更新日: 2023.04.10
公開日:2021.02.15
受け取り方法で養育費も課税対象に?ケース別に税金がどうなるかを解説

離婚後に養育費を受け取る場合、養育費にも税金がかかるのか気になる人もいるでしょう。この記事では、養育費に関する税金事情について解説します。
受け取り方や受け取る金額によって税金に大きな違いがある点、トラブルが起こったときの対処法などについても紹介しているので、参考にしてください。
~ この記事の監修 ~

株式会社SMILELIFE project
ライフブックアドバイザー(FP) 池田 啓子
フィーオンリーのFPサービスを提供し保険や金融商品の販売をせずにライフプランニング相談業務を行っています。
1. 養育費を受け取った場合に所得税や贈与税はかかる?

通常、働いて収入を得たときや個人から財産を受け取ったときは、所得税・贈与税等がかかります。
では、養育費を受け取った場合、それらの税金はかかるのでしょうか。はじめにその点を解説します。
1-1. 離婚後の養育費は原則「非課税」扱い
法律上の扶養義務に基づき支払われる金額は非課税となるため、原則的に、養育費を受け取っても所得税や贈与税などの税金はかかりません。
子どもが成人するまで子どもに対する扶養義務は、離婚して親権をもたない親にも発生します。さらに、法律上では「養育費は扶養義務に基づき支払われるもの」という考え方をされます。
そのため、養育費は、子どもが健やかに成長できるようにするための生活費・医療費・教育費などを、子の両親である扶養義務者同士で分担するために支払われるものとみなされ、別れた夫から養育費を受け取ったとしても、所得税・贈与税などの対象にはならないのです。
1-2. 所得税法9条で定められている内容
所得税法9条1項15号では、
「次に掲げる所得については、所得税を課さない。『学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品』」と規定されています。
養育費とは、別れた非親権者から親権者(扶養義務者相互間)に対して、子どもを養育するため(扶養義務を履行するため)に支払われる金品なので、まさに「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するために給付される金品」に該当します。
よって、通常認められる養育費の範囲なら所得税はかからないということになります。
1-3. 相続税法21条で定められている内容
相続税法21条3項2号では、
「次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。『扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの』」と規定されています。
養育費は「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与」に該当するので、通常認められる範囲であれば贈与税の対象にならないということです。
ここで記載されている「通常必要と認められるもの」、つまり、贈与税の対象とならない財産とは、「生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産」と定義されています。
2. 課税対象となるケースもある?

冒頭で述べたように、基本的に養育費は非課税です。
ただし、場合によって養育費が課税対象となることもあるので注意が必要です。次の項目では、税金が発生するケースについて解説します。
2-1. 養育費を子どもの養育目的以外で使用した場合
養育費は、あくまでも子どもを健やかに育てるために使うお金で、教育費・医療費・生活費などが対象となります。
そのため、子どもの養育以外の支払いに養育費を使用した場合には「通常必要と認められるもの」に該当しなくなります。
具体的には、株やマンションの購入などは「通常必要と認められるもの」とはみなされず、養育以外の目的に該当するため課税対象となります。
2-2. 将来の分も見越して養育費を一括で受け取った場合
養育費を一括で受け取った場合にも注意が必要です。
一括で受け取るということは、ある程度まとまった金額になるので、銀行に預金をする人が多いでしょう。しかしその場合、預金が子どもの養育目的だけに使われるかどうかの判断が難しいため、仮に子どもの養育に必要な資金だとしても、第三者から見ると不透明な資金とみなされてしまうのです。
相続税法21条3項5号でも、
「生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合、又は株式の買入代金、若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金、又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする」と規定されています。
また、金額が大きすぎるため「社会通念上適当と認められる」範囲を超えていると判断されることもあります。そのため、贈与税の課税対象となる可能性が高いと言えるでしょう。
3. 養育費を一括で受け取った場合の税金はいくらになるのか

