更新日: 2023.02.24
公開日:2023.02.24
シングルマザーの実態って?ひとり親になる方が知っておくべきこと

近年、日本では夫婦の3組に1組が離婚していると言われており、シングルマザー世帯は120万世帯を超えています。
子どものいる女性が離婚を考えたとき、離婚後に今よりも幸せな暮らしができるのか、また、シングルマザーとなった後の仕事や収入、子育てはどうしているのか…。シングルマザーの実態が気になるところですよね。
離婚前の段階でシングルマザーの実態を知っておくと、今後の生活がイメージしやすくなり、離婚に向けて冷静に備えることができるでしょう。
この記事ではシングルマザーの実態をご紹介します。
1. シングルマザーの実態①生活費ってどのくらい?

ひとり親家庭の生活費は、個々の生活水準に応じて、また子どもが何人いるかによっても大きく変わります。子どもの数が増えれば、住まいも広さが必要になり家賃は上がりますし、食費や水道・光熱費、習い事や学費などの教育費もかさみます。
生活費と言っても一概には言えませんが、一体どれくらいかかるのでしょうか?
1-1. 子ども1人の場合の生活費は?
ここでは、小学生の子どもが1人いる場合で生活費をシミュレーションしてみましょう。
かかる費用 | 月額 |
---|---|
家賃 | 60,000円 |
食費 | 30,000円 |
水道・光熱費 | 15,000円 |
通信費 | 10,000円 |
給食費 | 5,000円 |
習い事 | 10,000円 |
日用品 | 3,000円 |
衣類 | 5,000円 |
レジャー費・交際費 | 10,000円 |
合計 | 148,000円 |
住む場所によって家賃は変わってくると思いますが、1カ月の生活費として約15万円は必要になってくるでしょう。
子どもの年齢が上がれば、塾や習い事、携帯代、お小遣いなどもプラスになってきます。
(参考記事)シングルマザーに必要な生活費はいくら?安定した生活を送るためのポイント
1-2. 平均家賃はいくら?
母子家庭の月額家賃は、全国平均で約5万円とされています。ただし、首都圏は全国平均よりも2万円ほど高くなります。
一般的に家賃は年収の20%以内が目安と言われており、これを超えると家計を圧迫してしまいます。物件選びのときには注意が必要です。
また、母子家庭は、仕事の収入以外にも自治体からの助成金や手当が受け取れます。
助成金や手当、元パートナーから養育費を受け取る場合は、これらも収入扱いされるため、自身の収入と合わせて家賃を算出するといいでしょう。
(参考記事)シングルマザーは賃貸を借りられる?~入居審査やお金の問題について~
2. シングルマザーの実態②仕事は?年収は?

シングルマザーや母子家庭というと、「収入が少ない」とイメージする人は少なくないかもしれません。
実際のところ、仕事や年収の現状はどうなのでしょうか?
2-1. 母子家庭の平均年収額は?
厚生労働省の調査によると、母子家庭の労働による年収の平均は約200万円。月額に換算すると約16.6万円になります。これに、自治体の助成金や元パートナーからの養育費を含めた平均年間収入は243万円。
一方、父子家庭の平均就労年収は398万円、年間収入は420万円ですので、母子家庭の年収の低さが目立ちます。
母子世帯 | 父子世帯 | |
---|---|---|
平均年間就労収入 | 200万円 | 398万円 |
平均年間収入 | 243万円 | 420万円 |
2-2. シングルマザーの就業状況は?パートが多い?
シングルマザーの就業率は8割程度と言われていますが、就業状況はどうなっているのでしょうか。
厚生労働省の調査(平成28年度全国ひとり親世帯調査結果)によると、正規雇用で働くシングルマザーは44.2%と5割を下回っています。
一方、パート・アルバイトなどの非正規雇用の割合は43.8%とほぼ同率。パートやアルバイトだけで子どもを育て上げる人もたくさんいる、ということになります。
2-3. シングルマザーが働きやすい仕事は?
資格がなくても働ける看護助手や、未経験OKの求人も多い介護士など、医療・介護系の職種はシングルマザーが就職しやすい仕事でしょう。
また、シフト制で子どもの学校行事にも対応しやすい接客・販売系の仕事は、正規雇用は少なくても、派遣社員や契約社員、パートとして採用されることの多い職種です。
ほかにも事務系の仕事は、正社員・派遣社員・契約社員など採用の幅が広いため、シングルマザーから人気があります。
3. シングルマザーの実態③子育てはどう乗り越える?

