更新日: 2022.05.31
公開日:2020.07.20
「性格の不一致」で離婚する方法|慰謝料や進め方について解説

一度、パートナーとの間に性格の不一致を感じてしまうと、相手の嫌なところばかり気になってしまいますよね。そもそも結婚は失敗だった、という気持ちになってしまう方も少なくはないはず。
多くの夫婦を悩ませる「性格の不一致」ですが、これを理由に一方的に離婚をすることはできるのでしょうか。
この記事では、性格の不一致の具体例や離婚に陥るケース、性格の不一致の解消方法、また離婚をする場合の流れや方法、決めるべきことなどをご説明します。
~ この記事の監修 ~

わたしのみらい法律事務所
弁護士 渡邊 未来子
弁護士登録後に保育士資格を取得。養育費保証制度の相談会やセミナー、子ども食堂支援等を通じて、ひとり親家庭の支援活動を行っている。
1. 離婚理由によくある「性格の不一致」とは?

平成27年に公表された裁判所の司法統計では「離婚調停の申立て理由で、男女ともに「性格が合わない(性格の不一致)」が最も多い」という調査結果となりました。
このことより、「性格の不一致」が原因で離婚をする夫婦はかなり多くいることが伺えます。では「性格の不一致」とは具体的にどのようなことが当てはまるのでしょうのか。
性格が示す言葉の意味は実に幅広くあいまいなもの。明確な定義はありませんが、一例として以下のようなものが「性格の不一致」として挙げられます。
- 日常生活での価値観が合わない(食事の取り方、マナー、休日の過ごし方)
- 金銭感覚が合わない(お金の使い方、貯金など)
- 一方が几帳面でもう一方がずぼら(時間、掃除など)
- 喜怒哀楽を共有できない(共感してくれない、必要以上にリアクションを求められるなど)
- 政治思想や宗教観が異なる
- 子どもの教育方針が異なる
また、「離婚理由がはっきりしないが、これ以上一緒に生活をすることは難しい」という場合にも「性格の不一致」が離婚理由として扱われることが多くあります。
2. 性格の不一致が原因で離婚することはできる?

結論、夫婦で話し合い、両者ともに離婚に対して合意ができた場合に限り「性格の不一致」を理由に離婚することができます。相手が離婚に対して合意をしなかったり拒否をした場合は、調停を申し立てて離婚を試みることが一般的です。
なお「性格の不一致」を理由に一方的に離婚を成立させることは、通常できません。
一方的に離婚を成立させる場合には、離婚裁判を申し立てる必要がありますが、そもそも離婚裁判は、前段階として調停を申し立て、不成立となった場合でないと申し立てられません。
また、離婚裁判の際には「法的に認められる離婚の理由」が求められますが「性格の不一致」は、この法的に認められる理由にはならないのです。
「性格の不一致」で離婚をする際には「夫婦間での離婚の合意の有無」がポイントになります。ケース別に見ていきましょう。
2-1. お互いの合意がある場合は「協議離婚」
前述の通り、夫婦がお互いに離婚の合意をしていれば、性格の不一致を理由に離婚することができます。
夫婦の話し合いによる離婚(協議離婚)では「法的に認められる離婚の理由」は求められません。そのため、性格の不一致が理由であっても、夫婦間の合意があれば離婚を成立させることができるのです。
夫婦がお互いに合意の上で離婚届を作成し、お住まいの市区町村に離婚届を提出することで離婚が成立します。
2-2. 協議が進まない、合意が得られない場合は「調停離婚」
相手の同意が得られなかったり、話し合いをしても平行線になってしまう場合は、協議離婚は難しいでしょう。そのときは、家庭裁判所に調停を申し立て、調停離婚に臨みます。
調停では、調停委員という第三者を介して話し合いを行います。調停委員が、夫婦それぞれの言い分を取りまとめたり、折衷案を提示してくれたりするため、比較的冷静に話し合いを進めることができるでしょう。
調停が成立すると、調停内で決めた約束事が書面(調停調書)にされます。その後、お住まいの市区町村に離婚届を提出し、離婚が成立となります。
2-3. 法的な離婚理由がある場合は「裁判離婚」
調停でも離婚の折り合いがつかず不成立になった場合、裁判(訴訟)へと進みます。
裁判では、「離婚する」という判決が出れば相手の意思にかかわらず強制的に離婚が成立します。しかし、離婚裁判には法的な離婚理由が求められます。民法では、「法的に認められる離婚の理由」として以下の5つを定めています。
- 相手に不貞な行為があったとき
- 相手から悪意で遺棄されたとき(家出して生活の面倒も見ない等)
- 相手が3年以上生死不明なとき
- 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。
まず、性格の不一致は1から4の離婚理由には当てはまりません。また、5についても、性格の不一致があっても、離婚をせずに婚姻生活を継続させるケースは多くあります。
実際に、裁判所が「この夫婦間の「性格の不一致」は、婚姻生活を強制的に終了させるに値する」と判断することは難しいため、性格の不一致だけで法的な離婚理由として認められることは基本的にないのです。
ただし、性格の不一致がきっかけとなり、どちらかが1から4の離婚理由となる行為をした場合は、法的な離婚理由として認められる場合があります。
ほかにも、性格の不一致が原因で長期間別居しており、今から同居して婚姻生活を送るのはもう難しい、つまり、夫婦関係が破綻していると判断できる場合も、裁判で離婚が認められることになります。
3. 「性格の不一致」の具体例