養育費を一括で受け取り課税対象となった場合、実際に税金をいくら支払わなければならないのでしょうか。
次の項目からは、贈与税の計算方法について解説します。
3-1. 贈与税の計算方法
贈与税を求める際には110万円の基礎控除が設けられています。
基礎控除額とは、金額など他の要件に左右されず一律に差し引かれる金額のことです。したがって、一括で受け取る養育費の金額が年間110万円以下であれば基礎控除額のほうが大きくなるため、課税の対象にはなりません。
次に、贈与税がかかるケースを見ていきましょう。
たとえば毎月5万円の養育費を10年分まとめて受け取り、養育費が課税対象となった場合の贈与税はいくらになるか実際に計算してみます(一般税率)。
・養育費の合計 :600万円(5万円×12カ月×10年)
・基礎控除額 :110万円
・税率 :30%
・贈与額別の控除額:65万円
まずは、贈与額(養育費の合計)から基礎控除を引いて、そこに税率をかけたあとに贈与額別の控除額を引いた額が贈与税となります。
計算式は次のとおりです。
600万円-110万円(基礎控除額)=490万円(課税価格)
490万円×30%(基礎控除後の税率)-65万円(贈与額ごとの控除額)=82万円
したがって、このケースでは受け取る養育費600万円に対して贈与税が82万円となり手取り額としては518万円になります。
3-2. 計算時の注意点
贈与税の税率は、「一般贈与財産用(一般税率)」と「特例贈与財産用(特例税率)」に区分されます。
養育費は子どもに対して支払われるものです。親から未成年の子へ贈与する際の税率は「一般税率」が適用されるので、養育費に対しても一般税率を適用します。
贈与される金額によって税率が変わる点と、基礎控除とは別に贈与額別の控除がある点に注意してください。贈与金額ごとの税率・控除金額は次のとおりです。
【贈与税の税額速算表(一般税率)】
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~200万円以下 | 10% | 0円 |
~300万円以下 | 15% | 10万円 |
~400万円以下 | 20% | 25万円 |
~600万円以下 | 30% | 65万円 |
~1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
~1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
~3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円越~ | 55% | 400万円 |
3-3. 養育費を一括で受け取ることのメリット
養育費を一括で受け取る場合、年間110万円以上だと課税対象となるので、デメリットがあるように感じられるかもしれません。しかし、一括受取りには、養育費の未払いリスクを回避できるというメリットがあります。
実際、養育費に関するトラブルとして、「養育費の支払いがストップした」「元夫と連絡がとれなくなった」「元夫に収入がなくなり養育費を支払う能力がなくなった」などの理由で、結局養育費を満額受け取れないというケースは非常に多いのです。
一括で受け取る場合にはそのようなリスクがないので、確実に養育費を満額受け取ることができるという点ではメリットとして捉えることができます。
3-4.【2013年施行】教育資金贈与の非課税制度について
2013年に、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」という教育資金の贈与に関する制度が施行されましたので触れておきたいと思います。
直系尊属とは、親・祖父母・曾祖父母など親子関係で自分より前の代にあたる人のことです。
この制度では、直系尊属(贈与者)から30歳未満の子・孫(受贈者)名義の金融機関等の口座に一括して拠出された教育資金1,500万円までを上限として非課税とする制度です。
<「教育資金」の対象>
①入学金・入園料・授業料・保育料・教材費・給食費・修学旅行費など、学校等に対して直接支払われる金銭
②習い事や学習塾・スポーツ・文化芸術活動などに充てる費用など、学校等以外に対して直接支払われる金銭で、社会通念上相当と認められるもの(但し500万円を限度・23歳以降は対象外)
③条件を満たせば通学定期券代や留学費用など
<申請方法>
託銀行などの金融機関で受贈者名義の「教育資金専用」の口座を開設し、教育資金非課税申告書を金融機関経由で提出します。
先に解説したとおり、一括で多額の養育費を受け取って銀行に預けた場合に贈与税がかかるのは、子どもの養育目的だけに使われるかどうかの判断が難しいという理由からでしたが、金融機関と税務署が提携することで使途が明確になるので、教育資金の一括贈与時にも税控除を適用できると判断されました。
<制度の適用期間>
2021年3月末までに行われる贈与が対象。
2019年の税制改正で、受け取る子どもの年齢に関して特例が設けられました。
本制度を適用するために開設した「教育資金専用口座」は、子どもが満30歳になった時点で管理契約が終了するため、それ以降は「教育資金専用口座」に残っている資金を使う場合は贈与税がかかります。
しかし、子どもが大学院に進学した場合や研究所に所属した場合には、30歳以降も在学中であり教育資金が必要となることはよくあります。こういった事情から、30歳の時点で受贈者である子どもが在学中の場合のみ満40歳まで契約が延長できるようになりました。
養育費を一括で受け取ってもこの制度を活用すれば、用途は限定されますが、上限1,500万円までは課税されないということになります。
上記以外も細かい要件等がありますので、詳細は国税庁のHPを確認してください。
4. 結局受け取るには一括が良い?分割がよい?