夫婦二人なら子育ても分担できますが、シングルマザーになるとやはりワンオペ育児による大きな負担は避けられません。
仕事や家事をひとりでこなさなければならない母子家庭ですが、いくら大変だからといっても、子どもをほったらかしになんかできませんし、愛情いっぱいで育ててあげたいと思いますよね。
ここでは仕事と子育ての両立を叶えるためのポイントをご紹介します。
3-1. 1日30分でいいから子どもと向き合う
シングルマザーの多くが最も気にかけているのが、「子どもに寂しい思いをさせたくない」ということでしょう。
確かに、仕事も家事も子育ても、自分1人でやらなければならないため、余裕も時間もありません。だからといって、子どもをおざなりにすることは決してできませんよね。
子どもへの愛情は、一緒にいる時間に比例するわけではありません。1日30分でいいから、一緒に遊んだりおしゃべりしたり、スキンシップを取ったりなどと、子ども向き合う時間をもつように心がけましょう。
余談ですが、幼少期に親から愛情を十分に受けられなかった場合、発達に悪い影響を及ぼすと言われています。
例えば、「自分の気持ちを塞ぎこんでしまう」「楽しいと感じることがなかなかできない」「他者と親密な関係を築くことができない」などといった特徴が表れ、心理学的には、アダルトチルドレンとも呼ばれることもあるようです。
子どもの健やかな成長のためにも、親子間のコミュニケーションは重要であることがわかりますね。
3-2. 両親やママ友など頼れる人をつくっておく
子どもの体調が悪くて保育園や学校から急に呼び出しがかかったり、仕事が急きょ残業になってしまったり…。
そんないざというときに、両親に限らず、ママ友など頼める人をつくっておくと安心です。
「シングルマザーだから周りに迷惑をかけないようにしないと…」「全部ひとりでこなさないと…」と思いつめないでください。思い切って誰かに頼る勇気も大切です。
3-3. 自治体のサービスを活用する
保育園や学童保育を利用している人は多いですが、熱があると預かってもらえないことも…。地域の病児保育などに事前に登録しておくと安心して働くことができます。
地域によっては、自宅で子どもの面倒をみてくれたり、家事代行までしてくれたりするホームヘルパーのサービスなどがあったり、シングルマザー家庭の場合は利用料金が安くなったりする場合がありますので、上手に活用するといいでしょう。
4. 母子家庭を支援する手当てと助成金

近年、離婚に限らず、婚姻しないで子どもを出産する人も増えてきていることから、母子家庭への支援制度は整ってきています。
国や地方自治体から、どのような手当てを受け取れるのでしょうか。各自治体によっても異なりますが、ここでは主なものをご紹介します。
4-1. 児童手当
児童を養育している人が受け取ることができる手当です。
「夫婦のうち、高いほうの所得が一定以上だと受給対象外」といった収入制限はありますが、母子家庭に限らず、全ての子育て世帯を対象としています。
この制度を知らなかった、または受け取っていないという方は、お住まいの自治体のホームページにて詳細をご確認ください。
・支給対象者
母子家庭および父子家庭で、0歳~18歳に達して最初の3月31日までの年齢の子ども
・支給額(月額)
支給対象者の年齢 | 支給額/1人 |
---|---|
3歳未満 | 15,000円 |
3歳~小学校修了前 | 10,000円 (第3子以降は月額15,000円) |
中学生 | 10,000円 |
※受給者の所得額が所得制限限度額以上のとき、1人あたり5,000円の支給
4-2. 児童扶養手当
母子家庭や父子家庭などひとり親家庭の子どものために、地方自治体から支給される手当です。離婚でも死別でも理由は問われません。
※受給条件として、自治体によって定められた所得制限があります。
・児童扶養手当の支給月額
子どもの人数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
子どもが1人 | 43,160円 | 43,150円~10,180円 |
子どもが2人 | 53,350円 | 53,330円~15,280円 |
子どもが3人 | 59,460円 | 59,430円~18,340円 |
※子ども3人目以降は、1人につき全部支給の場合6,110円、一部支給の場合6,100円~ 3,060円ずつ追加
※所得額が制限額を超えた場合は支給されなくなります。
4-3. 児童育成手当
18歳までの子どもを扶養するひとり親家庭が対象で、児童1人につき月額13,500円が支給されます。
※受給条件として、自治体によって定められた所得制限があります。
4-4. 母子家庭の遺族年金
夫もしくは妻が死亡した場合に受け取ることができる年金です。
※加入している社会保障制度・家族構成によって受け取れる金額が異なります。
4-5. 母子家庭の住宅手当
母子家庭で20歳未満の子どもを養育している世帯主で、月額10,000円を超える家賃を払っている人が対象です。
支給条件は各自治体によって異なりますが、平均で5,000円~10,000円を受け取ることができます。自治体によって実施していない場合があるので、詳細はお住まいの自治体にお問い合わせください。
4-6. 生活保護
最低限度の生活を保障するために、その程度に応じて世帯単位で生活保護費が支給されます。受給金額は、各自治体や家族構成により異なります。
生活保護を受給すると、生活に必要な費用をはじめ、医療費や介護費、教育費の扶助を受けることができますが、子供の将来のために貯金をしたり、資産が持つことができないといったデメリットもあります。
生活保護は、最後の手段と考えておくのがいいでしょう。
4-7. ひとり親家族等医療費助成制度
母子家庭を対象に、世帯の保護者や子どもが医療を受けた際、健康保険自己負担分を助成する制度です。詳細は各自治体によって異なります。
4-8. その他・所得税、住民税の減免制度
- 国民年金
- 国民健康保険の免除
- 交通機関の割引制度
- 粗大ごみ等処理手数料の免除制度
- 上下水道の減免制度
- 保育料の免除と減額
などといった様々な減免制度があります。
上記に上げたものは一例ですので、実施の有無はお住まいの自治体にお問い合わせください。
(参考記事)母子家庭が使える手当や補助ってなに?手当と申請方法を紹介
5. 離婚前にやっておくべきことは?

