更新日: 2022.12.13
公開日:2021.07.27
産後クライシスで離婚する夫婦は多い?後悔しないための方法

子どもが生まれるまでは仲良し夫婦だったのに、産後に夫婦仲が急激に悪化する「産後クライシス」。
産後によくある一時的なものだと軽く捉えていると、数年のうちに離婚に至ってしまう、というケースは意外と少なくありません。ただ、産後クライシスから離婚に発展したものの、「離婚後にとても後悔した」という声が多いのも事実。
この記事では、そもそも産後クライシスとは何か、原因やどのように離婚へと発展してしまうのか、またそれを回避する方法や乗り越え方をご紹介します。
1. 離婚の原因にもなる「産後クライシス」とは?

産後クライシスとは、妻の出産後に夫への不安や不満が高まり、夫婦仲が急激に悪化することです。具体的には、出産後から2年以内の時期に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況のことをいいます。
たくさんの夫婦が産後クライシスを経験していますが、夫婦仲が改善されないまま別居、ひいては離婚に発展する事例も多くみられます。
厚生労働省の調査によると「母子世帯になった時の末子の年齢(生別)」で一番多いのが0~2歳のとき。なんと39.6%も占めているのです(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より※)。
出産が離婚のきっかけのひとつになっているとも読み取ることができます。
※なお「父子世帯になった時の末子の年齢(生別)」で一番多いのは、3~5歳のときで27.5%。次いで0~2歳の時で21.9%。いずれも、末子の年齢が低いときの離婚が大部分を占めます。
2. 産後クライシスの原因は?

では、なぜ産後クライシスは起きるのでしょうか?
様々な要因が重なって、結果として産後クライシスに陥ることが多いようですが、主に次のような原因が考えられます。
2-1. 出産による女性ホルモンの変化
妻は妊娠・出産をきっかけに女性ホルモンのバランスが著しく変化します。
急激なホルモンバランスの変化は、情緒不安定になったり、イライラして攻撃的になりやすいといった精神的な不調をもたらします。妊娠中は、胎児や母体を守るために女性ホルモンが多く分泌されますが、出産後、授乳期が終わるまで女性ホルモンの分泌はほぼゼロになるのです。
女性ホルモンの分泌は自身でコントロールできるものではないため、ホルモンバランスの変化によって起こるメンタルの不調は避けられません。
夫にこれらの理解が無い場合、妻と衝突し産後クライシスに陥ってしまうことにも頷けます。
2-2. 育児の疲れ
言葉が話せない赤ちゃんは泣くしかありません。夜泣き、オムツ替え、授乳やミルク、寝かしつけなど、妻は24時間子育てします。睡眠も食事もろくに取れないことも多く、時間的にも気持ち的にも余裕なんてありません。
常にそんな状況であるが故に、出産する前は気にならなかった夫の言葉や行動など些細なことが気になってしまい、イライラしやすくなってしまいます。
一方、夫は「普段通り過ごしているのに、どうして妻はいつもこんなにイライラしているんだ」と不安を抱くようになり、すれ違いから産後クライシスに陥ってしまうのです。
2-3. 生活リズムの大きな変化
子どもが生まれると、夫婦二人だけの生活リズムとはがらりと変わって、子どもファーストの生活になります。子どもが最優先なのは妻にとっては当たり前のことでも、夫にとってはどうでしょうか。
男性は、徐々に父親としての自覚が芽生えていくといわれています。そのため、いきなり自分だけ取り残されたような気持ちに陥り、夫婦間に溝ができやすくなり、やがて産後クライシスへと陥ってしまうのです。
2-4. 夫が育児や家事に協力的でない
産後は育児だけでなく、家事も夫がサポートしなければ、妻の負担が大きくなってしまいます。
にもかかわらず「仕事が忙しい」「今までの生活スタイルを変えたくない」「疲れている」などという理由で育児や家事の手伝いをしなければ、妻は不満を持つに決まっていますし、愛情も冷めてしまうでしょう。
夫婦喧嘩の頻度が増えて産後クライシスが悪化し、妻は離婚を視野に入れるようになってしまうかも…。
2-5. コミュニケーション不足
子どもが生まれるまでは2人の時間が当たり前のようにあったのに、産後は仕事をする夫と、自宅で赤ちゃんのお世話をする妻では、生活時間にずれが生じてきます。
お互いに話したいことがあっても「今度でいいかな」と溜め込んだまま、会話やスキンシップが少なくなってしまいます。
気づいたら夫婦間で完全に会話が無くなって産後クライシスになっていた、なんてことも。
3. 産後クライシスと産後うつの違い

「産後うつ」は、産後クライシスと同様に、産後に起こる深刻な問題としてよく取り上げられる言葉です。しかし、意味は全く違います。
産後クライシスは、夫婦関係が妻の出産をきっかけに冷え切ってしまった状況のことを指します。しかし、産後うつは、産後の妻に発症する可能性があるうつ病のことを指します。
意味 | 特徴 | |
産後クライシス | 妻の出産後から2年以内に、夫婦関係が急激に冷え込む状況のこと | 病気ではなく、あくまで夫婦間の状況のことを指す |
産後うつ | 子育てへの不安やストレスなど、様々な要因で出産後1~2ヵ月目の妻に発症するうつ病のこと | れっきとした病気のため、医師の診療が必要 |
4. 産後クライシスを乗り越えるための方法は?

