更新日: 2022.02.15
公開日:2022.02.08
養育費を減額したいと言われた!離婚後に減額が認められる条件って?

お互いに合意の上で養育費を取り決め離婚をしたとしても、後々相手方から養育費を減額したいと交渉されるケースがあります。
ここでは、養育費の減額が認められる条件や、減額請求された場合の対応方法、減額調停を申し立てられたときの流れをご紹介します。この記事を読めば、実際に相手方から相談を持ち掛けられたときに具体的に何をするべきかがわかり、前向きな気持ちで交渉を進められるようになるでしょう。
~ この記事の監修 ~

青野・平山法律事務所
弁護士 青野 悠
夫婦関係を解消する場合、財産分与・養育費など多くの問題が付随して発生しますので、これらの問題を全体的にみて、より望ましい解決になるよう尽力します。
1. 条件次第では養育費の減額が認められる

離婚時にお互い合意の上で養育費の金額を決めたとしても、離婚後には養育費を支払う側の生活環境が変わる可能性もあります。そのため、養育費の減額を相談されるケースもあるでしょう。
いったん決めた養育費を減額することは、不可能ではありません。条件次第ですが、減額が認められることもあります。
たとえば、支払い側の経済状況が悪化したり受け取る側の経済状況が改善したりしたケースです。もちろん、条件によっては減額が認められないこともあります。ここからは、減額が認められるケースと認められないケースを具体的に解説します
2. 養育費の減額が認められるケース

養育費の金額を決める基準の1つは支払い側・受け取る側の年収です。
そのため、離婚した後に支払い側の年収が減った、あるいは受け取る側の年収が増えたときなどは、養育費の減額が認められることがあります。
そのほか、どちらかが再婚して新たに扶養すべき子ができたとき、あるいは再婚相手の子と養子縁組をしたときなども、養育費の金額に影響する可能性があります。ケース別に詳しく見ていきましょう。
2-1. 支払う側の収入が減った
離婚してから養育費の支払いが終わるまでの間に、養育費を支払う側が勤めていた会社を退職したり、転職する場合があります。
昨今では、新型コロナウイルスの影響で勤務先からリストラされてしまったり、ひいては会社が倒産する可能性もゼロではありません。また、予期せぬ怪我や病気で働けなくなることもありえます。
支払う側の収入が大幅に減ったり、なくなってしまった場合には、支払う側の収入額に応じて養育費の減額が認められる可能性があります。
2-2. 支払う側の扶養家族が増えた
支払う側が再婚して、新しい配偶者ができたり子どもが誕生したとしましょう。すると、支払う側には、再婚相手や生まれた子どもを扶養する義務が発生します。
それだけ支払う側の経済的負担が増えるため、それを理由に減額請求が認められる可能性があります。
支払う側の再婚相手に連れ子がいて養子縁組した場合も、同じく減額請求が認められる可能性があります。
2-3. 受け取る側(親権がある)が再婚した
養育費を受け取っている側が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組したとしましょう。
このとき、再婚相手が子どもの第1次的な扶養義務者となります。
すると、支払う側の扶養義務が軽くなるため、受け取る側の再婚相手の年収次第で、養育費の減額が認められる可能性があります。
場合によっては、養育費の支払いそのものが免除される場合もあります。
ただし、受け取る側が再婚したからといって、必ずしも養育費の減額や支払いの免除が認められるわけではありません。
たとえば、受け取る側の再婚相手が病気など正当な理由があって働けない、収入がほとんどない状態にあるときは、減額が認められないこともあります。
また、再婚相手と子どもが養子縁組していないときは、再婚相手に子どもの扶養義務は生じません。そのため、減額が認められる可能性は低いです。
(参考記事)再婚したら養育費は減額される?減額される場合とされない場合
2-4. 受け取る側(親権がある)の収入が増えた
離婚したあと、受け取る側がパートから正社員になったり起業に成功したりして、収入や資産が大幅に増え経済状況が向上することがあります。
このようなケースでも、支払い側からの養育費の減額請求が認められることがあります。
ただし、離婚時の取り決めで、受け取る側の収入が増えることを見越して養育費の金額を決めていたときは別です。
この場合は、実際に経済事情が良くなったことを理由として減額が認められる可能性は低いでしょう。
また、当初養育費を決めた当時に想定していなかった事情がある場合は、減額が認められないこともあります。
例えば、
- 子どもに持病があって継続的に医療費を要する
- 私立学校に進学して公立に比べて高額な授業料を要する
などがあります。
3. 養育費の減額が認められないケース