「性格の不一致」に当てはまる離婚理由は、
- 価値観や考え方が違うことで衝突する
- 生活する時間帯にズレがあるためコミュニケーション不足に陥り、うまくいかなくなる
など、多岐に渡ります。
ここでは「性格の不一致」に当てはまる具体例をご紹介します。
3-1. 価値観が異なる
一口に価値観といっても、 様々な切り口があります。
例えば、このようなことが挙げられます。
- 自分が最も優先したいと思うこと(パートナーとの時間、趣味、仕事 など)
- 休日や自由な時間の過ごし方(家でゆっくりしたい、外出したい など)
- 生活する上での習慣(掃除・洗濯の頻度や方法、外食の頻度 など)
このような価値観の不一致は、たとえ些細なことだったとしても長期間にわたれば塵も積もれば山となります。パートナーに指摘したり、お互いに歩み寄ろうとしたのに改善されない場合は、かなりストレスになるでしょう。
3-2. 喧嘩が多い
お互いの性格や生活習慣、価値観の違いなどの違いから、喧嘩に発展する夫婦も珍しくありません。
喧嘩が多いということは、夫と妻の性格が合わず、それが我慢できないレベルだということの現れかもしれません。
喧嘩がコミュニケーションになっているようなカップルもいるかもしれませんが、あまりに多ければ、共同生活にも支障が出るはずです。
3-3. 金銭感覚が異なる
無駄遣いが多かったり、借金を繰り返したりする相手だと、家計にも影響が出かねません。
たとえ今は生活費に困っていなかったとしても、相手の浪費癖や借金の程度がひどい場合は、将来への不安から離婚を考えることもあるでしょう。
男性と女性でお金を使う目的は違う傾向がありますが、無駄遣いをする理由が、どうしても理解できない場合もあるかもしれません。
金銭感覚は個人の価値観のひとつですので、金銭感覚のズレも性格の不一致のひとつとなります。
3-4. どちらかが相手に合わせている
いくら夫婦でも元は他人ですから、価値観や考え方にズレはつきものです。話し合いやコミュニケーションで解決できることが理想ですが、そうはいかない夫婦も珍しくありません。
特に、どちらか一方が相手に合わせて我慢をしている場合は、耐え切れず離婚につながってしまうこともあります。
関係を壊したくないがために無理に相手に合わせることを続けていると、心も体も疲れてしまい、最終的に結婚生活の維持が難しくなる場合もあるでしょう。
4. 「性格の不一致」で離婚するときに決めること