せっかく結婚して夫婦になったのだから、できることなら離婚の決断に至らないよう良好な関係を続けたいもの。産後クライシスを上手に乗り越えるためには、どんな方法があるのでしょうか。
4-1. 夫婦で話し合う時間を作る
妻は子どもと一緒に寝落ちしたり、睡眠不足でイライラしてしまう一方、夫は妻の大変さに気づきません。そうしているうちに、会話が少なくなり、ギスギスしてしまうというケースが多いのです。
まずはひとりで不安や不満、悩みを抱え込まないで、夫に今の状況を話したうえで、具体的にどういう風にしてほしいのかを話し合いましょう。
妻は夫に、夫は妻に、お互いが積極的に歩み寄ることで、産後クライシスによるすれ違いや価値観のずれを埋めることができます。
4-2. 言葉できちんと伝える
イライラしていると「ありがとう」「ごめんね」のひと言さえも言葉にできなくなりがちです。
でも気持ちは、言葉にしてこそ相手に伝わるものです。特に「ありがとう」や「ごめんなさい」は、ささいなことでも言葉にしてきちんと伝えましょう。
産後クライシスでイライラしてしまうこともありますが、そのひと言があるだけで空気が和らぎ、お互いを思いやる気持ちが芽生えるはずです。
4-3. 役割分担を決めておく
特に第一子だと、初めての慣れない育児や家事に追われて、妻は疲れ果ててしまいます。
あらかじめ育児や家事の分担を夫婦で決めておくと、妻の負担が軽減され、「何をどう手伝えばいいのかわからない」という夫の不安や不満も回避できるでしょう。ただし、夫は役割分担さえこなせばいいのではなく、他にも率先して手伝うようにしましょう。
「食器洗いをした後、棚にしまう」「畳んだ洗濯物を保管場所にしまう」「ベッドカバーを整える」など目に見えない家事や育児はたくさんあるからです。
妻側も、何をしたらいいのかわからない夫に対して「自分で考えてほしい」「やり方くらい自分で考えるなり調べるなりしてほしい」と突っぱねず、一度手順を詳細に教えてあげるようにしましょう。
予め妻側が望んでいることをきちんと伝えておけば、妻側がやってほしかったことと夫側がやったことにズレが発生することが無くなる上、一度教えてしまえば今後同じような状況でも率先して手伝ってくれるようになるかもしれません。
5. 離婚を未然に防ぐための産後クライシス対処法《夫編》

産後で変わり果てた妻の態度に戸惑う夫は多いはずです。しかし、産後は女性ホルモンの変化などもあり、妻本人の意思とは関係なく起こりうるもの。「どうして妻はこんなにも変わってしまったんだろう」と思ってしまうと、産後クライシスへと歩みを進めてしまいます。
夫側ができる産後クライシスを回避するポイントは、
- 産後クライシスはなぜ発生してしまうのかを正しく理解すること
- 妻の態度に対して「産後はこういうものだ」と受け入れてあげること
です。妻がイライラしていても咎めたりせず、温かく見守りましょう。
また、妻が赤ちゃんのお世話をしている間は、家事を済ませておくなど、自分ができることを積極的に探して実行するようにしましょう。ひとつ注意したい点は「なにか手伝おうか?」というひと言。
出産後の女性はデリケートなので、「手伝う?あなただって親でしょ?自分で見つけたら?」と逆ギレされてしまうケースはよく聞きます。どうしても見つからないときは、「なにかできることある?」という聞き方をしたらいいでしょう。
6. 離婚を未然に防ぐための産後クライシス対処法《妻編》
女性は何もかもを自分ひとりで抱え込んでしまいがちですが、母親になったからといって育児も家事も完璧にこなす必要はありません。夫や家族、友人、自治体のサービスなどに頼ってもいいのです。
自分が限界を迎える前に、人の手を借りるようにしましょう。育児で悩みごとがあるなら、家族や友人はもちろん、自治体の相談窓口を利用するのもおすすめです。
また、思い切って子どもを預けてショッピングしてリフレッシュしたり、家事代行を利用して家事の負担を軽減したり、たまには自分の時間を持つようにしましょう。一時(いっとき)預かり保育や自治体のサービスを利用すれば予算を抑えられます。
7. 産後クライシスから離婚に陥ってしまうケースは?