もちろん、養育費の減額が認められない場合もあります。たとえば、次のようなケースです。
- 子どもと面会ができていない
- 取り決めた養育費の金額が相場より高かった
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
3-1. 子どもと面会ができていない
離婚時に「月に1回、子どもと面会する」などと、面会交流について取り決めるケースもあります。しかし、「タイミングが合わず、約束が取り付けられない」「子どもが会いたがらない」など、様々な事情で面会交流ができていないこともあるでしょう。
支払う側も「子どもに会うこともできないのであれば、毎月何万円もの養育費を支払いたくない」と思ってしまうことが多いようです。しかし、面会ができないことを理由に、養育費の減額や支払い拒否が認められることはありません。
なぜなら、養育費の支払い義務と面会交流とは別の問題であり、引き換えにできるものではないからです。
3-2. 取り決めた金額が相場より高かった
離婚時には、養育費の一般的な相場を知らないまま、双方で話し合って養育費の金額を決めることがあります。なかには相場よりも明らかに高い金額を設定していたこともあるでしょう。
あとになって取り決めた金額が相場よりかなり高かったことが判明したとしても、特別な事情の変更がない限り、それを理由に減額することはできません。
なぜなら、相場より高かろうと低かろうと、いったんはその金額で納得して合意しているからです。合意したほうにも責任があるため、減額することは認められません。
4. 養育費を減額する際の流れ・手続き方法

養育費の減額請求が認められるまでには、一定の手続きが必要です。
ここでは、どのような流れで減額が成立となるのか、話し合い・調停・審判などのステップごとに、どのようなものか詳しく説明します。もし、支払う側から養育費の減額を請求されても、落ち着いて交渉に臨めるように大枠を知っておくことが大切です。
4-1. 話し合いを行う
支払う側から養育費の減額を求める連絡がきたときは、まずは事情を聴き、話し合いに応じるようにしましょう。
詳しい事情を聴かずに要望を突っぱねたり頭ごなしに否定をすると、支払う側の心象を損ねます。交渉が決着していないのに養育費を勝手に減額されてしまったり、最悪の場合支払いが止まる場合もあります。
そのようなことを避けるためにも、減額に応じるつもりがない場合でも、一旦は相手の事情や言い分を聞き、その上で自分の要望を伝えるなどして冷静に話し合いを進めていきましょう。
これは、当事者間での交渉がうまくいかず、調停にうつる可能性を考慮してのことです。相手に悪い印象を与える言動はなるべく慎んだ方が、その後の調停がスムーズに進みます。
当事者間で話し合って交渉がまとまれば、スピーディに解決できます。忙しいなか、家庭裁判所での調停に出頭するといった面倒な手続きも不要です。
もし、支払う側の状況を考慮し、養育費の減額について合意することとなった場合は、取り決めの内容を残すためにすぐに書面作成をしましょう。書面を作成しておくことで、養育費を減額した事実を法的に明確にすることができます。
口約束も法的な効力はありますが、証拠が残らない上、実際にそれを証明することは困難です。「減額に応じたのにその金額でも支払いがされず、養育費についての取り決めが有耶無耶になってしまった」ということが無いように、必ず書面で内容を残すようにしましょう。
4-2. 養育費減額請求調停の申し立て
「支払う側にも生活があることはわかるが、減額に応じるつもりはない」といった場合には、当事者間での話し合いでは折り合いがつかないこともあるでしょう。また、話し合いそのものができないケースもあります。
そのときは、養育費の減額を請求している方(支払う側)から家庭裁判所に調停を申し立てをする必要があります。
調停では、調停委員がそれぞれに別々に事情を聞き、相手に互いの主張を伝えて妥当な解決をめざします。調停の初回と和解が成立したときに相手と顔を合わせることはありますが、調停中に直接話し合うことはありません。
しかし、支払う側が弁護士を立ててきている場合や、自分の要望をうまく伝えられるか、また相手の言い分に対して論理的かつ正確に反論できるか不安な場合もあるでしょう。そのときは、弁護士に相談することをおすすめします。
ここでは、養育費減額請求調停を申し立てる際に必要な書類や終了までにかかる期間、費用などについて紹介します。基本的に支払う側が調停申立ての手続きをしますが、ざっくりとした流れは把握しておくようにしましょう。
4-2-1. 調停の申し立てに必要な書類
養育費減額請求調停は、養育費を受け取る側の住所地にある家庭裁判所に対して申し立てを行います。申し立てに必要な書類は次のとおりです。
- 養育費調停申立書:申立人や相手、子どもの氏名や申し立ての趣旨、理由などを記載するもの
- 事情説明書:調停にいたる事情を説明するもの
- 調停に関わる進行照会書:相手との話し合いの状況や調停を希望する日、配慮を希望することなどを記載するもの
- 子どもの戸籍謄本
- 申立人の収入に関する書類:給与明細や源泉徴収票など収入を証明できる書類
申立書や事情説明書、進行照会書は、家庭裁判所の窓口で受け取るか、裁判所のサイトからダウンロードすることで入手できます。
4-2-2. 調停にかかる期間
1回目の調停が実施されたあと、2回目の調停が行われるのはおよそ1カ月後です。その後は、調停の都度、次回の日にちが決定されます。
調停が何回実施されるかは決まっていません。双方が合意にいたったときか、これ以上話し合っても合意にはいたらないと判断されたとき、申立人が取り下げたときのいずれかの時点で終了となります。
お互いが合意したときは調停成立で、確定した事項を記した書類を発行して完了です。
調停を取り下げた場合は、そこで完全に終わりです。合意にいたらなかったときは調停不成立となり、この後は自動的に審判に移行します。審判については、「4-2-4. 調停で決着がつかない場合」で説明します。
調停にかかる期間はケースによって異なります。一般的に、開始から6カ月以内に終わることが多いでしょう。ただし、1年以上かかることもあります。
4-2-3. 調停にかかる費用
家庭裁判所に申し立てる際、提出する調停申立書には印紙を貼付する必要があります。このほかに、連絡用として郵便切手も納めなければなりません。
収入印紙は子ども1人につき1,200円、郵便切手は800~1,000円程度です。
子どもの数によって変わりますが、調停にかかるおおよその費用は2,000~4,000円ほどでしょう。
これ以外に、子どもの戸籍謄本の取得費用や家庭裁判所までの交通費などが必要です。
4-2-4. 調停で決着がつかない場合
調停を行って話し合いを繰り返しても、合意にいたらないこともあるでしょう。
調停が不成立となった場合は、自動的に養育費減額審判に移行します。
これは、裁判官が調停委員の意見もふまえたうえで審問や提出された資料をもとに判断を下すものです。自動的に移行するため、審判のために何か手続きをする必要はありません。
一般的に、調停不成立から審判が下されるまでには3~4カ月かかるとされます。とはいえ、状況によっては1~2カ月で済むこともあれば、もっとかかることもあるでしょう。
審判で決まった金額は守る必要があります。
5. 養育費を一方的な減額させない方法って?

