を頼るのも一つの手です。
6-4. 別居や離婚・別れることを検討する
話し合いを経てパートナーがモラハラを自覚し、モラハラ発言や行動が改善したら喜ばしいことです。
しかし、改善するとは言ったものの以前と全く変わらない、また、全く取り合ってもらえなかった場合もあります。そのときは、自分や子どもの心身の安全を優先して、別居や離婚を検討することも視野に入れましょう。
7. 離婚したほうがいい場合と離婚方法

「夫や妻からのモラハラに悩んでいるが、別居や離婚をしてしまったら後悔するかも」と思っている人も多いでしょう。
ここでは、モラハラを受けている人が今すぐにでも別居・離婚をした方がいいケースをご紹介します。
7-1. 暴力も振るわれている場合
パートナーからDVも受けているとなると、シンプルに身の危険があります。最悪の場合、命に関わることになりますし、子どもがいる場合は子どもへの虐待に繋がりかねません。危ないので直ちに別居や離婚をするべきでしょう。
パートナーと一時的に距離を置きたい場合は、厚生労働省所管の「婦人相談所」で一時保護を受けることもできます。その際は、子どもも一緒に一時保護施設(シェルター)を利用することができるので安心です。
モラハラに加えてDVもある場合は、訴訟をしたら慰謝料を請求できるケースもあります。音声の録音や写真、医師の診断書などモラハラやDVの証拠を揃え、離婚に向けた準備を進めるようにしましょう。
自身や子どもの身の安全に関わりますので、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
7-2.楽になれる方法がないか常に考えている場合
パートナーからのモラハラ行為で、すでに精神的に限界を迎えている可能性があります。場合によっては、適応障害やうつ病を診断されるケースがありますので、ひとまず心療内科・精神科など、病院を受診するようにしましょう。
事情を説明し実家に戻ったり、親しい友達に相談してみるのもいいでしょう。ご自身のためにも一旦パートナーと距離を置いてください。
7-3.相手と自分の間に子どもがいる場合
子どもがいるからこそモラハラ夫(妻)離婚に踏み切れない、という方も多いでしょう。しかし、モラハラは子どもの成長に悪影響を及ぼします。
両親のモラハラを近くで目の当たりにしてきた子どもたちは、
- 常に他人の顔色を窺ってしまい、自分の意見を言えない
- そもそも自分の意見を持てない
- モラハラが当たり前の環境で育ったため、将来モラハラ加害者になってしまう
このような傾向があり、健全な成長に悪影響を及ぼすのです。
経済的に不安がある場合でも、シングルマザー(シングルファザー)が利用できるひとり親向け制度や助成金は多くあります。子どもの健やかな成長のためにも別居・離婚を検討しましょう。
7-4. モラハラをしてくるパートナーとの離婚方法
相手と話し合いの末、解決が図れるのであればそれに越したことはありません。しかし、折り合いがつかず離婚を検討する場合、様々な準備をする必要があります。モラハラを理由に離婚をする際の大まかな流れは、以下の通りになります。
- モラハラの証拠を集める
- 離婚希望条件を決めておく
- 別居の準備を進める
- 家庭裁判所に調停の申し立てをする
- 必要に応じて自治体や警察に相談
7-4-1. 証拠を集める
夫(妻)のモラハラが理由で離婚する場合、当人同士だけでの話し合いでは難しいでしょう。そのため、調停を経て離婚を成立させることを前提に準備を進めていきます。
その際に、モラハラを受けていた証拠の提出を求められたり、提示したほうがスムーズに話し合いが進めケースがあります。そのときの備えとして、まずはモラハラを受けていた証拠を集めるようにしましょう。証拠の具体例は以下のようなものがあります。
モラハラ行為 | 証拠となるもの |
暴言・人格否定などといった発言 | 録音、メール、LINEの記録 |
物にあたるなどの行為 | 動画、パートナーがその場を去った後の現場の写真 |
わざと大きい音を出す | 録音、動画 |
7-4-2. 離婚希望条件を決めておく
離婚時には、
- 慰謝料
- 婚姻費用
- 財産分与
- 年金分割
子どもがいる場合は、
- 親権
- 養育費
- 面会交流
について具体的に決める必要があるため、事前に自身の要望をまとめておきましょう。
弁護士に離婚相談を依頼をすると、これらの項目も漏れなく考えてくれるため安心です。
7-4-3. 別居の準備を進める