産後クライシスを理解し、しっかりと向き合い努力を重ねても、夫婦関係が修復できず離婚へ至る事例もあります。 以下のような状況であれば、離婚することも検討していいかもしれません。
なお、以下の3つの事例で離婚をする場合、相手に慰謝料を請求できるケースがあります。慰謝料請求を検討する場合は、弁護士などといった専門家に相談することをおすすめします。
7-1. 離婚に陥るケース①夫の浮気
産後クライシスによるコミュニケーション不足やセックスレスから、夫が浮気するケースは多くみられます。
遊びであれば、夫婦関係を修復することは可能かもしれませんが、夫が浮気相手に本気になっていたり、家庭を顧みないような状態が続いていたりするなら、夫婦関係の修復は厳しいでしょう。
結果、離婚をする夫婦も多いようです。
7-2. 離婚に陥るケース②DV、モラハラ
夫からのDVやモラハラがあるならば、離婚も視野に入れて検討しましょう。
妻だけでなく、子どもに対する虐待へと発展することもあります。最悪の場合、母子ともに命にかかわる事態になりかねません。
まずは、信頼できる人や自治体の窓口に相談しましょう。
7-3. 離婚に陥るケース③生活費をもらえない
夫が家庭に生活費を入れてくれず最低限度の生活すら維持するのが厳しい場合、離婚に踏み切ることが多いようです。
十分な生活費がないと、子どもへ十分な食事や衣類などを準備することができず健康面にも影響を及ぼすでしょう。離婚して行政からの助成金や養育費をもらったほうがいいケースもあります。
(参考記事)後悔しないために…離婚準備の知っておくべきことマニュアル
8. 体験談「産前は仲が良かったのに……」

産後クライシスの原因は上記であげたように様々ですが、育児や家事に非協力的な夫に対するイライラや嫌悪感から、産後クライシスに陥る妻は多くみられます。
よくある具体的な事例をご紹介しましょう。
◇「仲良し夫婦だったのに、産後急に旦那が嫌いになって離婚に…」
共働きで旅行やお酒が趣味のAさん夫婦。独身時代はもちろん、結婚後も飲みに行ったり旅行したり、2人の生活を楽しんでいました。
そして、そんな生活をめいっぱい満喫した後に、待望の第1子が誕生。かけがえなのない我が子を通して、家族としての絆がより深まり、幸せな家庭になると信じていたそうですが、産後クライシスという大きな危機が待っていました。
里帰り出産で、産後の1ヵ月健診までを実家で過ごしたAさん。実家では、実母が料理や掃除など家事をすべて担当してくれたので、Aさんは赤ちゃんのお世話だけにゆっくり専念できました。これから始まる赤ちゃんと夫の3人での新しい生活には、もちろん多少の不安はありましたが、それでもそんな生活を楽しみにしていました。
そして実家を離れて新生活がスタート。3時間以内にやってくる授乳と寝かしつけ、オムツ替えなどの子どもの世話、実家では母がしてくれていた家事と、こなしているだけであっという間に1日が終わってしまいます。
出産前、共働きだったことから家事は夫と分担したそうですが、Aさんが育休中で自宅にいること、夫には子どもとの時間を少しでもたくさん過ごしてほしい、との思いから、家事のほとんどをAさんが担当していました。そうしているうちに、夫は家事を一切しなくなり、Aさんがすることが日常に。
実家では、子どもが泣いていると実母がさっと食卓を片付けてくれていたのに、夫はただテレビを見ているだけ。授乳中で大好きなお酒も控えているAさんに対して、夫は休日でも「付き合いだから」と飲みに行きます。
また、「子どもとの時間を持ってほしい」とAさんが家事を率先して行っているのに、夫は子どもを外へ連れ出すこともなく、ソファに寝転がってテレビを見ながらスマホをいじっているだけ。Aさんは、出産で自分の生活はがらりと変わったのに、ひとりだけ自由に生きている夫のことが段々と嫌になり喧嘩も増えるように…。
出産前に思い描いていた理想の家族とはかけ離れた現実は、結局そのまま変わることはなく夫婦間の中は冷え込み、産後クライシスを機に離婚へと話し合いは進んでいきました。
子どもが1歳半のときに離婚をしたAさん夫婦ですが、実は妻のA子さん、今となっては「離婚を早まり過ぎたかな」と少し後悔している部分もあるそうです。シングルマザーとして子どもを育てていくには、やはり金銭的・精神的な部分で苦労することが多いと話します。
「夫のことが嫌でたまらなくなり、産後クライシスを機に離婚したけれど、自分が感じたことや手伝ってほしかったことをきちんと伝えるなど、もっとコミュニケーションをとるべきでした。それに、経済的な部分も含めてしっかり考えた上で、離婚は決断するべきだと思います。」
A子さんのように、産後クライシスから離婚へと発展したものの、その後に離婚を後悔するケースは少なくないのが現実なのです。
(参考記事)離婚の進め方とは?後悔しない離婚のための3つの方法と注意点
(まとめ)産後クライシスを正しく理解して離婚を防ごう

産後は子育てや家事など、毎日しなければならないことが多く、かなり負担がかかります。
自分の自由時間はおろか十分な睡眠時間すら取れない、としんどくなってしまったり、夫が何もしてくれない!といらだってしまうこともあるでしょう。
ですが、ご自身が抱えている不満や不安は、きちんと話さないと夫には伝わりません。自分の状況や考え、手伝ってほしいこと、改善してほしいことはきちんと夫に伝えるようにしましょう。
また、「産後クライシスは誰にでも起こり得るものだ」ということを、夫に理解してもらうことも大切です。早まって離婚をしてしまい、後悔することが無いように、できるだけお互いに寄り添い、支えあっていきましょう。
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