支払う側から「養育費の支払いがあるために経済的に厳しい」と言われ、一方的に減額される場合があるかもしれません。
もちろん、勝手に養育費を減額することは認められません。先も述べた通り、まずは話し合いをし、まとまらなかったら調停、審判という手順に従って減額の折り合いをつける必要があります。
もし作成した取り決めが、強制執行受諾文言付きの公正証書や、調停調書、審判書などといった債務名義によるものだとしたら、強制執行を行いましょう。給与口座や預貯金口座を差し押さえることができれば、取り決めどおりの養育費を自動的に受け取ることができるようになります。
債務名義とは、債権者(養育費を受け取る側)が債務者(養育費を支払う側)に対して強制執行することを許可する公的な書類のことです。これがあると、養育費を支払わなかったり一方的に減額したりした相手に対し、強制執行によって財産を差し押さえることができます。
強制執行受託文言とは「もし養育費を支払わなかったときは、強制執行されても抗議しません」という主旨の文言です。養育費について取り決めた公正証書にこの文言が記されていると、債務名義として機能します。
(まとめ)養育費を減額する場合は、当事者間での合意が必要!

離婚後に支払う側の状況が変わり、これまでどおり養育費を支払うのが難しいと言われることもあるでしょう。
だからといって勝手に減額することは認められません。話し合いで交渉ができなくても、調停や審判によって解決を図ることもできます。きちんと手続きをとるよう、支払う側を説得しましょう。
また、養育費の勝手な減額の予防策として、「サポぴよの養育費保証」を利用するのも一つの手です。
もし、養育費を勝手に減額されてしまったとしても、「サポぴよの養育費保証」を利用していれば、取り決めどおりの金額を立替えてもらえる上に、サービス提供会社が支払う側への催促連絡を行ってくれます。
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