モラハラの証拠集めや離婚希望条件の検討と並行して、転居地を探し荷物をまとめ始めるなど、別居の準備を少しずつ始めましょう。
独立する余裕がない場合は、一旦実家に戻るのもひとつの手です。離婚を検討していること、離婚後は実家へ戻りたいことを、両親や同居家族へ早めに相談しておきましょう。実家に戻れない場合は、独立資金を貯める必要があります。
7-4-4. 家庭裁判所に調停の申し立てをする
準備が整ったら、家庭裁判所に調停を申し立てます。
離婚調停では、調停委員という第三者を交えて離婚協議を進めていきます。そのため、モラハラ被害を受けている方でも安心して話し合いを進めることができるでしょう。調停は、早くて3ヵ月、離婚条件に折り合いがつかないと1年以上かかるケースもあります。
調停でも折り合いがつかない場合は、離婚裁判へ進みます。離婚裁判では、裁判上の離婚原因やその証拠の提出が求められ、これがないと裁判所から離婚を認められません。ここで、予め準備しておいた証拠を提出するようにしましょう。
弁護士に相談すると、これらの準備を自分の代わりに行ってくれるため、よりスムーズな問題解決が期待できます。離婚方法に関する詳しい情報は以下を参考にしてみてください。
(関連記事)離婚の進め方とは?後悔しない離婚のための3つの方法と注意点
7-4-5. 必要に応じて自治体や裁判所に相談
離婚後に、住所など自身の情報を元パートナーに知られたくない場合は、住民票や戸籍の秘匿手続きを行いましょう。
秘匿手続きを行うと、住民票や戸籍の附票を自分以外が取得することができなくなります。
また、「元夫が離婚後も自身の居住地に訪問してくるかもしれない」「元妻が執拗に電話をかけてくるかもしれない」など、元パートナーからの干渉に不安を感じる場合は、裁判所に接近禁止命令や電話等禁止命令を申し立てておく対策もあります。
8. 実際にあったモラハラ体験談

ここでは、SiN編集部に寄せられた実際にあったモラハラエピソードをご紹介します。
◎他の異性ならまだしも、職場の人と会ったり話したりことすら制限された
「モラハラを受けている自覚がありませんでした」と語るCさん。当時、同棲していた彼氏からモラハラを受けていたそうです。
出会いは同じ職場でしたが、彼氏は転職し自分だけが残ることに。Cさんは、会社行事に積極的に参加したり、仲の良い社員とはプライベートで遊びに行く機会も多く、仕事もバリバリとこなしていました。
「それが気に食わなかったのでしょうか、職場の人と関わることを極度に嫌がったんです。付き合う前はそんなこと全くなかったのに……」
「職場の人と話した内容を話題に出しただけで不機嫌になったり、ひどいときは暴言を吐かれたり逆上されました」
挙句の果てには、Cさんが社内行事に参加することを制限したそうです。
「でも、普段は優しい人なんです。だからモラハラとは思わず、この人は「私のことが本当に好きなんだな」「私がいないとダメなんだな」と思っていました」
最終的に、Cさんは勤めていた会社を退職することに。
「職場の人からは大反対されましたが、自分自身会社を辞めることに全く抵抗はありませんでした。今思えばあの頃の自分はおかしかったな……と」
職場を辞め、彼氏以外の他人と接する機会が無くなってから初めて「もしかして逃げ場を塞がれている?」「彼氏の思い通りになるように洗脳されているのでは?」とこれまでの発言や行動がモラハラだと気付いたそうです。
もともとキャリアアップ志向があったCさんはその後再就職し、職場の人との交流を断つことは仕事上不可能、このまま交際を続けるのは無理だと判断し、別れたそうです。
◎典型的な男尊女卑、けがをしても心配はおろか指差して笑われた
一流大学出身の夫からモラハラを受けていたというOさん。常日頃から、自身の性格や行動を夫から否定されるモラハラ発言が多かったと語ります。
「旦那に(モラハラ発言を)やめてって言っても、『大した大学も出てないのに、何言ってるの?』と全否定されました」
「それとこれとは話が違うじゃないですか。でも、何を言っても論点がずれた反論をされるので、旦那に何か言うのは諦めました」
そんなある日、夫婦で出かけているとき、荷物持ちをしていたOさんが不注意で転倒してしまったそうです。
「普通だったら「大丈夫?」って声掛けしたり、起き上がるのを手伝ったりするじゃないですか。旦那は心配や助けることもせず、ただこちらを指差して笑っているんです。もう限界だな、と思いました」
夫の職業が安定しているので、経済的にも将来安泰だと思っていたそうですが、このことがきっかけで離婚を決意したOさん。