「性格の不一致」が原因で離婚をする場合、夫婦で協議の上決めるべき項目がいくつかあります。
- 財産分与:婚姻期間中に形成した資産(家具や家財、車、不動産、貯金など)を分ける
- 親権者 :子どもがいる場合、子どもを監護養育する親を決める
- 養育費 :子どもがいる場合、親権を持たない片親が親権者に払う子どものための費用
- 面会交流:子どもがいる場合、親権を持たない片親が定期的に子どもと会うこと
それぞれの詳細は、この記事の最後にご紹介しています。是非ご覧ください。
5. 「性格の不一致」では基本的に慰謝料請求できない

性格の不一致で離婚した場合、その理由だけでは、原則として慰謝料の請求ができません。
なぜなら、慰謝料は、法律に反する行為をし、それによって与えた損害について責任を負うために支払われるものだからです。
お互いに性格が合わなかったとしても、性格自体はこれまでの人生の積み重ねで作られていくものです。そのため、性格自体が法律に反するとして、責任を負わせることはできません。お互いの性格が合わないことはどちらのせいとも言えませんから、慰謝料も発生しないことになります。
一般的には、性格の不一致を理由に慰謝料を請求することはできませんが、慰謝料を請求できる例外もあります。
6. 「性格の不一致」で慰謝料請求ができるケース

性格の不一致を理由に慰謝料を請求できる例外のケースとして、代表的な2つの例をご紹介します。
6-1. 相手が支払うことに同意した場合
裁判で、長期間の別居等により離婚自体が認められたとしても「慰謝料を支払うように」という判決は出ません。しかし、慰謝料を支払ってはいけないという判決が出るわけでもないのです。
そのため、協議離婚や調停離婚、裁判中に和解し成立する離婚(和解離婚)については、相手が離婚をスムーズかつ早く成立させるために、支払いに応じる場合もあります。このような場合は、相手さえ承諾すれば請求することができ、支払いを受けることができます。
ただ、その際に支払われるお金は、法律的に「慰謝料」ではありません。「解決金」という言葉が使われることが一般的です。これは「損害に対して支払う責任のあるお金」というよりは「問題を解決するためのお金」としての意味が強いためです。
「解決金」という言葉を使うことで、支払う側に「法律に反したことによる負うべき責任」がないことを証明するため、支払う側は対外的信用を失わずに済みます。
離婚問題を早く解決するために払ったものとして、マイナスイメージを与えることが少ないのです。 このような背景もあり、性格の不一致による離婚の場合は「解決金」の名目でお金が支払われることもあります。
6-2. 性格の不一致以外にも離婚原因がある場合
離婚の原因が「性格の不一致」だけでない場合は、他の原因に対して慰謝料が支払われることがあります。
例えば、
- 相手に浮気などの不貞行為があった
- 相手からDVやモラハラを受けていた
などが認められる場合は、行った側が慰謝料の支払いを行う必要があります。性格の不一致が原因でこれらが起こった場合でも、同様に慰謝料請求が認められるでしょう。
モラハラに関しては、ケースとしてはまだ多くはありませんが、状況や立証によっては、離婚原因と認められる場合も十分にあり得ます。
なお、慰謝料や解決金には、明確な相場はありません。 金額の折り合いがつかずに調停や裁判に進む場合、より費用や時間がかかります。このような手続きを進めるかは、今一度よく考えた方がいいでしょう。離婚問題に強い弁護士に相談してみるのもひとつの方法です。
7. 「性格の不一致」を解消する方法は?