離婚後の生活に向けて、離婚前に様々な準備をしておくことはとても大切なこと。大きく分けると、お金、住む場所、仕事の3つです。
5-1. お金の準備・お金の取り決め
今後の生活の目途を立てるためにもお金は必要不可欠。自己資金があると心強いですが、財産分与や年金分割、離婚後には子どもの養育費、場合によっては慰謝料も受け取ることができます。
「一刻も早く離婚したい」という感情からお金のことをうやむやにしてしまうケースも多いですが、離婚前にしっかり決めておくことが大切です。
また、離婚後の生活費はもちろんですが、初期費用として引っ越し代や家電・家具などの資金も準備しておきましょう。
5-2. 離婚前に取り決めておくべきお金とは?
<財産分与>
たとえ自身が専業主婦(夫)であったとしても、法律上「婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は名義にかかわらず夫婦共有のもの」という考え方があります。
この考え方より、預貯金や株などの有価証券、不動産など婚姻中に増えた夫婦の共有財産は、離婚の際に分配することができます。
なお、婚姻前に形成した財産は分与の対象外になるため、注意が必要です。
<年金分割>
年金分割とは、離婚後に配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割して受け取れる制度です。あくまでも、将来受け取れる年金が増える、というものですので、すぐには受け取ることができません。
なお、年金分割を受けるためには、年金事務所等での手続きが必要です。離婚した翌日から2年が経過した場合は請求することができなくなってしまうため、期限には十分注意しましょう。
(参考記事)離婚時の年金分割制度とは?手続き方法・計算方法についても解説
<養育費>
子どもを監護している親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。
一般的に、養育費の金額は2人の収入に応じて、家庭裁判所の養育費算定表にしたがって決まります。算定表によると、受取人の年収が扶養内で支払者の年収が400~600万の場合、子ども1人あたり4~6万円程度が相場です。
ただし、子どもの人数や年齢、受取人及び支払人が会社員か自営業かなどでも大きく変わってきます。
(参考記事)養育費の相場ってどれくらい?未払いを防止する方法ってあるの?
<慰謝料>
不倫やDVなど離婚の原因が相手方にある場合は、慰謝料を請求することができます。性格の不一致など、どちらか一方が悪いとは言えない場合は、慰謝料を受け取ることができません。
(参考記事)離婚慰謝料の基礎知識|原因・相場・決め方などを解説
5-3. 住まいの確保
離婚をするとなると、現在の家を出て新居に引っ越すケースが多いでしょう。スムーズに新生活を始められるよう、どれくらいの予算でどこに住むのかをしっかり考えておくことが大切です。
母子家庭なら、公営住宅に優先的に入居できる自治体などもありますし、自治体によって助成内容も異なるのでよく検討しましょう。
こちらの記事では、シングルマザーの方が物件を探す際のポイントや活用できる支援制度を紹介しています。是非参考にしてみてください。
(参考記事)離婚したいけど行くところがない!離婚後の「家探し・お金」など生活問題を解説|PaMarry(パマリー)
5-4. 仕事の準備
職に就くことは、生計を立てるためにも子どもの親権をとるためにも、必要不可欠といっても過言ではないでしょう。
正社員で働いていればそんなに影響はないかもしれませんが、専業主婦で長く仕事の現場を離れていると、職に就くのは大変なことです。就職エージェントや女性向けの転職サイトなどを活用し、早い段階から計画的に就職活動を行いましょう。
6. 体験談「離婚後、母子家庭になって」

