更新日: 2022.02.17
公開日:2021.07.27
産後クライシスで離婚する夫婦は多い?後悔しないための方法

子どもが生まれるまでは仲良し夫婦だったのに、産後に夫婦仲が急激に悪化する「産後クライシス」。
産後によくある一時的なものだと軽く捉えていると、数年のうちに離婚に至ってしまう、というケースは意外と少なくありません。ただ、産後クライシスから離婚に発展したものの、「離婚後にとても後悔した」という声が多いのも事実。
産後クライシスからどのように離婚へと発展するのでしょうか。またそれを回避する対策をご紹介します。
目次
1. 離婚の原因にもなっている!?産後クライシスとは

産後クライシス(産後うつ)とは、妻が出産後に夫に対する不安や不満が高まり、夫婦仲が急激に悪化することです。
具体的には、出産後から2年以内の時期に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況のことをいいます。産後、たくさんの夫婦が経験していますが、改善されないまま別居、ひいては離婚に発展する事例も多く見られます。
厚生労働省の調査によると「母子世帯になった時の末子の年齢(生別)」で一番多いのが0~2歳のとき。なんと39.6%も占めているのです(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より※)。
出産が離婚のひとつのきっかけになっているとも読み取ることができます。
※なお「父子世帯になった時の末子の年齢(生別)」で一番多いのは、3~5歳の時で27.5%。次いで0~2歳の時で21.9%。いずれも、末子の年齢が低い時の離婚が大部分を占めます。
2. なにが原因なの?

では、なぜ産後クライシスは起きるのでしょうか?
様々な要因が重なって、結果として産後クライシスに陥ることが多いようですが、主に次のような原因が考えられます。
2-1. 出産による女性ホルモンの変化
妻は妊娠・出産をきっかけに女性ホルモンのバランスが著しく変化します。ホルモンバランスの変化により、イライラして攻撃的になりやすいと言われているのです。
2-2. 育児の疲れ
言葉が話せない赤ちゃんは泣くしかありません。夜泣き、オムツ替え、授乳やミルク、寝かしつけなど、妻は24時間子育てします。睡眠も食事もろくに取れないことも多いため、夫のささいな言葉や行動にイライラしやすくなってしまいます。
一方、夫は「なんで妻はいつもこんなにイライラしているんだ」と不安を抱くようになってしまうのです。
2-3. 生活リズムの大きな変化
子どもが生まれると、夫婦二人だけの生活リズムとはがらりと変わって、子どもファーストの生活になります。
子どもが最優先なのは妻にとっては当たり前のことでも、夫にとってはどうでしょうか。男性は、徐々に父親としての自覚が芽生えていくといわれているので、いきなり自分だけ取り残されたような気持ちに陥り、夫婦間に溝ができやすくなります。
2-4. 夫が育児や家事に協力的でない
産後は育児だけでなく、家事も夫がサポートしなければ、妻の負担が大きくなってしまいます。
にもかかわらず「仕事が忙しい」「今までの生活スタイルを変えたくない」「疲れている」などという理由で育児や家事の手伝いをしなければ、妻は不満を持つに決まっていますよね。
夫婦喧嘩の頻度が増えて産後クライシスが悪化し、妻は離婚を視野に入れるようになってしまうかも…。
2-5. コミュニケーション不足
子どもが生まれるまでは2人の時間が当たり前のようにあったのに、産後は仕事をする夫と、自宅で赤ちゃんのお世話をする妻では、生活時間にずれが生じてきます。
お互いに話したいことがあっても「今度でいいかな」と溜め込んだまま、会話やスキンシップが少なくなってしまいます。
3. よくある事例は?