性格の不一致に該当する問題が夫婦間に生じたとしても、すべての夫婦が離婚するわけではありません。性格の不一致を乗り越え、離婚を回避できる可能性も十分にあるのです。
ここでは、夫婦間の性格の不一致を解消するために参考になる方法をご紹介します。
7-1. 共感できるものや共通点を探してみる
相手と同じ体験をし、共感しあえるような共通点を見つけると良いでしょう。
例えば、以下のようなことが効果的です。
- バラエティ番組や映画、音楽などを鑑賞し、感想を言い合ってみる
- 相手の趣味を一緒に体験してみて、熱中する理由を探してみる など
どんな夫婦でも、なにかしら共感できることはあるはずです。
分かりあえずにイライラするよりも、分かりあえることを探した方が、お互いに楽しい時間が過ごせる上に、建設的でしょう。
7-2. コミュニケーションを取り、歩み寄る努力をしてみる
どんな夫婦でも相手に何らかの不満を抱えているものですが、離婚に至らない夫婦は多くいます。
性格の不一致があっても離婚に至らない夫婦は「お互いの不満に対して話し合うことで歩み寄り、前向きに解決を目指している」ことが多いようです。
パートナーの行動や言動に不満を感じたときは、このような流れで解決を図るとよいでしょう。
- そもそも、そのことになぜ不満に感じているのか、自分の中で理由を明確にする
- 自身が感じている不満やその理由を早めに相手に伝える
- 相手が、どうしてその行動や言動をとってしまうのか、理由や原因を一緒に考える
- 今後どのように改善すればいいか一緒に考える
不満が大きくならないように、お互いに話し合う時間を設けることが大切です。
こまめにコミュニケーションを取ることで、性格の不一致によるトラブルが解消できたり、トラブルになったとしても、関係修復が困難な事態に陥ることや離婚危機を回避できるでしょう。
7-3. 価値観は違うものと理解する
お互いに生まれ育った環境が違うため、夫婦の間で違いがあるのは当たり前です。全く同じ価値観を持つ人間に出会えること自体が珍しいでしょう。
そのため、お互いの価値観の違いを認めた上で理解し、可能な範囲で共感するよう心がけると、関係の悪化を回避することができる場合があります。
たとえば、夫が大事にコレクションしているプラモデルがあるとします。
もちろん妻側としては、夫が際限なくお金をつぎ込むことは許せません。であれば、1ヵ月間で趣味に使っても大丈夫な金額を、夫婦で事前に決めておく方法はどうでしょうか。夫が大切にしている趣味を尊重して、多少の出費は認めてあげるという提案です。
また、もう無理と感じていても、少し冷静になり、自分が変わってもいいかなと思えるところを考えてみましょう。また、今は相手の嫌なところで頭がいっぱいだったとしても、時間が経てば気にならなくなることもあるかも知れません。
婚姻生活を続けるためには、お互いに妥協しあうことも大切です。それを試してから離婚を考えてみても遅くはないはずです。
(まとめ)感情や勢いに任せないで!離婚を考えるときは冷静に。

性格の不一致で離婚するケースは決して珍しいことではありません。しかし、感情や勢いに任せて離婚してしまうと、後悔する可能性もあります。
仕事や住まいなどといった離婚後の生活はもちろん、子どものことも考えなければなりません。調停や裁判をするとなると、時間や費用、精神的な負担なども大きくかかります。まずは、性格の不一致の解消を試みることを検討してみるといいでしょう。
性格の不一致の解消が難しく、一緒に生活を送ることはやはり無理だと感じたら、離婚に向けて冷静に準備を進めていきましょう。
離婚を決意してから成立させるまで、おおまかに以下のような流れになります。
- 離婚後の生活を想定し、自分に必要な手続きや準備を洗い出す
- 離婚協議~成立までにやるべき手続きや準備など、大まかなスケジュール感を把握する
- 相手に離婚を切り出し、協議や調停などを進めていく
- 協議と並行して、自分に必要な手続きなどを進めていく
- 協議や調停が終わったら、市区町村に離婚届を提出する
自身だけで離婚手続きをすることに不安がある方は、弁護士や行政書士、離婚カウンセラーなどといった専門家への相談も検討すると良いでしょう。
また、離婚協議の際に取り決める内容について詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
(参考記事)離婚時の財産分与に税金はかかるの?課税される対象や金額とは
(参考記事)離婚時の年金分割制度とは?手続き方法・計算方法についても解説
(参考記事)親権ってどのように決まる?子どものために知っておきたい基礎知識
(参考記事)両親の離婚後、子供が抱く悩みや問題とは?離別した親と面会が必要な場合も
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