「まだ子どもはいませんし、傷が浅い今のうちに離婚した方がいいなと思いました」
現在Oさんは夫と別居しており、弁護士に相談しつつ離婚調停中。もう間もなく離婚が成立するとのことです。
「夫の実家が典型的な男尊女卑で。恐らく、子どもの頃から両親や親子間でこういうやりとりが日常的にあったんだと思います。自分がモラハラをしている、またモラハラ的な思考である自覚がないんでしょうね」
9. これってモラハラ?基準チェックリスト

最後に、現在ご自身がモラハラを受けているかを判断できるチェックリストをご紹介します。
あなたはモラハラチェックリストにいくつ当てはまりますか?自分がモラハラを受けているのかわからない、といった方は、是非参考にしてみてください。
9-1. モラハラチェックリスト
- 妻(夫)の学歴や経歴を馬鹿にして見下してくる
- 妻(夫)を人前で馬鹿にしたりけなしたりする
- 妻(夫)の仕事をやめさせたり、友人との会食などを制限したりする
- 妻(夫)が自分の意見に従わないと不機嫌になる
- 妻(夫)が仕事などで成功しても、嫌味を言ったり、馬鹿にしたりする
- 妻(夫)には自分のルールや価値観を押しつけるが、妻(夫)の価値観や考え方、意見は否定する
- 自分が悪くても妻(夫)には謝罪しない
- 妻(夫)の体調が優れないときでも、家事をするよう要求する
- 機嫌が悪いと長時間執拗に妻(夫)に説教する
- 妻(夫)がお金を自由に使うことを許さず、使途を詳細に知りたがる
- 妻(夫)が大切にしている物を壊したり、勝手に捨てたりする
- 自分勝手なセックスを強要したり、妻(夫)が嫌がる性行為を強要する
- 妻(夫)のスマホを盗み見したり、行動を監視したりする
- 必要な生活費を渡さなかったり、渡すことを渋る
- たいした理由もないのに妻(夫)を長時間無視する
- 妻(夫)の前でわざとため息や舌打ちをする
- 用意された食事が気に入らない時、食事を摂らない、または別の物を食べる
- 自分の気分次第で、家族との約束や予定を平気ですっぽかす
- 自分の思い通りにならないと、不機嫌になって物にあたる
- 妻(夫)の小さなミスや過去の失敗をしつこく責める
ここに挙げたチェックリストは、そのハラスメント行為が日常的に繰り替えされているかどうかがポイントになります。
9-2. モラハラ度の基準とアドバイス
◎1~2個 モラハラ度20%
2項目くらいにチェックがついても、その行為がごくまれであれば、問題視しなくてもよいでしょう。
しかし、1項目でも、それが日常的に繰り返される場合は「モラハラ夫(妻)」である恐れがあります。夫(妻)自身も気づかないうち、愛情や嫉妬からモラハラ化している可能性もありますので、気になっている点について、夫(妻)と話し合いをしましょう。夫(妻)に話せないのであれば、信頼のおける友人等に相談しましょう。
◎3~5個 モラハラ度50%
「モラハラ夫」である可能性が高いです。専門家に相談しましょう。夫に対し改善を求める場合には、専門家や第三者を交えた話し合いの場が必要です。また、緊急時の避難場所を確保しましょう。
◎6~9個 モラハラ度80%
モラハラ被害を受けていることを自覚して、別居や実家への避難など、夫と物理的な距離を取りましょう。この段階までくると、専門家の介入が必要です。
◎10個以上 モラハラ度100%
この状況下で同居しているということは「モラハラ夫(妻)」のマインドコントロール下に置かれていると考えられます。
早急に避難し専門家に介入してもらい、別居や離婚を見据えた現実的な行動をとりましょう。また、心身に不調が見られる場合は心療内科・精神科を受診しましょう。
(まとめ)まずはモラハラ被害者の自覚を!限界を迎える前に適切な対処をしよう

モラハラ加害者は、ターゲットとなる人の優しさや包容力に付け込み、都合の良いようにコントロールしようとします。
また、モラハラが常日頃から行われていると、被害者は自分がモラハラを受けている自覚がないことが多いのです。少しでも違和感を持ったり、自分ばかり我慢していると感じる場合は、前述でご紹介した「モラハラチェックリスト」を活用し、パートナーからのモラハラを疑うようにしましょう。
モラハラは、被害者や子どもの心に深く傷をつけます。取り返しがつかなくなる前に、両親や共通の知人、夫婦カウンセラー、弁護士に相談をして改善を試みましょう。それでもモラハラが続くようなら、別居や離婚を検討しましょう!
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