産後クライシスの原因は上記であげたように様々ですが、育児や家事に非協力的な夫に対するイライラや嫌悪感から、産後クライシスに陥る妻は多くみられます。
よくある具体的な事例をご紹介しましょう。
3-1. 体験談「仲良し夫婦だったのに、産後急に旦那が嫌いになって離婚に…」
共働きで旅行やお酒が趣味のAさん夫婦。独身時代はもちろん、結婚後も飲みに行ったり旅行したり、2人の生活を楽しんでいました。そして、そんな生活をめいっぱい満喫した後に、待望の第1子が誕生。
かけがえのない我が子を通して、家族としての絆がより深まり、幸せな家庭になると信じていたそうですが、産後クライシスという大きな危機が待っていました。
里帰り出産で、産後の1カ月健診までを実家で過ごしたAさん。実家では、実母が料理や掃除など家事をすべて担当してくれたので、Aさんは赤ちゃんのお世話だけにゆっくり専念できました。これから始まる赤ちゃんと夫の3人での新しい生活には、もちろん多少の不安はありましたが、それでもそんな生活を楽しみにしていました。
そして実家を離れて新生活がスタート。3時間以内にやってくる授乳と寝かしつけ、オムツ替えなどの子どもの世話、実家では母がしてくれていた家事…と、こなしているだけで、あっという間に1日が終わってしまいます。
出産前、共働きだったことから家事は夫と分担したそうですが、Aさんが育休中で自宅にいること、夫には子どもとの時間を少しでもたくさん過ごしてほしい、との思いから、家事のほとんどをAさんが担当していました。そうしているうちに、夫は家事を一切しなくなり、Aさんがすることが日常に。
実家では子どもが泣いていると、実母がさっと食卓を片付けてくれていたのに、Aさんが授乳して寝かしつけている間に、夫はただテレビを見ているだけ。授乳中で大好きなお酒も控えているAさんに対して、夫は休日でも「付き合いだから」と飲みに行きます。
また、「子どもとの時間を持ってほしい」とAさんが家事を率先して行っているのに、夫は子どもを外へ連れ出すこともなく、ソファに寝転がってテレビを見ながらスマホをいじっているだけ。
Aさんは、出産で自分の生活はがらりと変わったのに、ひとりだけ自由に生きている夫のことが段々と嫌になり喧嘩も増えるように…。出産前に思い描いていた理想の家族とはかけ離れた現実は、結局そのまま変わることはなく、産後クライシスを機に離婚へと話し合いは進んでいきました。
子どもが1歳半のときに離婚をしたAさん夫婦ですが、実は妻のA子さん、今となっては「離婚を早まり過ぎたかな…」と少し後悔している部分もあるそうです。
シングルマザーとして子どもを育てていくには、やはり金銭的・精神的な部分で苦労することが多いと話します。「産後クライシスから、夫のことが嫌でたまらなくなって離婚したけれど、経済的な部分も含めてしっかり考えたうえで、離婚は決断するべきだと思います。」
A子さんのように、産後クライシスから離婚へと発展したものの、その後に離婚を後悔するケースは少なくないのが現実なのです。
(参考記事)離婚の進め方とは?後悔しない離婚のための3つの方法と注意点
4. 産後クライシスを乗り越えるための方法は?