お子さんが1歳のときにシングルマザーになったという東京都内在住のKさん。
現在、お子さんは小学生ですが、仕事のこと、生活のこと、シングルマザーになってよかったことなどを聞いてきました。
6-1. 離婚後に転職。現在も正規雇用
「前夫とは、妊娠中から前夫の度重なる浮気と性格の不一致で離婚を決めました。
当時子どもはまだ1歳で育休中でしたが、メディア関係の職場で時間も不規則だったので、シングルで仕事と育児の両立は厳しいと思い、離婚を機に転職をしました。
その後、何回か転職をしましたが、安定した収入が欲しかったのと、キャリアをそれなりに積みたかったので、現在もフルタイムの正規雇用で働いています。就労年収は、最低400万円はキープしたいなと。
でも9時から18時までの定時だと、やっぱり子どもとの時間が少なくなってしまうのは事実です。」
6-2. 子育ては自治体の制度に頼りっぱなし
「保育園に19時までにお迎えに、と思っても、なかなかそううまくはいかないことも多く…。自治体のシングルマザーの助成支援でホームヘルパーを週に数回無料でお願いできたので、小学校低学年までは利用していました。
ヘルパーさんに園までお迎えに行ってもらって、私が帰宅するまで自宅でみてもらえるんです。平日22時までみてもらえたのはとても助かりました。
小学生になると学童を利用しましたし、段々1人でお留守番するようにもなりました。」
6-3. 離婚してよかったこと
「離婚前は話し合いさえもまともにできなかったけど、だからこそ離婚後は笑って話せるような関係になろう、と最初に前夫と決めていたんです。
だから、今でもふつうに3人で一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったりも。それは、子どもにとっても私にとってもよかったなと。
ひとり親だと、どうしても考え方が偏ってしまったり、子どもも窮屈に思ったりするところがあるかもしれないので、逃げ場がなくなったときや何かあったときに、前夫には頼れる存在であってほしいなと思っています。」
6-4. 離婚して一番大変だと思うこと
「生活するために外で働いて稼いでくるという役割が大きいだけに、子どもと接する時間が少なくなってしまうので、その分子どもへの負荷がかかってしまうなと思います。
まだ小学生なのに、迷惑をかけないようにと思ったり、自分の欲求を我慢していたり…。母親としてもっとふつうにできたらなって思うことはあります。」
6-5. 離婚を考えている人にひと言
「離婚ってそのときの感情でそのまま話が進んだりするのですが、シングルマザーになるということは、子どものこと、お金のこと、仕事のことなど、切実な問題がたくさんあります。
親権は、基本的には経済力のある方が取るので、就業していないならば、アルバイトをしたり資格を取ったりして、収入が見込めるようにしなければいけません。実際、私もそうしてきました。
周りにいる人の意見に耳を傾けて、よくよく考えてから決断した方がいいと思います。決断したならば、地域の助成制度などを調べて、子育てしやすい環境を整えましょう!」
(まとめ)備えあれば憂いなし!明るい未来を手にしましょう

シングルマザーの実態や、シングルマザーになるために備えておくべきことはおわかりいただけましたか?
実際に社会でがんばるシングルマザーの話を聞き、経済面や実生活のイメージも湧いたのではないでしょうか。やはり、シングルマザーひとりで家計を担っていくのは厳しいのが現実です。
しかし、前もってシングルマザーの実態を知っておくだけでも心構えができるものです。厳しいこともたくさんあると思いますが、離婚度の生活に向けてきちんと備えて、明るい未来を手にしましょう。