ここまで読んで、結局一括と分割のどちらがよいのか教えてほしいと思ったかもしれません。
人それぞれの状況や事情によって今まで話した内容がメリットにもなりデメリットにもなり得ますので、ここで一概にどちらがよいと言い切ることは難しいです。まずは自分の状況を一つ一つ把握して選択をしていきましょう。
養育費の一括受取は、税金面では前述の通り、受け取り方や制度の活用によって変わってきます。
また、養育費の支払いをする元夫の経済状況によっては、分割払い以外の選択肢がない方も多いはずです。「途中で支払われなくなる」などのトラブルが多いことが不安要素や懸念材料であるならば、それを回避する方法の一つとして養育費保証サービスを利用するのも選択肢の一つとしておすすめです。
養育費保証サービスとは、保証会社が養育費を支払う側の連帯保証人となり、もしも未払いが発生したら立て替えてくれるというサービスです。
厚生労働省が公表している「平成28年全国ひとり親世帯等調査」によると、実際に養育費が支払われているのは4人に1人だけで養育費支払いの実態は残念ながら悲惨といわざるを得ません。
また、母子家庭の半数以上が養育費を受け取ったことがなく、養育費を受け取ったとしてもそのうちの4割は養育費が途中で支払われなくなったというデータもあります。
養育費が支払われない原因は、元夫が再婚したことによって養育費を支払いづらくなった・元夫の病気や失職によって現実的に支払いが困難となったなどさまざまです。
また、事前に公正証書などで取り決めをしても、未払いを確実に防ぐことはできません。給与差し押さえなどの法的手続きをしようとすると、手間も費用もかかってしまいます。
そういった事態になれば、自分だけでなく子どもの日常生活にも大きな影響が出てしまう可能性が高いです。養育費保証サービスを利用すれば、万が一元夫が養育費を支払わなくても立て替えてもらえるだけでなく、自分で督促の連絡をする必要もありません。
保証会社を通じて支払いが行われるので、元配偶者と直接関わることがなく、離婚後の心理的ストレスが軽減されます。元夫が督促に応じず、どうしても払ってもらえないという場合にも安心です。
養育費保証サービスの利用には費用がかかりますが、未払いリスクを回避できるというメリットは絶大なので長期的な安心を得るための必要経費と割り切って、利用を検討してもよいでしょう。
(まとめ) 一括で受け取ると税金がかかる可能性が!

養育費は一括で受け取ると金額によっては贈与税がかかる可能性があるので、受け取り方法や制度の活用は慎重に考えることが重要です。
分割での受け取りの場合は、元夫の状況次第で養育費が支払われなくなるというリスクが想定されますので、それを回避する手段として養育費保証サービスの利用を検討してみましょう。
保証料は発生しますが、養育費に関する心・お金・時間の問題をワンストップで解消してくれるので安心して任せることができ、安定した生活をおくることができるでしょう。
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