せっかく結婚して夫婦になったのだから、できることなら離婚の決断に至らないよう良好な関係を続けたいもの。産後クライシスを上手に乗り越えるためには、どんな方法があるのでしょうか。
4-1. 夫婦で話し合う時間を作る
妻は子どもと一緒に寝落ちしたり、睡眠不足でイライラしてしまう一方、夫は妻の大変さに気づきません。そうしているうちに、会話が少なくなり、ギスギスしてしまうというケースが多いのです。
まずはひとりで不安や不満、悩みを抱え込まないで、夫に今の状況を話したうえで、具体的にどういう風にしてほしいのかを話し合いましょう。
妻は夫に、夫は妻に、お互いが積極的に歩み寄ることで、産後クライシスによるすれ違いや価値観のずれを埋めることができます。
4-2. 言葉できちんと伝える
イライラしていると、「ありがとう」「ごめんね」のひと言さえも言葉にできなくなりがちです。
でも気持ちは、言葉にしてこそ相手に伝わるものです。とくに、「ありがとう」や「ごめんなさい」は、ささいなことでも言葉にしてきちんと伝えましょう。
産後クライシスでイライラしてしまうこともありますが、そのひと言があるだけで空気が和らぎ、お互いを思いやる気持ちが芽生えるはずです。
4-3. 役割分担を決めておく
特に第一子だと、初めての慣れない育児や家事に追われて、妻は疲れ果ててしまいます。
あらかじめ育児や家事の分担を夫婦で決めておくと、妻の負担が軽減され、「何をどう手伝えばいいのかわからない」という夫の不安や不満も回避できるでしょう。ただし、夫は役割分担さえこなせばいいのではなく、他にも率先して手伝うようにしましょう。
「食器洗いをした後、棚にしまう」「畳んだ洗濯物を保管場所にしまう」「ベッドカバーを整える」など目に見えない家事や育児はたくさんあるからです。
4-4. 夫が気をつけたい産後クライシスへの対処法
産後クライシスで変わり果てた妻に戸惑う夫は多いはずです。
しかし、産後は女性ホルモンの変化などもあり、妻本人の意思とは関係なく起こりうるもの。夫は、「どうしてこんなにも変わってしまったんだろう…」と思うのではなく、「産後はこういうものだ」と受け入れてあげることです。
妻がイライラしていても咎めたりせず、温かく見守りましょう。また、妻が赤ちゃんのお世話をしている間は、家事を済ませておくなど、自分ができることを積極的に探して実行すること。
ひとつ注意したいのが、「なにか手伝おうか?」というひと言。出産後の女性はデリケートなので、「手伝う?あなただって親でしょ?自分で見つけたら?」と逆ギレされてしまうケースはよく聞きます。
どうしても見つからないときは、「なにかできることある?」という聞き方をしたらいいでしょう。
4-5. 妻が気をつけたい産後クライシスへの対処法
女性は何もかもを自分ひとりで抱え込んでしまいがちですが、母親になったからといって育児も家事も完璧にこなす必要はありません。むしろ、夫や家族、友人、自治体のサービスなどたくさんの人の手を借りましょう。育児で悩んでいるなら、家族や友人はもちろん、自治体の相談窓口を利用するのもおすすめです。
また、思い切って子どもを預けてショッピングしてリフレッシュしたり、家事代行を利用して家事の負担を軽減したり、たまには自分の時間を持つようにしましょう。一時(いっとき)預かり保育や自治体のサービスを利用すれば予算を抑えられます。
5. 離婚に陥ってしまうケースは?

産後クライシスを理解し、しっかりと向き合い努力を重ねても、それでも修復不能な事例もあります。以下のような状況であれば、離婚することも検討していいかもしれません。
5-1. 夫の浮気
産後クライシスによるコミュニケーション不足やセックスレスから、夫が浮気するというケースは多くみられます。
遊びであれば、夫婦関係を修復することは可能かもしれませんが、夫が浮気相手に本気になっていたり、家庭を顧みないような状態が続いていたりするなら、夫婦の修復は厳しいでしょう。
5-2. DV、モラハラ
夫からのDVやモラハラがあるならば、離婚も視野に入れて検討しましょう。妻だけでなく、子どもに対しても虐待へと発展することもあるので、まずは信頼できる人や自治体の窓口で相談することです。
5-3. 生活費をもらえない
夫が生活費を入れてくれないことから、最低限度の生活を維持するのが厳しい場合は、離婚して行政からの助成金や養育費をもらったほうがいいケースもあります。
(参考記事)後悔しないために…離婚準備の知っておくべきことマニュアル
(まとめ)産後クライシスを正しく理解して離婚を防ごう

産後は子育てや家事など、毎日しなければならないことが多く、かなり負担がかかります。
自分の自由時間はおろか十分な睡眠時間すら取れない、としんどくなってしまったり、夫が何もしてくれない!といらだってしまうこともあるでしょう。
ですが、ご自身が抱えている不満や不安は、きちんと話さないと夫には伝わりません。自分の状況や考え、手伝ってほしいこと、改善してほしいことはきちんと夫に伝えるようにしましょう。
また、産後クライシスは誰にでも起こり得るものだということを、夫に理解してもらうことも大切です。早まって離婚をしてしまい、後々後悔・・・ということが無いように、できるだけお互いに寄り添い、支えあっていきましょう。
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